【Globali】
米国がシリアから陸軍撤退の方針を明らかに(2016/04/25)
シリアの和平交渉がスイスのジュネーブで行われているが、反政府軍の停戦合意違反
や、これに伴う人道支援物資の輸送の停滞などから、現在は和平交渉は凍結状態に
なっている。このような状況下で、イギリス、続いてドイツを訪れているオバマ大統
領はイギリスでは、米国がシリアに駐在中の陸軍を最終的には撤退する方針であるこ
と、また、次の滞在先であるドイツではNATO(北大西洋条約機構)におけるドイツの
役割増を求めたことが明らかになった。これにより、いよいよ米国が東欧で、ロシア
と対峙する意向が世界に示されたことになるが、イギリスはEU離脱をめぐって国内に
脆さを抱え、ドイツはTTIP(環大西洋貿易パートナシップ)や米国によるメルケル首
相の盗聴問題などから関係はギクシャクしており、米国が思い描くような東欧への軍
事配備が実現するのかは不明である。各メディアは次のように報じている。
4月24日付
『BBC』(英)は、イギリスを訪問中のオバマ大統領が、軍事的支援のみで
は、シリアが抱える問題を解決するのには不十分であるとして、この先シリアに駐在
する陸軍を撤退する方針であることを明らかにしたと報じる。オバマ氏はアサド政権
を転覆させるのは方針としては間違っているとしたうえで、今後はアサド政権関係者
らの辞職を求めていく方が賢明であると語っている。シリアの問題は大変複雑で、軍
事的手段のみにたよらず、国際社会の協力が必要と語る。...
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4月24日付
『BBC』(英)は、イギリスを訪問中のオバマ大統領が、軍事的支援のみで
は、シリアが抱える問題を解決するのには不十分であるとして、この先シリアに駐在
する陸軍を撤退する方針であることを明らかにしたと報じる。オバマ氏はアサド政権
を転覆させるのは方針としては間違っているとしたうえで、今後はアサド政権関係者
らの辞職を求めていく方が賢明であると語っている。シリアの問題は大変複雑で、軍
事的手段のみにたよらず、国際社会の協力が必要と語る。そのためにもアサド政権の
後ろ盾になっているとされるロシアやイランが速やかに交渉に臨み、政権移行につい
て話し合うべきだとする。
また、シリアで活動するIS(イスラミック・ステイト)に関しては、オバマ大統領在
任中の根絶は不可能としつつも、残り9か月の任期中にISの規模縮小を図ることは可
能と述べた。そのためにもISの拠点とされるラッカへの攻撃は継続して行う必要があ
るとした。
同日付
『タイムズ・オブ・イスラエル』(イスラエル)では、米国は2011年にはアサ
ド政権の追放を求めていたが、昨年には振り上げた拳を半分降ろし、政権のスムーズ
な移行のためにもアサド政権関係者は辞職すべきと主張するようになったことを取り
上げている。この5年間のシリアの内戦により少なくとも25万人、おそらくは50万人
の犠牲者が出ているという。また、この内戦により、ご存知の通りヨーロッパには前
代未聞のレベルの難民流入が起こり、ISの台頭を許す結果となった。オバマ政権は何
とかしてシリアの安定を図り、ヨーロッパに安定をもたらしたい意向であることがう
かがえる。
4月25日付
『ニュース・ドットコム・オーストラリア』(オーストラリア)ではオバ
マ大統領がイギリスの次の訪問先であるドイツで、メルケル首相と会談したことを取
り上げている。両国はオバマ大統領が政権を離れる来年1月までにはTPPIが最終合意
に至ることでは合意したものの、ドイツの経済担当大臣によれば、ドイツはアメリカ
に対し大幅な譲歩を求めており、前途多難だという。また、冒頭でも触れた通り、
2013年にはNSA(米国国家安全保障局)によるメルケル首相の携帯電話盗聴が明らか
にされており、ドイツのアメリカに対する不信感は強い。東欧への軍事配備強化に関
し、オバマ大統領は経済大国であるドイツに協力を求めているが、ドイツがこれに応
じる可能性はあまり高いとはいえない。外交政策分析を行うドイツのシンクタンク
「外交ドイツ評議会」のブラムル氏は「アメリカはドイツに対し、ヨーロッパでの
リーダーシップや経済力の発揮を期待している。しかし、それならばやはりドイツと
アメリカは協力関係といよりもライバルだといえる。そうでなければ、アメリカはド
イツに対し盗聴などのスパイ行為を働くはずはない」とコメントしている。
シリアからの難民流出に歯止めをかけ、余力を東欧に配備しようというアメリカの壮
大な計画はどこまでうまくいくか。
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