ドナルド・トランプ前大統領(77歳、2017~2021年在任)は、奇妙なことに起訴される度に共和党内での大統領予備選候補争いで支持率を上げている。そうした中、一部左派勢力が、トランプは起訴された罪状より米憲法修正第14条第3項(南北戦争終結後の1868年に制定された修正条項のひとつ、注1後記)によって大統領選出馬資格を喪失していると訴えている。しかし、共和党支持の著名弁護士が、同修正条項は曲解されているとの声を上げている。
9月7日付
『WND(WorldNetDaily)』は、共和党支持の著名弁護士が、反トランプ派の左派勢力の主張する「憲法解釈による立候補資格停止論」は間違いだと反論していると報じた。
左派系の地盤である複数の州では、反トランプ運動強化の一環で、米憲法修正第14条第3項に基づき、トランプ前大統領には2024年大統領選に出馬する資格がないと主張している。
例えば、民主党が強いとされるコロラド州では、左派勢力が、トランプをして共和党大統領予備選への出馬を禁止するよう裁判所に提訴している。...
全部読む
9月7日付
『WND(WorldNetDaily)』は、共和党支持の著名弁護士が、反トランプ派の左派勢力の主張する「憲法解釈による立候補資格停止論」は間違いだと反論していると報じた。
左派系の地盤である複数の州では、反トランプ運動強化の一環で、米憲法修正第14条第3項に基づき、トランプ前大統領には2024年大統領選に出馬する資格がないと主張している。
例えば、民主党が強いとされるコロラド州では、左派勢力が、トランプをして共和党大統領予備選への出馬を禁止するよう裁判所に提訴している。
これらの動きに対して、弁護士事務所「法と判決のための米国センター」(ACLJ、1990年設立)の共同代表で共和党支持者のジョーダン・セクロー弁護士(41歳)は、“陪審員も裁判官も一切そのような裁定を下しておらず、ただ左派勢力が根拠なく叫んでいるだけだ”と一蹴した。
同弁護士は、左派勢力が、2021年1月6日発生の議事堂乱入事件に“関わった”ことを理由として資格停止を主張するが、当該修正条項が制定された際の南北戦争後の事態と今回の議事堂乱入事件は全く異なる事態であることから、法解釈に無理があるとも強調した。
トランプ自身も、“多くの法学者らは、2024年大統領選出馬に関して、米憲法修正第14条第3項が適用しうるという法解釈はできないとの意見を述べている”と投稿している。
ただ、同弁護士は、“もし左派勢力の訴えが裁判所で認められるとなると、他の民主党地盤の州やスイング・ステート(注2後記)に飛び火する恐れがあり、かかる裁定が5つや6つの州にも及ぶとなると警戒を要する”ともコメントしている。
そこで同弁護士は、ACLJより全50州の司法長官に宛てて、“米憲法修正第14条第3項の濫用はそれこそ憲法違反である”旨通知を出す意向であると述べている。
(注1)米憲法修正第14条第3節:米議会議員、国の機関の役人、州議会議員、あるいは州の行政及び司法の役人として、米憲法を支持することを以前に誓ったにも拘らず、それらに対する反乱に加わった者あるいはその敵に対して援助や同調した者は、米下院または上院議員、大統領および副大統領の選挙人、あるいは国または州の公的、軍事的役職に就くことはできない、と定めている。
(注2)スイング・ステート:米大統領選挙の勝者総取り方式において、共和党・民主党の支持率が拮抗し選挙の度に勝利政党が変動する州を指す言葉。「注目州」「揺れる州」「揺れ動く州」「激戦州」等の他、民主党の地盤である北東部やカリフォルニア州などの西海岸がブルー・ステートと呼ばれ、共和党が強い中西部や南部がレッド・ステートと呼ばれることから、「パープル・ステート」とも呼ばれる。
閉じる
日本は、欧米に追随して、対ロシア制裁に加わっている。しかし、国家エネルギー安全保障問題もあって、極東サハリンや北極海の天然ガス開発プロジェクトからの撤退は決めかねている。これは、欧州の多くの国も同様で、ロシア~欧州を繋ぐパイプラインを通じてのロシア産天然ガス供給に多くを頼ってきているのみならず、代替ソースを受け入れるインフラ設備もないことから、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳、2012年就任)の“ルーブル決済に承服せねばガス供給停止”との脅しに屈服せざるを得ないかも知れない。
4月2日付米
『WND(WorldNetDaily)』オンラインニュース(1997年設立の保守系メディア)は、「ガスプロム、欧州向け主要パイプラインでの天然ガス供給を停止」と題して、ウラジーミル・プーチン大統領の命令に従って、ルーブル決済に応じない限り、欧州向け天然ガスの供給を停止するという実力行使に出ていると報じた。
ウラジーミル・プーチン大統領は3月末、欧州諸国が対ロシア制裁を強化していることに対抗して、欧州諸国がエネルギー資源確保の拠り所としているロシア産天然ガスについて、ユーロ決済を主張するならば4月以降ガス供給を停止するとの大統領令を発布した。
この大統領令に基づき、世界最大の天然ガス生産・供給企業のガスプロム(1989年前身設立)は、4月1日及び2日のヤマル欧州パイプライン(2006年稼働開始、ロシア北端ヤマルガス田~ベラルーシ経由~ドイツ、ポーランド拠点を繋ぐ天然ガス・パイプライン)による天然ガス供給を停止した。
ドイツのパイプライン運営会社ガスケード(2012年設立)によると、供給停止分の天然ガスは欧州とは反対の東方向けへの供給が開始されたという。
欧州諸国は対ロシア制裁の一環で、ロシア産天然ガス購入を控えて、米国産等他ソースへの切り替えを模索している。
しかし、欧州はこれまで、パイプラインを通じての気化天然ガス供給に頼っていたことから、米国等からの液化天然ガス(LNG)を受け入れるインフラ設備を保有していない上に、需要家である電力会社やその他エネルギー供給会社向けに気化天然ガスを供給するための“LNG気化設備”も有していないという問題を抱えている。
かかる背景もあって、欧州諸国はエネルギー源確保に当たって、プーチン大統領の脅しの前に厳しい選択を迫られている。
すなわち、同大統領の脅しに負けて、ロシア産エネルギー依存率削減という目標達成を諦めるか、あるいは、1970年代に襲われた石油危機当時と同様、ガソリン等エネルギー価格の高騰、配給制復活や停電リスク等によってもたらされる“壊滅的”経済状況を甘んじて受け入れるか、である。
一方、同日付欧米『ロイター通信』は、「欧州、ロシア産天然ガス決済につき一致して対応」と題して、プーチン大統領の脅しに対して、欧州各国は一致して決済対応をしていくことになったと報じている。
欧州諸国は4月1日、プーチン大統領が発布した、天然ガス代金をルーブル決済とする命令に対して、各国及び購入事業会社とも一致した対応を取る意向である。
欧州は、プーチン大統領が西側諸国の対ロシア制裁への報復の一環で、欧州向け天然ガス供給停止措置を講ずるとの懸念から、警戒態勢を取ってきた。
そして、プーチン大統領は3月31日、4月1日以降供給の天然ガス代金をガスプロム銀行(1990年設立のロシア三大銀行のひとつ、ガスプロム子会社)のルーブル口座を通じての決済に応じなければ、ガス供給を停止する、との大統領令を発布した。
ただ、ロシア政府は4月1日、供給ガス代金の決済期限が4月後半及び5月であるので、即座にガス供給を停止することはないと表明した。
そこで、天然ガス需要量の3分の1以上をロシアに頼っている欧州各国は、決済期限までの数週間の間に対応を決めることにした。
欧州委員会(1967年設立の欧州連合(EU)政策執行機関)エネルギー総局のディッテ・ジュール・ヨルゲンセン局長は4月1日、“EUは本日、代表者会議を開いて、ロシア産天然ガスの決済に関して、一致した対応を取ることで合意した”とツイートした。
エネルギー源の供給停止措置は、プーチン大統領にとって、西側諸国の対ロシア制裁に対抗する上で強力な手段ではあるが、一方で、欧州向け天然ガスの代替供給先には限りがあることも事実である。
欧州のある天然ガス事業会社幹部は、匿名を条件にして、“仮にプーチンがガス供給停止に踏み切ったとしても、短期間に留まるはずだ”とし、“何故なら、欧州向けガス全てを他に捌く向け先はないし、第一に欧州が払う代金を必要としているからだ”とコメントしている。
また、専門家らも、ガスプロムとしても、欧州向けの天然ガス供給を停止してしまうより、そのことで起こり得る同社に対する将来の制裁から逃れることの方が大事だと考えているはずだ、と分析している。
閉じる