タイの新憲法草案に批判が集中(2016/03/30)
タイの軍事政権は民政移管に向けて新憲法案を検討してきたが、その草案がまとまり29日公表された。タイでは2001年にタクシン政権が発足して以降、農村部を地盤とするタクシン派と反タクシン派の対立が発生した。軍部や官僚らはタクシン派を敵視し、2006年にクーデタによりタクシン政権を打倒したが、その後もタクシンン派は選挙で連勝し対立は続いている。
新憲法草案の改正内容は多岐にわたるが、上院を全て任命制にする、国会議員以外の首相就任を認めるなど非民主主義的な規定が盛り込まれている。その主眼は、タクシン前政権の復活を阻止し、今後も国政に対する軍部の影響力を確保することにあると見られている。
現プラユット軍事政権は、反対意見を厳しく取り締まり、露骨な人権侵害をおこなうなど独裁的な政権運営を強めており、今回の新憲法案を巡っても国内外から批判や懸念の声が出ている。
29日付
『ザ・ワシントンポスト』紙(AP電)は、タイの新憲法草案が公表されたが内容は非民主的で軍部に多くの権限を与え過ぎているとの批判が出ていると伝えた。
軍事政権は、憲法草案の公表に当たって批判を禁止し、8月に信任の国民投票を実施する。その後、プラユット・チャンオチャ首相の約束によれば、2017年に総選挙が行われる予定である。
この草案には、250人の上院議員全員が軍事政権により任命され、6議席は軍人幹部および警察長官に確保されるとする規定がある。...
全部読む
29日付
『ザ・ワシントンポスト』紙(AP電)は、タイの新憲法草案が公表されたが内容は非民主的で軍部に多くの権限を与え過ぎているとの批判が出ていると伝えた。
軍事政権は、憲法草案の公表に当たって批判を禁止し、8月に信任の国民投票を実施する。その後、プラユット・チャンオチャ首相の約束によれば、2017年に総選挙が行われる予定である。
この草案には、250人の上院議員全員が軍事政権により任命され、6議席は軍人幹部および警察長官に確保されるとする規定がある。また、この草案には、首相は選挙に依らず任命することができるとする曖昧な条文も含まれている。このため、人権団体やタイの政界で対立する両陣営とも、この新憲法案に反対している。政府はこの草案に対する批判を禁じ、国民投票でこの草案が否決された場合プラユット首相は辞任すべきだとフェースブックに投稿した政治家は逮捕された。
憲法改定の狙いは、プラユット軍事政権が2006年のクーデタで退陣を強いられたタクシン派の政権復帰を阻止することにあるとみられる。タイではタクシン支持派と反対派が激しく対立し、時には暴動が起きている。また、軍部は1946年に国王となり88歳で病臥しているラーマ9世の王位継承に伴う国情不安を懸念しており、円滑な王位継承のため政権維持を望んでいるとの見方もある。
29日の
『ザ・ディプロマット』は、米国が昨日タイの軍事政権に対し民主主義を復活させ、表現の自由と人権に配慮するよう求めたと報じた。
米国のサラ・セウェル人権問題担当次官はタイのプラユット首相と会談し、2014年のクーデタ以来両国の関係を阻害している民主主義や人権を巡る問題について議論した。その中で、サラ次官はタイ首相に対し、持続可能で安定した統治及び制度を確保するため、表現の自由や人権尊重に十分な配慮をする必要性を強調した。
タイではクーデタ以来、民間人が軍事法廷で裁かれ、批判者にいわゆる態度矯正教育を受けさせ、反対意見を封じるために不敬罪が乱用されるなど、人権問題が憂慮されている。
総選挙は2016年に延期された後、再度2017年に延期されている。今回の新憲法案やその他の手段によって、選挙が行われたとしてもその意味が失われるという指摘も出ている。
閉じる
オバマ大統領が歴史的なキューバ訪問(2016/03/22)
オバマ米大統領は20日、現職の大統領としては1928年のクーリッジ大統領以来88年ぶりにキューバを訪問した。両国は昨年互いの大使館をそれぞれ設置するなど、1961年の国交断交から54年ぶりに国交を回復させた。オバマ大統領の訪問は、歴史的な関係改善の大きな節目になるものと期待されている。
21日付
『ザ・ワシントンポスト』紙は、オバマ大統領の歴史的なハバナ訪問によって、キューバがカストロ政権による人権蹂躙から解放される日が早まることは間違いないと報じている。
オバマ大統領のキューバ訪問は、経済封鎖など時代遅れで冷戦の遺物であった米国の対キューバ政策が変更されたことを明確に示すものである。共和党が牛耳る議会の妨害にもかかわらず、オバマ大統領は職権を行使して外交関係を正常化し、実質的に渡航制限を撤廃し、禁輸措置を大幅に緩和させた。...
全部読む
21日付
『ザ・ワシントンポスト』紙は、オバマ大統領の歴史的なハバナ訪問によって、キューバがカストロ政権による人権蹂躙から解放される日が早まることは間違いないと報じている。
オバマ大統領のキューバ訪問は、経済封鎖など時代遅れで冷戦の遺物であった米国の対キューバ政策が変更されたことを明確に示すものである。共和党が牛耳る議会の妨害にもかかわらず、オバマ大統領は職権を行使して外交関係を正常化し、実質的に渡航制限を撤廃し、禁輸措置を大幅に緩和させた。
オバマ大統領は、対キューバ関係改善の見返りにカストロ政権から人権問題等についてより大きな譲歩を得られたはずだとの意見があるが、キューバに対する強い敵意が米国の利益にならなかったことを忘れてはならない。国交正常化はカストロ政権にとっても大きなリスクであるが、それに賭けた理由はそれしか選択肢がなかったからである。カストロ体制は巨額の経済的支援を得ていたソ連邦の崩壊後も継続してきたが、経済活動は深刻な不振に陥っている。
キューバは豊富な人的資源を最大活用して経済を立て直すしかなく、そのために米国との関係改善は不可避である。それによって、キューバの貧困や抑圧は大幅に改善されていくことは間違いない。
21日付
『ザ・ニューヨークタイムズ』紙は、オバマ大統領とキューバのラウル・カストロ大統領が会談し両国の新時代の開幕を宣言したが、過去の遺恨や人権を巡る応酬が歴史的な和解に水を差したと報じている。
記者会見の席上、両首脳は両国の関係正常化に向けて取り組んでいくことを表明したが、相互に相手国を批判した。カストロ大統領は人権批判への矛先を米国に向け、国民皆保険、教育、同一賃金などを提供できない国がキューバにものを言う資格は無いと述べ、グアンタナモ米軍基地を返還するよう主張した。
オバマ大統領は、首脳会談で反体制派への弾圧に抗議し、自ら活動家と面談をおこなうと語ったことを明かした。その一方、米国はキューバの方針に口出しするつもりはないと断言した。また、カストロ大統領の米国への批判に対しては「我々がある部分で不十分であるとの指摘を歓迎する。我々は批判や意見に対し無感覚であったり恐れたりしてはならないと思う」と答えた。
但し、批判の応酬にもかかわらず両首脳の間では明らかに信頼関係があり、冷戦以来となる両国関係の改善を象徴する温かさがあった。
21日付
『ABCニュース』は、オバマ大統領への単独インタビューを報じ、その中でオバマ氏はキューバの指導者は本気で変化を望んでおり、今後より豊かになるだろうと述べた。
・50年もの間、キューバは米国による体制変更や侵略の意図を、国内の反体制派を弾圧する口実にしてきた。国交正常化によって、その口実は使えなくなる。私はカストロ大統領に、米国はキューバに変化を強制できないが、普遍的な人権のために立ち上がることはできるし今後もそうしていく、と伝えた。
・カストロ大統領は、労働党や現体制を転覆させるともりはないが、本気で変化を望んでいると確信する。キューバの次世代にはこうした移行が求められると思う。
閉じる
その他の最新記事