仏メディア:仏企業の潜水艦情報大量流出(2016/08/26)
フランスの海軍系製造会社の半国営DCNS社が製造する潜水艦の機密情報が大量流出した。スクープしたのは豪州の
『オーストラリアン紙』だが、漏えいされたのは、インド海軍に販売されたスコルペヌ級潜水艦の戦闘能力の詳細を記載した22000ページ以上の文書である。フランスが最も懸念するのは、DCNS社が落札した豪州の次世代の潜水艦の大規模契約への影響である。仏国内でも波紋を呼んでいる。
『ルモンド紙』、
『フィガロ紙』、
『レゼコー紙』、
『AFP通信』などフランス各メディアは、漏えいの事実自体は重く受け止めるが、流出したデータは致命的な内容でないと報じる。「取り扱いには細心の注意が必要だが極秘レベルではない」(ルモンド紙)「フランス防衛省が定める5段階の機密レベルの第1段階にも当たらない」(フィガロ紙)「豪州メディアのサイトに掲載された文書は技術マニュアルの抜粋など商業目的の文書」で「フランスが公式に分類する防衛文書ではなく極秘の性質は持たない」(レゼコー紙)「部外秘に相当する“閲覧制限”が文書に記載されているだけ」(AFP通信)。...
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『ルモンド紙』、
『フィガロ紙』、
『レゼコー紙』、
『AFP通信』などフランス各メディアは、漏えいの事実自体は重く受け止めるが、流出したデータは致命的な内容でないと報じる。「取り扱いには細心の注意が必要だが極秘レベルではない」(ルモンド紙)「フランス防衛省が定める5段階の機密レベルの第1段階にも当たらない」(フィガロ紙)「豪州メディアのサイトに掲載された文書は技術マニュアルの抜粋など商業目的の文書」で「フランスが公式に分類する防衛文書ではなく極秘の性質は持たない」(レゼコー紙)「部外秘に相当する“閲覧制限”が文書に記載されているだけ」(AFP通信)。
しかし
『フィガロ紙』は「顧客の懸念を呼ぶこの流出はDCNS社には手痛い打撃」で特に4か月前に豪州から落札したバラクーダ級潜水艦のメガ級契約への影響を懸念する。流出経路は「スコルペヌ級潜水艦の販売先であるインド」の可能性を指摘し「軍需産業の競争激化によりあらゆる慣行が横行する」と報じる。インド当局も調査を開始した。
流出経路はまだ完全に特定されていないが、
『ルモンド紙』はインドの対応に焦点をあてる。
豪州メディアの報道の数時間後には既にインド政府はデータ流出の捜査を命じ、漏えい範囲と内容の把握を急ぐ。これを「インドは危険信号を察知した」と評する。インドの防衛大臣は「ハッキングにより漏えいされた」と示唆。「ルモンド紙」によると、インドはパキスタンに対抗しインド洋での中国の勢力拡大に備えるために30億ドルで6隻の潜水艦を発注した。今は1隻目がテスト段階だ。情報流出はインドとするDCNSに対し、インド防衛省は「インド国外で漏えいされ、2011年に元フランス海軍将校によって仏国外でデータが持ち出された」可能性を指摘した。
気になるのは豪州をはじめ他の顧客の反応だが、ターンブル豪首相はこの漏えいを深刻に受け止めない姿勢を示し、「4月に締結したバラクーダ級潜水艦計画には影響はないと表明」(ルモンド紙)、「インドも残りの5隻は建造継続と発表」(レゼコー紙)した。
一方20年間で345億ユーロという大型契約は「世紀の取引」と言われる快挙だが、実はまだ契約手続が完了していない。年末か2017年初めに完了する。
『レゼコー紙』は漏えい事件の被害程度を詳細に検証し、「影響は非常に限定的」との見通しを示した。機密レベルは低くとも火消の意向が働いた可能性もある。フランス海軍将校の関与の可能性も浮上しており、事実なら「DCNSを超えてフランスの評判が損なわれるため深刻」と懸念する。
『AFP通信』は仏国家安全保障当局がこれまでの調査結果を一切明かさないと報じる。漏えい経路の特定が待たれる。
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仏メディア:サルコジ元大統領出馬(2016/08/25)
フランスのサルコジ元大統領(右派の共和党党首)が2017年大統領選に立候補する事を表明した。2007年から5年間就任したが、支持率低下に悩み2012年の大統領選ではオランド現大統領(社会党)に政権を奪われた。また立候補表明とほぼ同時期に著書“全てはフランスのために(仮題)”を出版し注目を集める。フランスメディアは次の通り報じる
『レゼコー紙』は著書を「力に始まり力に終わる」と形容し、社説でサルコジ氏の狙いを分析する。著書で「力」をキーワードに強力なイメージを打ち出すのは、最大のライバル穏健派アラン・ジュペ氏に「弱さ」の印象を植付けるためであり、1958年にフランスを立て直したド・ゴール大統領になるためと指摘する。また強い個性のサルコジ氏は「人騒がせで不安の種をまく」、「戦争」、失墜」など負のイメージを持たれる事が多い。これを逆手に取り政治的マッチョな人物像を描いたのは、ジュペ氏を倒す事が予備選勝利の鍵と考えるためと考える。...
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『レゼコー紙』は著書を「力に始まり力に終わる」と形容し、社説でサルコジ氏の狙いを分析する。著書で「力」をキーワードに強力なイメージを打ち出すのは、最大のライバル穏健派アラン・ジュペ氏に「弱さ」の印象を植付けるためであり、1958年にフランスを立て直したド・ゴール大統領になるためと指摘する。また強い個性のサルコジ氏は「人騒がせで不安の種をまく」、「戦争」、失墜」など負のイメージを持たれる事が多い。これを逆手に取り政治的マッチョな人物像を描いたのは、ジュペ氏を倒す事が予備選勝利の鍵と考えるためと考える。
肝心の政策は「企業最優先」と「減税」を掲げる。「競争力・雇用目的税額控除(CICE)倍増」、「5年間雇用と業務が維持される場合は企業譲渡税は85%免除」「最低賃金引き下げ」「週35時間労働撤廃」「従業員解雇の規制緩和」「退職年齢の引き上げ」を提案する。サルコジ大統領が誕生すれば、労働状況は大きく変化しそうだ。税制改革では、減税に加え源泉徴収を導入する。
『フィガロ紙』は、サルコジ氏は党内での支持を着実に集め、既に60名以上の支持を取り付けたと報じる。中にはフィヨン元首相やジュペ氏陣営からの鞍替えも少なくないという。最近の世論調査では右派支持者からの人気急落を示すが、ジュペ氏との対決は勝利したと「フィガロ紙」は見る。前回と違い今回は、個人的な野心や感情を出さず、「国家のため」という姿勢を見せる事に注目する。週に2~3回各地での選挙遊説を行い、集会はイベント会社に頼らず党の議員が準備しており、サルコジ氏は並々ならぬ決意を伝える。
『ルモンド紙』はサルコジ氏の才能を認めるも、右派のアイデンティティが曖昧と指摘する。サルコジ氏は著書で、国家のアイデンティティを示したと見る。「経済移民を止める」、「イスラムのベール禁止」など特に移民政策で筋肉質な政策を打ち出したのは全て「右派と極右を説得るため」である。一方で2007年大統領選勝利時には、極右政党の国民戦線(Front National、以下FN)から多くの票を得たが、今回FNはサルコジ氏の政策を喜ぶふりをして、有権者をサルコジ氏に向かわないよう望むという現実がある。また「“国家”を選挙のテーマに選んだ事は正しく」、「多くのフランス人が望む事と一致する」と認めるも、これらの戦略が信念によるものでなく、単なるポーズと懸念する。
また「ルモンド紙」は2012年にフランス人がオランド大統領を選んだのは、サルコジ氏に対する有権者の懲罰的な投票だったと評し、内向きなサルコジ氏を戒める。
『AFP通信』は、サルコジ氏は共和党党首を辞任して選挙に集中すると報じる。まず身内の支持固めに着手する。最も有力な共和党指名候補が閣僚経験豊富なアラン・ジュペ氏と伝えある。またサルコジ氏もオランド大統領も世論調査で再選を望まない人が多いと報じる。
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