ステロイド薬・新型コロナウイルスに効果(6月17日)
新型コロナウイルスとの闘いで医学的に大きな突破口が開かれパンデミックの初期段階から使っていれば何千もの命を救えた可能性がある薬が突き止められた。
オックスフォード大学のチームの研究で60年も使われよく知られているステロイド薬「デキサメタゾン」に優れた効果がある可能性が判明した。
この結果は英国全土6000人余りの患者を対象にした臨床試験に基づくもので「デキサメタゾン」の投与により人工呼吸器仕様の患者で死亡リスクが3分の1減り酸素吸入が必要な患者で5分の1減っている。...
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新型コロナウイルスとの闘いで医学的に大きな突破口が開かれパンデミックの初期段階から使っていれば何千もの命を救えた可能性がある薬が突き止められた。
オックスフォード大学のチームの研究で60年も使われよく知られているステロイド薬「デキサメタゾン」に優れた効果がある可能性が判明した。
この結果は英国全土6000人余りの患者を対象にした臨床試験に基づくもので「デキサメタゾン」の投与により人工呼吸器仕様の患者で死亡リスクが3分の1減り酸素吸入が必要な患者で5分の1減っている。
「デキサメタゾン」は何十年も出回ってきたステロイド薬で関節炎、ぜんそくなどに広く使われている。
保健省の最新データによるとこの24時間で新型コロナウイルス関連でさらに233人が死亡。英国での死者は合計4万1969人。これには病院、介護施設、より広く地域での死者が含まれる。
3月中旬からの新型コロナによる死者は下降線をたどっており、現在の7日間平均は1日で155人となっている。
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ワクチン開発最前線(6月13日)
これまで中国は生薬や後発医薬品の開発がメインであったが、この10年間で中国のワクチン開発技術は目覚ましい進歩を見せ、世界のワクチン業界をリードする規模に成長している。その代表的企業が中国・カンシノバイオロジクス社である。
現在、弱毒化したアデノウイルスをベクターに用いて、患者の体内で抗体を作る第2相の臨床実験に入っており、米国・モデルナ社、英国・アストラゼネカ社、オックスフォード大学と並びワクチン開発の先頭集団を走っている。...
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これまで中国は生薬や後発医薬品の開発がメインであったが、この10年間で中国のワクチン開発技術は目覚ましい進歩を見せ、世界のワクチン業界をリードする規模に成長している。その代表的企業が中国・カンシノバイオロジクス社である。
現在、弱毒化したアデノウイルスをベクターに用いて、患者の体内で抗体を作る第2相の臨床実験に入っており、米国・モデルナ社、英国・アストラゼネカ社、オックスフォード大学と並びワクチン開発の先頭集団を走っている。
同社はアフリカでしばしば発生するエボラ出血熱のワクチンを独自開発しその名前を世界に知らしめた。このワクチンはアフリカに派遣された中国の国連平和維持軍や中国人医療関係者に投与され、その効果が確かめられている。
カンシノバイオロジクス社のワクチン開発の動向は、「ワープスピード作戦」によって世界のワクチン開発をリードし、大統領選を有利に運びたいトランプ大統領にとっては大きな懸念材料となっている。
中国は国の戦略としてワクチンを他国に先駆けて開発し、それを供給することによって中国の影響力を強めようとしていることは間違いなく、この意味においてトランプ大統領と相当バッティングしてくる。
中国をけん制するかのように米国・モデルナ社は12日、「マウスを使った新型コロナウイルスワクチンの実験で、症状が重篤化するリスクが抑えられたほか、1回の投与で新型コロナへの感染防止効果が得られた」と発表した。
水面下ではより熾烈な米中のワクチン覇権争いが展開されている。米国・FBIとCISA(Cybersecurity and Infrastructure Security Agency)は「中国と関係するハッカー集団が新型コロナウイルスのワクチンや新薬、検査データを不正に取得しようとしているケースが複数確認されている」とし、全米の大学や研究機関に警告し、中国がらみの疑わしい動きを報告するよう求めている。
さらに2019年春以降、バイオ医学関連分野に関与する中国とコネクションを持つ研究者が追放される動きが相次ぐなど、米中の覇権争いが新型コロナのワクチン開発にも影響を及ぼし始めている。
ワクチン開発の行方は来年、東京五輪を控える日本にとっても他人事ではなく、米中覇権争いが優先されワクチン開発に遅れが出るような事態だけは避けなくてはならない。日本には独自にワクチン開発を進める一方で、東京五輪ホスト国という立場を利用し、世界のワクチン開発競争を進める戦略しかない。
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フランス・PCR検査急増・背景に日本の技術(6月9日)
新型コロナウイルスの第2波に向けた警戒が続く中、重要な取り組みのひとつがPCR検査でいち早く感染拡大の兆候をつかむことである。
日本政府は検査体制を強化する方針を示しているが、実施数は欧米などと比べて少ない状況が続いている。
フランスでは日本の技術が活躍している。フランスでは先月から外出制限を大幅に緩和し、政府はPCR検査の拡充を発表した。
各地でトライブスルー方式も導入し、小規模な民間施設も協力して検査が進んでいる。...
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新型コロナウイルスの第2波に向けた警戒が続く中、重要な取り組みのひとつがPCR検査でいち早く感染拡大の兆候をつかむことである。
日本政府は検査体制を強化する方針を示しているが、実施数は欧米などと比べて少ない状況が続いている。
フランスでは日本の技術が活躍している。フランスでは先月から外出制限を大幅に緩和し、政府はPCR検査の拡充を発表した。
各地でトライブスルー方式も導入し、小規模な民間施設も協力して検査が進んでいる。
日本のメーカーが開発した検査工程を全自動で行える機器の導入も進んでいる。開発したのは、遺伝子検査の自動化に取り組んできた千葉県にある精密機器メーカーだ。
日本でも導入の準備が進められている。他にも日本企業によるPCR検査機器の開発は活発になっている。
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PCR検査体制は根本から変われるか(6月6日)
日本では5月中旬に目標だった1日あたり最大2万件の検査能力が整ったが、実際に行われた件数は多くても1日9000件程度であり、人口に対する検査件数は他の国と比べてもかなり少ない。日本においては、あくまで研究開発や保健所の疫学調査用のツールであり、臨床や医療診断のためのツールとしては使われてこなかったということが他国に比べて遅れた一因となっている。
しかし今後は日本人ビジネスマンが海外を訪れる際にも陰性証明が必要になるなど、検査体制を強化する動きが各国にあり、PCR検査体制の拡充は世界全体の問題となっている。...
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日本では5月中旬に目標だった1日あたり最大2万件の検査能力が整ったが、実際に行われた件数は多くても1日9000件程度であり、人口に対する検査件数は他の国と比べてもかなり少ない。日本においては、あくまで研究開発や保健所の疫学調査用のツールであり、臨床や医療診断のためのツールとしては使われてこなかったということが他国に比べて遅れた一因となっている。
しかし今後は日本人ビジネスマンが海外を訪れる際にも陰性証明が必要になるなど、検査体制を強化する動きが各国にあり、PCR検査体制の拡充は世界全体の問題となっている。特に日本は来年、五輪を控えているためにPCR検査体制を大幅に拡大する必要に迫られていることは間違いない。
こうした中で、注目されているのが、プレシジョンシステムサイエンス社が開発した全自動PCR検査装置である。プレシジョンシステムサイエンス社は千葉県にある日本の会社であるが、全自動PCR検査装置は日本では承認が下りていないものの、ヨーロッパではPCR検査数増加に貢献し、フランス大使から感謝状が贈られるなど、大きな評価を得ている。装置と試薬(海外製)については既に国に保険適用を申請済であるという。大量生産が可能であり、今後、唾液の検体サンプリングと組み合わせることによって大幅な検査数増加が期待できそうである。
全自動PCR検査装置は細胞やDNA、核酸を抽出したカートリッジを用いて自動検査を行う。試薬があらかじめカートリッジの中に入っており、抽出後、微量のPCR試薬をさらに加えて、サームラサーキュラーにかけて増幅させる。この時、DNAを100万倍に増幅させ、これを上から蛍光で測定することによってウイルスが検体の中にいたか、いなかったかを確実に判定することができるという。6時間稼働の場合、開発中の装置は1日あたり72件の処理を行うことが可能であり、24時間稼働させた場合には約300件、30台の全自動PCR検査装置があれば1日9000件のPCR検査を行うことができる。価格も1台あたり1000万円と、通常のPCR検査の人件費、感染リスクなどを踏まえればリーズナブルな価格といえよう。
現在行われている全自動ではないPCR検査は工程が複雑であり、待ち時間が生じたり、感染のリスクもあるが、全自動PCR装置を使えば感染のリスクを低減させ、きっちりと効率的に検査が行え、人手を介さず機械が行うので精度も上がることが期待できる。日本産まれの全自動PCR検査機器が満を持して、いよいよ日本で使う時がやってきたと言えそうだ。
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東京五輪の開催可能性は(6月6日)
米国はRNAワクチン、日本はDNAワクチンの開発にそれぞれ競い合うようにして前のめりになっているが、ワクチンには有効性と安全性の両方を満たしていることが要求され、接種できる時期は見通せない。期待されたレムデシビルも中等症に対する限定的な効果にとどまるとされ、安倍首相がスピード承認を約束していたアビガンも臨床研究で明確な有効性が示されず早期承認は絶望的な状況になっている。
このような中で日本政府は「東京五輪を来年の7月23日から8月8日まで行う」と早々と発表した。...
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米国はRNAワクチン、日本はDNAワクチンの開発にそれぞれ競い合うようにして前のめりになっているが、ワクチンには有効性と安全性の両方を満たしていることが要求され、接種できる時期は見通せない。期待されたレムデシビルも中等症に対する限定的な効果にとどまるとされ、安倍首相がスピード承認を約束していたアビガンも臨床研究で明確な有効性が示されず早期承認は絶望的な状況になっている。
このような中で日本政府は「東京五輪を来年の7月23日から8月8日まで行う」と早々と発表した。来年7月の状況がどうなっているのかはなかなか予測することは難しい。政府は選手や観客にもPCR検査を行う方向で検討しているようだが、そもそも海外の感染状況がどうなっているのかもわからない中で来たい選手、観客がいるのかどうかも疑わしい。
さらに深刻なのは主催する東京都の厳しい財政事情である。4日、小池百合子知事は、「国や大会組織委員会と連携して、合理化や簡素化を進めていく」とし質素な五輪にする考えを示したが、既に新型コロナウイルスの対策費は1兆円超に膨らみ、財政調整基金は9000億円超の残高をほぼ使い切ってしまった。
安倍首相は完全な形で東京五輪を行うことを表明したが、数千億円といわれる追加費用のうち、IOCは再々延期はないとくぎを刺し、最大6億5000万ドル(約709億円)を支払う意向で残りを開催都市に負担させようとしている。
このまま開催にこぎつけた場合、都債を発行して賄う形になる可能性が高いが、例えば、感染リスクを抑えるためにPCR検査を実施し入場者数を制限した場合に、チケット収入は大幅に減少する上、簡素化によって広告効果の減少を懸念して、スポンサーが減少することなども想定される。このあたりをどう考えるのか。7月の東京都知事選でも現実を直視した東京五輪についての冷徹な議論が必要とされる。
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