【Globali】
中国で大規模な人権派弁護士の一斉拘束(2015/07/16)
中国で起きた人権擁護派弁護士の一斉拘束を巡って、国際的な批判が高まっているが、何故今、中国政府がこのような強硬な措置を執ることにしたのかについては、いろいろな見方がある。
7月12日付
『ロイター通信』は、中国当局が著名なワン・ユー弁護士とフェンルイ弁護士事務所の同僚を含む、人権擁護活動家への大規模な一斉検挙をおこない、数日間で50名以上を拘束し、尋問していると報じた。フェンルイ弁護士事務所の顧客には、ウイグル族の体制批判者イルハム・トーチや独ディー・ゼイツ紙のアシスタントで最近半年以上も拘留されているザング・ミャオがいる。国営メディアは1カ月以上にわたり、信用のおけない人権活動家達がソーシャルメディアを通じ、社会の安定を損なおうとしているとキャンペーンをしていたが、その後、拘束や尋問が発生した。...
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7月12日付
『ロイター通信』は、中国当局が著名なワン・ユー弁護士とフェンルイ弁護士事務所の同僚を含む、人権擁護活動家への大規模な一斉検挙をおこない、数日間で50名以上を拘束し、尋問していると報じた。フェンルイ弁護士事務所の顧客には、ウイグル族の体制批判者イルハム・トーチや独ディー・ゼイツ紙のアシスタントで最近半年以上も拘留されているザング・ミャオがいる。国営メディアは1カ月以上にわたり、信用のおけない人権活動家達がソーシャルメディアを通じ、社会の安定を損なおうとしているとキャンペーンをしていたが、その後、拘束や尋問が発生した。人権団体によれば、100人以上の中国人弁護士がワン氏の拘留に抗議する共同声明を発表し、そのうちの多くが拘束されたという。
一方、7月13日付英
『ガーディアン』紙は、今回の一斉拘束は、20年の刑期で投獄中の高名なチベット僧が死亡したことや、中国が宗教的、人種的少数者の移動の自由を制限する二重構造のパスポート制度を廃止する運動がもとで発生した、と報道している。この制度の下では、チベット族や回教徒が多い地域の住民は、それ以外の中国人市民より多岐にわたる書類提出が必要とされている。一斉拘束は、フェンルイ弁護士事務所のワン・ユー弁護士が、7月9日、「自宅のインタネットと電気が切断され、誰かが自宅侵入しようとしている」と友人に連絡した後、消息を断ったことから始まった。ワン弁護士の顧客には、中国で禁止されている法輪功の修行者もいる。また、アムネスティー・インターナショナルのウイリアム・ニー氏は、政府がフェンルイ弁護士事務所による不正問題告発を恐れたことが理由であると考える。「世論を味方にした裁判がこれまで起き、政府は世論を統制できないことを懸念したのだと思う」とし、活動家による法廷の外での抗議が政府を刺激したと推測する。
7月15日付
『ロサンゼルスタイムス』は、「今回の一斉検挙は2011年のアフリカや中東での民主化運動の最中に起きた、35名の人権活動家や弁護士の逮捕事件以来の大規模なものである」と報じている。また、「最近の一斉検挙は、市民寄りの法律事務所が多い北京周辺に集中していた。今回の一斉拘束は15県という広範な地域に及んでいることがこれまでと違う」と規模の大きさに注目している。フ・ファリン香港大学教授は、「これは、間違いなく通常の法の執行ではなく、組織的に仕組まれた一斉取り締りである」との見解を示す。
米国務省は、「中国の公安当局は、合法的に政府の政策に反対する者を含め、平和的に人権を擁護しようとする人々を組織的に拘束していることに注目している」との声明を発表した。また、下院外交委員会の委員であるクリス・スミス下院議員は、「拘束は米中戦略的経済的対話の終了した僅か2週間後に起き、9月に予定の習近平主席の米国訪問に影を落とす」と一斉検挙を非難し、外交的な影響について警告している。
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中国株式市場の暴落とその影響(2015/07/09)
CBSニュースは、7月8日、僅か一週間のうちに中国株式市場が暴落したことを報じている。CBS特派員はこの暴落は国内問題が原因であるが、影響はアジア市場に波及しそうだと語る。上海株式市場のベンチマークは6月中旬のピークから30%下落したが、それ以前の大幅な値上りがあるため、この1年間ではまだ70%上昇している。株式市場の約80%は個人投資家であり、今回の暴落では主に経験の乏しい個人投資家が損失を被っている。中国政府は株式投資を奨励してきたが、今や混乱を収拾しようとあらゆる手段を講じている。
7月9日付
『ロイター通信』は、中国の証券規制当局が、今後6カ月間、5%以上を保有する株主に対し売却を禁止するという極端な措置を決めたと報じている。この発表は、市場の売りが過熱して、急遽、多くの会社が自社株の売買を停止した結果、投資家がパニック状態に陥った状況下で行われた。この措置は海外投資家にも適用され、違反する者は厳しく処罰するという。500社以上の会社が上海及び深圳の株式市場で売買停止を発表し、合計約1300社(市場の凡そ45%、2.4兆ドルの株式)が市場の混乱からの回避を図っている。...
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7月9日付
『ロイター通信』は、中国の証券規制当局が、今後6カ月間、5%以上を保有する株主に対し売却を禁止するという極端な措置を決めたと報じている。この発表は、市場の売りが過熱して、急遽、多くの会社が自社株の売買を停止した結果、投資家がパニック状態に陥った状況下で行われた。この措置は海外投資家にも適用され、違反する者は厳しく処罰するという。500社以上の会社が上海及び深圳の株式市場で売買停止を発表し、合計約1300社(市場の凡そ45%、2.4兆ドルの株式)が市場の混乱からの回避を図っている。
一方、中国の株式市場の暴落は、成長鈍化で苦労している習近平首相にとって頭痛の種である。政府は、2500億元(403億ドル)を投じ経済活性化と大型公共施設の建設をおこなうと発表した。また、政府はブローカー取引を裏で操り、中央銀行が資金の流動性を保証するファイナンス会社を通じ、数十億ドルの株を買うと約束している。こうした、北京政府の市場への介入は、経済改革の柱となるべき市場の自由化に取組む姿勢について、疑問を生じさせる。
7月9日付
『ロサンゼルスタイムズ』紙は、「中国株式市場の暴落はただでさえ停滞しているグローバル経済のリスクを高め、北京政府の永年の約束である金融システムの近代化を逆行させる可能性がある」と報じている。また、急激な株価の下落を止めるためあらゆる手段を講じているが、投資家のパニックを鎮めることができていないとも指摘する。北京政府はこれまで絶大な権限による命令と統制で仕切ってきたが、市場経済を手なずけることは容易ではない。中国株式市場の特徴として、中国政府が「見えなくはない手」で誘導しているにもかかわらず、これほどの株価が乱高下する。一方で、政府の介入は代償を伴う。中国投資家の間に浸透している、おかしくなれば政府が助けてくれるという考えを裏づけかねない。「中国の金融システムの最大の問題点は、邪道な政府の保証・モラルハザードによって、投資家がリスクに鈍感になってしまうことである」との指摘もある。米国や他の先進諸国が支援する中国の金融市場改革が、まだ未成熟な株式市場での最近の動きによって、逆行していくことが懸念される。
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