来年3月29日のBrexit( EU離脱)期限に向けて、英国とEU側が交渉を続けているが、最悪交渉が不調に終わり、合意なしの離脱の可能性も取り沙汰されつつある。そこで英国に進出している日本企業の多くが、最悪の場合に備えて、欧州拠点を英国から他の国に移転させたり、移転させる準備に入っている。なお、ユンケル欧州委員会委員長は、他27加盟国を代表して、英国に良い所取りされないよう厳しい態度で交渉に臨んでいる一方、メイ首相は、交渉妥結がなくば、390億ポンド(約5兆8,500億円)の補償金は一切支払わないと強硬である。
10月6日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「英国進出の日本企業、Brexit後の“欧州アクセス”確保のため英国脱出」
今年2月に英国進出の日本企業代表の19人がテレーザ・メイ首相と会談したことを受けて、鶴岡公二駐英日本大使は、Brexit交渉の結果が最悪となった場合、多くの日本企業は英国に留まって事業継続することはできないだろうと警鐘を鳴らした。
それから8ヵ月経った現在、合意なしのBrexitという最悪のシナリオが取り沙汰されるに至り、多くの日本企業が英国脱出を決めたり、またその準備に入っている。...
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10月6日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「英国進出の日本企業、Brexit後の“欧州アクセス”確保のため英国脱出」
今年2月に英国進出の日本企業代表の19人がテレーザ・メイ首相と会談したことを受けて、鶴岡公二駐英日本大使は、Brexit交渉の結果が最悪となった場合、多くの日本企業は英国に留まって事業継続することはできないだろうと警鐘を鳴らした。
それから8ヵ月経った現在、合意なしのBrexitという最悪のシナリオが取り沙汰されるに至り、多くの日本企業が英国脱出を決めたり、またその準備に入っている。
例えば、トヨタ自動車は9月29日、最悪のシナリオとなった場合、ダービーにある自動車製造工場を一時的に操業停止する必要があると表明した。
パナソニックは既に、欧州本部をロンドンからアムステルダム(オランダ)に移転し、更に、無印良品も、ドイツへの移転を検討している。
また、産業用ロボット製造業の安川電機は、英国から欧州大陸側のどこかに拠点を移すべく最終検討段階に入っている。
飯田慎一駐英外交・メディア担当官は、合意なしのBrexitは正に崖っぷちの事態に他ならないと危機感を表した。
英国は日本企業にとって、米国に次ぐ2番目に大きな投資先で、日本貿易振興機構(JETRO)によると、昨年末現在で英国向け投資額は1,530億ドル(約17兆4,400億円)に上るという。
また、英国にとっても日本は、米国に次ぐ投資受け入れ先で、現在約1,000社が英国に拠点を構え、16万人以上が雇用されている。
ただ、JETROが昨年12月に行ったアンケート調査によると、進出企業の47%が、Brexitによって欧州事業に悪影響をもたらすと考えているとする。
先に述べた製造業の他、金融業も英国脱出、あるいは英国以外にも拠点分散を進めつつある。
・野村証券、大和証券、三井住友フィナンシャルグループ:ドイツに欧州拠点開設
・三菱UFJフィナンシャルグループ:オランダに開設
・みずほフィナンシャルグループ:英国の他オランダを重要拠点化
一方、10月7日付英『ザ・サン』紙:「メイ首相、EU側と合意されない限りBrexitに伴う390億ポンドの補償金は一切支払わないと頑な」
ジャン=クロード・ユンケル欧州委員会委員長は、合意なしのBrexitはEUにとって悲惨な結果をもたらすことをよく承知しているものの、他27加盟国からのプレッシャーもあって、中々容易な妥協は許されない状況にある。
一方、メイ首相も、与党・保守党からの突き上げもあって、英国に多大な損失をもたらす合意はできない状況である。
しかも、同首相は、何らかの交渉妥結なしには、英国が約した390億ポンドの補償金について、EU側に1ペニーさえ払わないと頑なとなっていると言われている。
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