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北朝鮮経済はどうなるか(3月21日)
北朝鮮による海上での荷物の受け渡しを行う「瀬取り」は、2017年には年間60数件であったものが、2018年には130件以上にのぼったと、韓国軍合同参謀本部が報告している。一方国連の制裁委員会の報告によると、2018年は1~8月だけで瀬取りは148件にのぼったという。監視の目を逃れたものもあるはずなので、瀬取りの件数はそれ以上に多いことになる。危険な瀬取りを頻繁に行わなければならないほど、経済制裁は北朝鮮経済に影響を与えていることになる。...
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北朝鮮による海上での荷物の受け渡しを行う「瀬取り」は、2017年には年間60数件であったものが、2018年には130件以上にのぼったと、韓国軍合同参謀本部が報告している。一方国連の制裁委員会の報告によると、2018年は1~8月だけで瀬取りは148件にのぼったという。監視の目を逃れたものもあるはずなので、瀬取りの件数はそれ以上に多いことになる。危険な瀬取りを頻繁に行わなければならないほど、経済制裁は北朝鮮経済に影響を与えていることになる。
北朝鮮の物価が上がっていないことなどから経済制裁の効果に懐疑的な意見もあったが、ハノイでの米朝首脳会談で北朝鮮が経済制裁の解除に固執していたことを考えれば、経済制裁は効果があがっているのだろう。首脳会談の前には北朝鮮は国連に食糧支援を要請していた。経済制裁が非人道的だと訴えたかったのだろうが、北朝鮮経済がそれだけ切羽詰まっているともいえる。
これからの北朝鮮経済はどうなるのか。北朝鮮では2010年代以降「なし崩しの市場化」が急速に進んでいる。国家による流通網が機能不全に陥って、闇市場が誕生し、市場を追認せざるを得なくなっていった。さらにトンジュ(金主)といわれるブローカーも活動するようになり、市場活動は一層活発化した。金正日時代には市場で売買を行えるのは40代以上の女性だけ、というような規制がかけられたこともあったが、規制を取り下げざるを得ないほど、市場は北朝鮮にとってなくてはならないものになっていた。
首脳会談の決裂を受け、さらに経済制裁が強化されるかもしれない状況のなかで、北朝鮮経済はどうなるのか。本来であれば、財政的に困窮していることから経済に介入することができなくなっているので、市場をさらに活発化させ、企業の独立採算制や農業での圃田制といわれる制度をさらに大規模に行っていくしかなす術がないはずである。
ただし地方の役人までにカネがまわらなくなってくると、企業の運営権を貸与されている人や市場で売買を行っている者たちに対し、様々な名目をつけて現在より高い手数料を取り立てることになるかもしれない。あるいは現在もはびこっているといわれる賄賂をさらに公然と要求するようになるだろう。運転資金までも枯渇して企業経営や市場活動ができなくなる可能性もある。
さらに現在、市場を活性化させる一方で「社会主義の堅持」がいわれているが、米朝首脳会談が失敗によって金正恩の権威が落ちるような兆しが少しでもでれば、「社会主義の堅持」の名の下に、引き締め政策が行われ、市場や企業の独立採算制にも大ナタが振るわれる可能性もある。
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北朝鮮外務省次官、非核化交渉停止を示唆(3月16日)
15日北朝鮮の崔善姫外務省次官が、米国との非核化交渉を停止することを考えている、金正恩委員長が第二次米朝会談のあとの北朝鮮の行動計画について近々発表する、と記者会見で発表した。記者会見は各国の駐朝鮮大使館代表や外国メディアを招待して行われたもの。
崔善姫外務次官といえば、3月1日未明に行われた李容浩外相の記者会見で、李外相に「余計なことを言わないでください」と囁き、外相にかわって質問を受け、「金正恩委員長は対話への意欲を少し失ったようだ」と語っていたことを思い出す。...
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15日北朝鮮の崔善姫外務省次官が、米国との非核化交渉を停止することを考えている、金正恩委員長が第二次米朝会談のあとの北朝鮮の行動計画について近々発表する、と記者会見で発表した。記者会見は各国の駐朝鮮大使館代表や外国メディアを招待して行われたもの。
崔善姫外務次官といえば、3月1日未明に行われた李容浩外相の記者会見で、李外相に「余計なことを言わないでください」と囁き、外相にかわって質問を受け、「金正恩委員長は対話への意欲を少し失ったようだ」と語っていたことを思い出す。
北朝鮮がミサイル発射実験場を再建したことと合わせると、北朝鮮が今後交渉を停止し、ミサイル発射実験を再開する可能性もある。そうなれば「北朝鮮は1年以上ミサイル発射や核実験を行っていない。私以前の大統領はできなかったことだ」と自慢していたトランプ大統領の面子はつぶれることになる。つまり2017年以前の状況に戻る、あるいはそれ以上に状況が悪化することもあり得る。金正恩委員長は本年の「新年の辞」で、「米国が依然として共和国に対する制裁と圧迫へと乗り出すなら・・・新たな道を模索せざるを得なくなることもあり得る」と述べていた。経済制裁が解除されなければ、「新しい道」を模索すると警告を発していたわけである。
トランプ大統領と金正恩委員長が互いにシンパシーを感じているらしい、という細い糸に今後の交渉の望を託すしかなさそうである。
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米国・ポンペイオ国務長官“北朝鮮の非核化はキム委員長が約束”(3月16日)
北朝鮮・チェソニ外務次官が米国との非核化を巡る交渉の中断を警告したことについて米国ポンペイオ国務長官は、北朝鮮の非核化はキム委員長が自ら約束したことだと述べ、北朝鮮に交渉に応じるよう呼びかけた。
ワシントンで会見したポンペイオ国務長官は記者に、北朝鮮は核やミサイルの実験を再開するのではないかと問われると「キム委員長は実験を再開しないとトランプ大統領に直接何度も約束している。その約束を守ると思っている」と述べ北朝鮮にくぎを刺した。...
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北朝鮮・チェソニ外務次官が米国との非核化を巡る交渉の中断を警告したことについて米国ポンペイオ国務長官は、北朝鮮の非核化はキム委員長が自ら約束したことだと述べ、北朝鮮に交渉に応じるよう呼びかけた。
ワシントンで会見したポンペイオ国務長官は記者に、北朝鮮は核やミサイルの実験を再開するのではないかと問われると「キム委員長は実験を再開しないとトランプ大統領に直接何度も約束している。その約束を守ると思っている」と述べ北朝鮮にくぎを刺した。
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チェ外務次官・会見で米国を非難(3月16日)
(北朝鮮・チェ外務次官が会見で米国を非難)
決裂した米朝首脳会談を受けて、北朝鮮・チェ外務次官が15日会見を開いた。この中でチェ外務次官は「我々はいかなる形でも米国の要求を受け入れるつもりはないし、このような交渉に(今後)かかわるつもりもない」と述べ、米国側の非核化要求には応じない構えを鮮明にした。金委員長も核・ミサイル開発中断の継続などをめぐる新方針を発表するというが、最高指導者の発表前に閣僚が会見でこうした公式声明を出すことは北朝鮮では異例のことだという。...
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(北朝鮮・チェ外務次官が会見で米国を非難)
決裂した米朝首脳会談を受けて、北朝鮮・チェ外務次官が15日会見を開いた。この中でチェ外務次官は「我々はいかなる形でも米国の要求を受け入れるつもりはないし、このような交渉に(今後)かかわるつもりもない」と述べ、米国側の非核化要求には応じない構えを鮮明にした。金委員長も核・ミサイル開発中断の継続などをめぐる新方針を発表するというが、最高指導者の発表前に閣僚が会見でこうした公式声明を出すことは北朝鮮では異例のことだという。金委員長が方針を発表する前に米国の反応を見極めるために行ったものとみられている。
(再び瀬戸際外交に戻る北朝鮮)
金委員長は米朝首脳会談に甘い見通しをもって望んで失敗した。日米関係筋はその理由を「米朝首脳会談を仲介した文大統領が北朝鮮に甘い見通しを吹き込んだため」と分析している。北朝鮮は核を人民の宝と位置づけており、「手放す意思は毛頭ない」ということをすでに鮮明にしている。トランプ政権内の対北朝鮮強硬派であるボルトン補佐官が政権内にいる限りは現状では両者が折り合える可能性は限りなく低い。米国の反応を確認した上で、北朝鮮がふたたび瀬戸際外交に転じるのは時間の問題ともいえる。すでに北朝鮮は従軍慰安婦問題で安倍総理を名指しで批判するなど日本に対して瀬戸際外交を開始している。今後を考える上で南北融和姿勢を鮮明にしている韓国・文大統領がどのように動くのかが非常に重要なポイントとなってくる。韓国では米朝首脳会談決裂の原因は「米国と日本のせい」とする声が上がり始めているといい、特にボルトン補佐官の背後に日本がいると指摘する識者までいる。さらに韓国社会では反米世論が広がる兆しもあるといい、これまで、北朝鮮の瀬戸際外交に対しては日米韓の連携で対峙してきた図式が成立しない状況が出てくることもあり得る。
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北朝鮮:完全な非核化を堅持、ただし段階的に(3月14日)
3月13日、中国外交部の陸慷報道官は「12日に朝鮮の幾つかのメディアが『朝鮮は完全な非核化という立場を堅持している』と述べたことに注目している」と語り、さらに「ハノイ会談の後に朝米双方は共に対話の継続を表明しており、中国としては双方が実際の行動によって、相互の信頼関係を醸成し、コンセンサスを築き、段階的に、容易なところから手をつけ徐々に難しい段階に行き、好循環をつくりあげ、政治的に朝鮮半島の問題を解決できる条件をつくっていくことを期待している」と述べた。...
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3月13日、中国外交部の陸慷報道官は「12日に朝鮮の幾つかのメディアが『朝鮮は完全な非核化という立場を堅持している』と述べたことに注目している」と語り、さらに「ハノイ会談の後に朝米双方は共に対話の継続を表明しており、中国としては双方が実際の行動によって、相互の信頼関係を醸成し、コンセンサスを築き、段階的に、容易なところから手をつけ徐々に難しい段階に行き、好循環をつくりあげ、政治的に朝鮮半島の問題を解決できる条件をつくっていくことを期待している」と述べた。
12日に北朝鮮の幾つかのメディアが「朝鮮半島に恒久的で強固な平和体制を構築し、完全な非核化へ向かうことは、わが共和国の確固たる立場だ」「私たちが提案した非核化措置と、それに対応した部分的な制裁解除要求は、現段階における米国政府の立場と要求も十分反映したもの」であるとして、今回の会談の決裂は米国の責任であると述べている(「 」内の訳は3月13日「Daily NK」)。北朝鮮が主張しているのは、あくまでも行動対行動であり、部分的な非核化に対応し、部分的な制裁措置の緩和を積み重ねることによって、完全な非核化と完全な制裁措置の解除に至るということである。
おりしも3月12日に国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが年次報告書を公表し、北朝鮮の制裁違反の実態を明らかにした。これを受け制裁の履行に一段と力がいれられることになる。また現段階では韓国が主張していた南北朝鮮の経済協力も遠のきそうである。
米国が要求する「完全な非核化」と北朝鮮の「完全な非核化」の認識と手順、タイムスケジュールの折り合いをつけるのは難しい。
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