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(5月の米朝首脳会談に向け各国が動き始めた)
5月の米朝首脳会談に向けて全てが動き始めた。北朝鮮政策について日米で話をすり合わせるべく河野外相は訪米した。北朝鮮は米朝会談が上手くいった場合、日朝首脳会談も視野に入れている模様だ。一方北朝鮮・李容浩外相はスウェーデン・ストックホルムを訪問し、拘束中の米国人3人の取り扱いについてスウェーデンが仲介役となって話し合いがもたれている。米朝会談のおみやげとして米国人3人の身柄を解放するための動きだ。...
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(5月の米朝首脳会談に向け各国が動き始めた)
5月の米朝首脳会談に向けて全てが動き始めた。北朝鮮政策について日米で話をすり合わせるべく河野外相は訪米した。北朝鮮は米朝会談が上手くいった場合、日朝首脳会談も視野に入れている模様だ。一方北朝鮮・李容浩外相はスウェーデン・ストックホルムを訪問し、拘束中の米国人3人の取り扱いについてスウェーデンが仲介役となって話し合いがもたれている。米朝会談のおみやげとして米国人3人の身柄を解放するための動きだ。会談はスウェーデンで行われる可能性もあるが板門店、スイス、ハワイ、など様々な場所が米朝会談の候補地としてあがっている。
(北朝鮮の沈黙の意味は?)
気がかりなのは、金正恩委員長自らが要請した米朝会談をトランプ大統領が受諾したにも関わらず、北朝鮮サイドが未だに公式な声明を出さず、沈黙を守っていることだ。トランプ大統領の米朝会談の開催受諾を受けて、中国とロシアが報道機関向けに「朝鮮半島情勢の緊張緩和を歓迎する」声明を発表しようとしたが、これを米国は北朝鮮への制裁履行が鈍ることを理由に発表させなかったことも理由のひとつなのかもしれない。さらには米国が圧力を継続していることや、対話重視派のティラーソン氏をトランプ大統領が更迭したことも影響している可能性もある。北朝鮮が沈黙する中で「結局は核・ミサイル開発のための時間稼ぎ」「北朝鮮お得意の外交戦術的ブラフ」などと米朝首脳会談の開催自体を危ぶむ声も出てきている。
(対話機運が危惧される動きも)
対話の続く間は核・ミサイル開発は行わないとしている北朝鮮だが、米国の北朝鮮監視機関38ノースは北朝鮮北西部の寧辺で原子力発電所が稼働していることを衛星画像ですでに確認済みで、北朝鮮の言っていることとやっていることの矛盾が露呈している。さらに北朝鮮メディアは「北朝鮮に外交で負けた米日があえいでいる」などとこれまでと変わらない報道を続けていることも気がかりだ。トランプ大統領も対話重視派のティラーソン氏を解任し(前述)、CIA長官のポンペイオ氏を新たな国務長官に任命したほか、マクマスター大統領補佐官を更迭し、後任に対北朝鮮強硬派のボルトン元国連大使もしくはケロッグ国家安全保障会議(NSC)首席補佐官をあてる予定だ。仮に大統領補佐官がボルトン氏に決まった場合はトランプ政権は対北強硬派で固められることになる。この人事は米朝首脳会談に合わせたもので、何度も約束を破っている北朝鮮に対するけん制の意味合いがある。
(日本はどう動くべきか)
これまで蚊帳の外にいる感じの日本であるが、トランプ大統領が安倍総理の助言を信頼しているという指摘がある。前述したように北朝鮮は米朝会談がうまくいった場合には日朝首脳会談も視野に入れており、これは拉致問題を抱える日本にとって絶好のチャンスでもある。日本が積極的に外交力を発揮し、いい流れを作っていくことは東アジアにおける日本のプレゼンスを高めることにもつながる。気がかりなのは森友学園をめぐる財務省の文書書き換え問題で政権が揺さぶられていることだ。この問題で時間が割かれ北朝鮮問題について何の議論もできていない。ポンペオ氏の国務長官の承認に時間がかかるため米朝会談が6、7月にずれこむのではないかという見立ても出ているが、日本は国内問題を早期に解決し東アジアの外交で存在感を発揮してほしい。脅威を取り除いて地域全体を平和にしていくことは日本にとって重要な役割である。
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(米朝首脳会談電撃決定・朝鮮半島の核ミサイル問題は新たな局面へ)
北朝鮮・金正恩委員長が韓国の特使団にトランプ大統領との早期の会談を要請したことを受け、トランプ大統領は5月までに金正恩委員長と会談する意向を明らかにした。北朝鮮の指導者と米国の大統領が話すのは史上初めのことで、朝鮮半島の核ミサイル問題は新たな局面に入ったといえそうだ。核開発の凍結や朝鮮半島の非核化に言及した金正恩委員長の意向をトランプ大統領は高く評価する一方で、最大限の圧力政策は今後も継続するとしている。...
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(米朝首脳会談電撃決定・朝鮮半島の核ミサイル問題は新たな局面へ)
北朝鮮・金正恩委員長が韓国の特使団にトランプ大統領との早期の会談を要請したことを受け、トランプ大統領は5月までに金正恩委員長と会談する意向を明らかにした。北朝鮮の指導者と米国の大統領が話すのは史上初めのことで、朝鮮半島の核ミサイル問題は新たな局面に入ったといえそうだ。核開発の凍結や朝鮮半島の非核化に言及した金正恩委員長の意向をトランプ大統領は高く評価する一方で、最大限の圧力政策は今後も継続するとしている。一連の動きを受けて安倍首相も「北朝鮮の変化を評価する」とした上で、「日米韓が国際社会と共に高度な圧力をかけてきた成果だ」と日米韓連携の成果であることを強調した。今回の米朝首脳会談決定は異例なことづくめであり、政治的プロトコールに従えば韓国大統領を通さずに、いきなり官僚である韓国特別使節団とトランプ大統領が直絶対話することは考えられないことだったが、今回、トランプ大統領が話を聞きたいという申し出によりこれが実現し、今回の判断につながった。米朝会談への道筋をつけるべく、実は水面下で米朝対話が継続して行われており、つい最近もベルリンで米朝対話が行われていたという。
(米朝会談実現の裏にトランプ大統領の戦略と駆け引き)
メディアでは韓国を突破口にした北朝鮮の戦略が成功したかのような論調が多いが、実は大きな要素として、トランプ大統領のビジネスマン的な直観と緻密で冷徹な戦略と駆け引きがそこにあった。北朝鮮側が譲歩した理由として、トランプ大統領が仕込んだ北朝鮮への制裁が効いたということが大きい。トランプ大統領は、北朝鮮を追い詰めるために国連による経済制裁、米国自らによる金融経済制裁、中国の圧力を通じての金融経済制裁という3つの制裁を戦略的に採用し、その上にさらにブラディノーズ作戦を示唆(リーク)したり、米韓合同軍事演習を行うなど、軍事的圧力も加えた。これらを同時並行的に効率よく行うことで結果的に北朝鮮を追い込んだ。一部の識者によると5月から7月にかけて北朝鮮で餓死者が出るとの情報もあるほど制裁が効いていたといい、特に中国の経済制裁の影響は大きく2017年12月の中国から北朝鮮への輸入は8割減となるなど輸入の大部分を中国からのものに頼る北朝鮮としては打撃が大きかったことは容易に想像がつく。トランプ大統領は中国・習国家主席に謝意を伝える電話をし、習主席は「大統領の(米朝会談に)前向きな意思を賞賛する」と大統領にエールを送った。
(米朝会談はいつ、どこで行われるか?)
さて今後、米朝会談が行われる時期と場所が政治的に重要になってくる。場所をどこにするのかで戦略的な駆け引きが行われることになるだろう。トランプ大統領としては物語的、メディア的に絵になる場所を思い描いているものとみられる。金委員長としてはカリスマ性を損なわない場所を望んでいるだろう。一番可能性がある場所としては南北融和の象徴である板門店だろう。その次にはニューヨーク、ハワイ、平壌、平昌などが挙げられる。拉致問題を抱える日本というオプションも考えられなくもない。今回米朝首脳会談に至るまでの道のりでプレイヤーとして存在感の薄かった日本だが、ここで場所を提供して存在感を示したいところだ。時期についてだが、5月末は北朝鮮の記念日はないが、最終月曜日は米国の戦没将兵追悼記念日でありその日に会談を設定する可能性がある。
(会談の行方は?日本の役割は?)
今回、劇的に態度を変更した北朝鮮だが、現行の核・ミサイル開発計画をそう簡単に凍結したり放棄するとはなかなか考えづらい。過去20年間、国際社会を欺いてきたことがそのことを裏付けている。会談の行方は不透明だが、両者ともに即断即決型ということもあり、例えば北朝鮮の核を国際社会で共同管理など、何か大きな進展が出てくる可能性がないとも言い切れない。そうした方向での話が出てきた場合には唯一の被爆国・日本の出番となってくる。5月末までにまだ紆余曲折ある可能性もないとは言えないが、こうしたシナリオを想定し日本外交を展開してもらいたい。また、中国やロシアが自らの存在感を高めるために6か国協議をプラットフォームにすべきと主張し介入してくる可能性もある。日本としては拉致問題の解決も絡めて、様々なシナリオを想定しておくべきである。
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米朝対話に積極的な北朝鮮、条件をつける米国(3月3日)
北朝鮮が微笑み外交攻勢をかけた平昌五輪が終了した2月末、朝鮮労働党副委員長のキムヨンチョルは「米国との対話の扉は開かれている」と米朝対話の開催に意欲を見せた。さらに、北朝鮮はこれまで水面下で米朝対話を指揮してきたチェソニ北米局長を外務次官に昇格させるなど、米朝対話へのシグナルを積極的に発信し始めた。一方、米国は北朝鮮の動きとは真逆で、これまでチェソニ北米局長の米国側のカウンターパートだったジョセフユン特別代表が特別代表を辞任するなど米朝の動きが対照的なものとなっている。...
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北朝鮮が微笑み外交攻勢をかけた平昌五輪が終了した2月末、朝鮮労働党副委員長のキムヨンチョルは「米国との対話の扉は開かれている」と米朝対話の開催に意欲を見せた。さらに、北朝鮮はこれまで水面下で米朝対話を指揮してきたチェソニ北米局長を外務次官に昇格させるなど、米朝対話へのシグナルを積極的に発信し始めた。一方、米国は北朝鮮の動きとは真逆で、これまでチェソニ北米局長の米国側のカウンターパートだったジョセフユン特別代表が特別代表を辞任するなど米朝の動きが対照的なものとなっている。ジョセフユン特別代表は米国の対北朝鮮政策の外交的司令塔だった人物であり、今後の朝鮮半島情勢の行方に大きな影響を与える可能性もある。
米国は非核化に向けた対話が前提と主張
こうした北朝鮮の融和姿勢に釘を刺すかのように1日、トランプ大統領は文大統領との電話会談の中で、「北朝鮮との対話は非核化に向けた対話が前提になる」との認識を示した。非核化を前提にしなければ南北会談も米朝会談もあり得ないということである。同電話会談で文大統領は北朝鮮への特使派遣計画をトランプ大統領に伝えたものの、米国は様子見の構えだ。「米国は対話のハードルを下げる必要がある」という考えの文大統領とトランプ大統領との間にはかなりの温度差がある。
北朝鮮は今後どう動くのか?
北朝鮮の今、融和姿勢に出ている背景には国連の制裁決議の影響が国内で出始めていることや、融和姿勢を見せることで制裁を緩和させたり、経済支援を引き出したいとの考えがあるものとみられる。最終的には戦略的に核・ミサイル開発をやめることには応じられない北朝鮮と、非核化に向けた対話が大前提の米国が同じテーブルにつくことはどちらか一方が譲歩しない限り難しいだろう。とりあえず北朝鮮は、融和政策に前のめりな文政権を巧みに取り込んで米韓を離反させ、核・ミサイル開発のための時間稼ぎを図ることが、これからとってくる戦術になるだろう。
今後の予想されるシナリオ
ティラーソン国務長官はほとんど力を失っており、北朝鮮に精通するユン特別代表もやめてしまった現在、トランプ政権内では北朝鮮に対する外交がまともに機能していない状態にある。3月18日のパラリンピック後に米韓合同軍事演習を予定通り行う構えを米国は崩していない。すでに米軍は水面下で北朝鮮との戦争を想定した図上訓練を実施し、タイでは米軍機で邦人などを脱出させる初の訓練が行われるなど、有事への備えが着々と進んでいる。3月18日までに韓国・文大統領は南北対話を理由に米韓合同軍事演習をやめさせようと動くかもしれないが、その求めに米国が応じるかどうかが今後の鍵となる。軍事演習が行われた場合、北朝鮮がこれに反発し核・ミサイル実験を行う可能性が高い。すると米国の鼻血作戦が発動するかもしれない。
今はそうした崖っぷちにいると言える。
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北朝鮮・米国交渉担当の局長が外務次官に昇格す(2月28日)
北朝鮮外務省で米国を担当するチェソニ北米局長が外務次官に昇格した。
チェは長年に渡って米国との交渉を担い、北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の次席代表も務めてきた。2012年2月を最後に米朝対話が途絶えたあとも、チェは国際会議などの機会を通じて米国元政府高官などと意見交換を重ねてきたほか、去年5月には当時ピョンヤンで拘束されていた米国人大学生の解放をめぐり、ノルウェーで米国・ジョセフユン特別代表と接触したと伝えられていた。...
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北朝鮮外務省で米国を担当するチェソニ北米局長が外務次官に昇格した。
チェは長年に渡って米国との交渉を担い、北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の次席代表も務めてきた。2012年2月を最後に米朝対話が途絶えたあとも、チェは国際会議などの機会を通じて米国元政府高官などと意見交換を重ねてきたほか、去年5月には当時ピョンヤンで拘束されていた米国人大学生の解放をめぐり、ノルウェーで米国・ジョセフユン特別代表と接触したと伝えられていた。
北朝鮮は、ピョンチャンオリンピックの閉会式に合わせて韓国に派遣したキムヨンチョル朝鮮労働党副委員長が韓国・ムンジェイン大統領との会談で「米国と対話をする十分な用意がある」と述べ、米朝対話の再開に前向きな姿勢を示しており、このこととチェの外務次官への昇格に関連があるのか関係国は注視しているものとみられる。
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北朝鮮・米国との対話“扉は開かれている”と豪語(2月27日)
平昌五輪閉会式に合わせて北朝鮮から韓国に派遣された高位級代表団のトップの朝鮮労働党・キムヨンチョル副委員長は韓国・チョンウィヨン国家安保室長らと会談した。
米国との対話の扉は開かれていると米朝対話の再開に前向きな姿勢を強調した。
ムンジェイン大統領との会談でも米国と対話をする十分な用意があると述べたばかり。
韓国統一省報道官は「北と米国が適切な機会を通じ建設的な対話を始めることを期待する」とコメントした。
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