アフガンと中国のこれからの関係(8月23日)
バイデン大統領のアフガニスタンからの米軍撤退の判断に対し「タイミングを見誤った」などと批判の声が挙がっている。一方でバイデン大統領の決断を、「台頭する中国を抑えるために考えられた練度の高い作戦ではないか」と評価する声もある。
今、中国が最も恐れていることは「トルキスタン・イスラム運動」などのイスラム過激派の動きが活発化して新疆ウイグル自治区の安定が脅かされることである。人権弾圧と批判される中で中国が強制収容施設を作り、強制的にウイグル族を中国人に同化させようとしてきたこともそうした焦りから来ている。...
全部読む
バイデン大統領のアフガニスタンからの米軍撤退の判断に対し「タイミングを見誤った」などと批判の声が挙がっている。一方でバイデン大統領の決断を、「台頭する中国を抑えるために考えられた練度の高い作戦ではないか」と評価する声もある。
今、中国が最も恐れていることは「トルキスタン・イスラム運動」などのイスラム過激派の動きが活発化して新疆ウイグル自治区の安定が脅かされることである。人権弾圧と批判される中で中国が強制収容施設を作り、強制的にウイグル族を中国人に同化させようとしてきたこともそうした焦りから来ている。
タリバンがアフガニスタンを支配する予兆を読み取った中国・王毅外相はタリバン上層部を中国に招き、「自分達はテロを中国に輸出しない」との口約束と引き換えに資金援助と投資を約束した。
これまでは、米軍が駐留していたおかげでイスラム原理主主義の台頭がある程度抑え込まれていたという側面があったことは事実であり、中国もその恩恵に預かっていた。中国は自からの支配地域でウイグル族の過激派を匿っているとしてタリバンを批判し、タリバンと戦っていた米国に感謝すらしていた。
ところがその米国がアフガニスタンから撤退してしまった。タリバンは、アフガニスタンをわずか数日のうちに制圧し、その勢力圏はたちまち山岳地帯にある中国・新疆ウイグル自治区との境界線に達した。
タリバンのアフガニスタンと新疆ウイグル自治区が細長いわずか76キロの境界線を挟んで隣り合うという中国にとっては最悪な状況となっている。
タリバンは王毅外相に「自分達はテロを中国に輸出しない」と約束したが、タリバン穏健派による約束であり、末端の過激派がこの約束を守るとは限らない。ウイグル族の過激派を匿った過去の史実や、イスラムの大義を重んじるイスラム原理主義者であることを踏まえればこの約束が守られない可能性は十分にある。
そう考えると米国のアフガニスタンからの撤退は、中国にとっての潜在的敵国を中国の隣に出現させるというよく練られた作戦といえなくもない。アフガニスタン動向は複雑な利害関係を作っている。
閉じる
日本政府・近く自衛隊機派遣・アフガニスタン退避へ調整開始(8月23日)
日本政府は近く自衛隊を派遣し、国際機関の日本人職員や大使館のスタッフなど退避させる方向で調整を開始した。
昨夜、現地状況を把握するため外務省・防衛相の職員が現地に向かった。英国・ジョンソン首相は現地からの安全退避を確かなものとし、人道危機を防ぐため国際社会の協力が不可欠だとツイッターに投稿した。
またアフガニスタン情勢をめぐって24日G7首脳会議をオンラインで開くと発表した。
アフガニスタン・タリバン新政権樹立に向け協議(8月23日)
タリバンがカブールを制圧してから1週間、市民の多くは外出を控えている。タリバンは新政権樹立に向け崩壊した政権の高官などと協議進める。
パンジシール州は北部同盟の指導者だったマスード司令官の息子、タリバンに屈しない考え示し反撃への準備を進める。
バグラン州では地元勢力がタリバン制圧地区を攻撃し奪還した。タリバンの統治が全土に行き渡るか見通せない状況である。
イタリアの軍用機に乗り込む人々、ドイツの米国軍の基地にアフガニスタンの人々が到着した。...
全部読む
タリバンがカブールを制圧してから1週間、市民の多くは外出を控えている。タリバンは新政権樹立に向け崩壊した政権の高官などと協議進める。
パンジシール州は北部同盟の指導者だったマスード司令官の息子、タリバンに屈しない考え示し反撃への準備を進める。
バグラン州では地元勢力がタリバン制圧地区を攻撃し奪還した。タリバンの統治が全土に行き渡るか見通せない状況である。
イタリアの軍用機に乗り込む人々、ドイツの米国軍の基地にアフガニスタンの人々が到着した。
米国防総省は約1万7000人が退避している。米国・バイデン政権は一時的な受け入れ先の収容能力が限界に近付いている。米国内などへの輸送に民間の航空機を動員する等と発表した。
米国・ウォールストリートジャーナルは日本・韓国の米軍基地も一時的な収容先の候補として検討していると伝えている。
閉じる
タリバン支配後のアフガニスタンをめぐる米中関係(8月21日)
バイデン政権は米国国民の厭戦ムードやアフガンに介入から20年という区切りの良さに目を奪われ、アフガニスタンから退避するタイミングを見誤った。
現時点で言えることは、退避すべき米国人や米軍がまだアフガニスタン国内にいるため、8月末の撤収プランは変更を迫られている。これらの人々は、80年代の米国大使館占領事件の時のように人質にされないとも限らないことなどで、バイデン大統領は苦境に立たされている。...
全部読む
バイデン政権は米国国民の厭戦ムードやアフガンに介入から20年という区切りの良さに目を奪われ、アフガニスタンから退避するタイミングを見誤った。
現時点で言えることは、退避すべき米国人や米軍がまだアフガニスタン国内にいるため、8月末の撤収プランは変更を迫られている。これらの人々は、80年代の米国大使館占領事件の時のように人質にされないとも限らないことなどで、バイデン大統領は苦境に立たされている。
今後の国家の方向性について、タリバンの上層部は「民主主義に立脚しない政治を行う」と明言していることからわかるように一筋縄ではいかない政権が誕生することは確かである。
今後、タリバンと同じスンニ派のアルカイダやISなど、イスラム過激派がアフガニスタンに集結し、この国が国際テロの温床になる可能性も十分にあり得る。最悪の事態は、タリバンが統治を誤り、内戦状態に陥る可能性もある。
タリバン主導のアフガニスタンがうまくいく場合のシナリオは、中国が強く介入した場合である。中国・王毅外相は「さらなる圧力を(タリバンに」かけるのではなく、(新政府を認めるよう)前向きに考えるべきだ」と対タリバン強硬派の英国をけん制したことからもそうした予兆が読み取れる。
既に中国はタリバンに経済支援と投資を約束しているが、一義的にはアフガニスタンに埋蔵されているレアース、鉄、銅、原油などの豊富な地下資源や安い労働力を狙っているものとみられる。
中国には別の狙いもあり、タリバンを懐柔することによってウイグル族のテロ活動を抑え込み、ウイグル族弾圧を正当化したい思惑と、「一帯一路」実現に向け米国の影響力を徹底的に排除した中央アジアを自らが、グリップしていきたいという強い思いがあると考えられる。
来年2月の北京五輪開幕式でタリバン主導のアフガニスタン選手団の入場シーン見れるかどうかは今後の中国の手腕にかかっていると言っても良いかも知れない。
閉じる
「アフガニスタン情勢」内の検索