7月27日付英
『Guardian』:「中国がアジアとアフリカへ新基地拡大計画か」:
中国が、輸送ルート確保と米国及び同盟国への対抗措置として、海外の基地建設を計画している可能性があるという。
米国のリサーチ会社「AidData」が26日発表した報告書によると、中国が今後2~5年間で海軍基地を建設する可能性が高いのは、スリランカのハンバントタ港、赤道ギニアのバータ、パキスタンのグワダルの3か所だという。
中国国営銀行による開発融資額、現在のインフラの戦略的価値、受け入れ国政府との蜜月関係等の要素を考慮し分析されている。
中国人民解放軍海軍(PLAN)は現在、アフリカの東部ジプチにのみ海外基地を所有している。しかし、米中の対立関係が高まる中、中国は米国の海軍力に追いつこうと画策している。米国と違い、中国は他国との防衛同盟関係を結んでおらず、北朝鮮との相互防衛条約があるのみとなっている。それ故、中国の発展のため海外の基地の開発が優先事項となっているのだという。
PLANの今後の目標は、中国が「一帯一路」構想で優位に立つことと重なっている。候補とされる8つの基地のうち4箇所は、アフリカに位置している。中国が最も必要とする地域は、南シナ海と台湾海峡であることに変わりはないが、基地の海外展開は中国の輸送ルート確保に役立つとみられる。
「AidData」によると、スリランカのハンバントタ港は、今後基地が置かれる可能性の最も高い場所だという
2010年開港、国営開発銀行である中国輸出入銀行が3千万ドルを融資、中国が「施設を直接管理」しているとする。
25日、米国ではカンボジアのリアム海軍基地の衛星画像が公表された。米政府はリアムに中国が海軍進出を企み施設を建設しているとみている。この基地は中国の支援で建設されているが、中国もカンボジア政府も中国人民解放軍海軍の基地利用を否定している。
専門家の分析では、リアムに基地があれば、タイ湾へのアクセス等で、中国にとっては戦略的利益が絶大だとされる。画像では、基地の埠頭がほぼ完成されており、中国のジブチ基地に非常に似ているという。埠頭は、空母や戦艦も停泊できるほどに長いという。
同日付米『The China Project』:「中国の次の海外基地はスリランカの港か」
中国人民解放軍海軍の初の海外基地は、中国と利害関係を結ぶアフリカ東部のジブチだった。そして最新の報告書によると、同じようなシナリオが展開されつつあるという。
商品の輸出や石油、穀物、レアアースの輸入保護を目的とする中国企業による港湾建設への投資動向を調査した最新報告書によると、中国軍は、第二の海外基地をスリランカに作る可能性が高いという。
スリランカのハンバントタ港への投資額は約22億ドルで他の港よりも多額となっている。スリランカ政府は2017年に中国との99年契約に合意、2018年にはスリランカ海軍へフリゲート艦が贈呈されており、国民の間では、中国や中国人への親近感も高いという。
他には、カンボジアのリアム、 パキスタンのグワダル、赤道ギニアのバータ、カメルーンのクリビも中国基地となる可能性のある場所としてあげられている。また、バヌアツ、アフリカ東部のモザンビークのナカラ港、アフリカ西部モーリタニアのヌアクショットも名前が挙げられている。
米国の政治家はこの情報をみて脅威を感じるかもしれないが、騒ぎ立てず静観するべきだと報告書の著者は指摘している。世界最大の貿易国の中国が海外港湾建設を求めるのは理にかなっており、中国は2019年に食物や石油の67.3%を輸入に頼っており、今後増加するものとみられている。
2022年のシンクタンク「ランド研究所」による報告書では、スリランカのハンバントータやオマーン湾のグワダルが海外基地候補として挙げられていたのだが、中国による港湾投資が少ない、バングラデシュやミャンマーも有力とされていた。
一方、2000年~2023年の中国国営300社以上による2万件以上のプロジェクトを調査した「AidData」の分析では、投資規模以上に政治戦略的な要素に重要性が置かれており、総合的視点から中国が投資する港湾が浮上した。
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