来週ドイツで開かれるG20を前に一部の報道では、公式声明草案から保護貿易主義や通貨安競争への反対の表現を削除すると伝わっている。一方、OECDの発表した2017年3月の世界経済見通しでは「保護貿易主義による貿易障壁の増大、株式市場の過熱、また潜在的な為替のボラティリティによるリスクに耐えるほど世界経済は強くない」としており、トランプ米大統領の政策が実行された場合の世界経済への影響を懸念している。
3月7日の
『ロイター』は来週開催される3月17日から18日までドイツのバーデンバーデンで開かれるG20会合の公式声明の草案から、保護貿易主義や通貨安競争をはっきりと否定する表現はなくなり、開かれた公正な国際貿易システムを維持することだけを約束するのみとなる見込みだと報じている。この会合は、保護貿易主義のドナルド・トランプ米政権の代表が出席する最初のG20となる。「ロイター通信」が入手した声明の草案は、米国の新たな立場を反映しているもようで、昨年のG20財務大臣が採択した「すべての形態の保護貿易主義に反対する」という言葉を削除する見込みだ。保護主義に対する警告は、10年以上にわたってG20公式声明で登場している。草案にはG20が「通貨安競争を控える」べきであり、「他国との競争上の目的で為替レートを用いるべきではない」という前回の声明で使用された文も含まれていない。代わりに、「我々はオープンで公正な国際貿易体制を維持する」と「これまでの為替レートの約束を再確認する」と述べている。前回のG20の公式会合を含む長年のG20会合では「為替相場の過度のボラティリティと無秩序な動きが経済的、財政的安定に悪影響を及ぼす可能性がある」とあったが。この文もまた無くなっている。
またトランプ米大統領のピーター・ナバロ貿易顧問は、今月今回のG20議長国であるドイツとの間にある650億ドルの米国の貿易赤字について二国間協議が必要だと述べている。ナバロ顧問は先月もドイツが貿易で優位を獲得するため弱いユーロを利用していると批判しているが、ユーロの為替レートは欧州中央銀行の独立した金融政策により市場にゆだねられているとドイツ政府から反論されている。トランプ米大統領ドイツからの米国への輸入自動車について35%の国境税を課すことで、米国製自動車で多くの雇用を創出すると主張している。ドイツ経済では輸出の経済に占める比率が高く、また米国はドイツの最も重要な単一貿易相手国であり、輸出のほぼ10%を占めているので対応に苦慮している。
一方、3月7日の
『ブルームバーグ』は経済協力開発機構(OECD)発表の2017年3月の世界経済見通しについて報じている。この中で高い経済成長率予測に対して生産性は弱いままで、保護貿易主義による貿易障壁の増大、株式市場の過熱、また潜在的な為替のボラティリティによるリスクに耐えるほど世界経済は強くないとしている。世界の成長率は 2016年の3%から2017年は3.3%に達し、2018年に更に増加するが、投資と生産性向上による利益が弱いのでその伸びは金融危機の前の二十年間の平均に達しないとしている。トランプ米政権の保護貿易政策も、企業が商品価格を引き上げて貿易を減らすことにつながり世界経済成長低下への懸念材料であり、またトランプ米大統領の景気刺激策をはやす株式市場の高いバリュエーションと実体経済の見通しにはギャップが有るとしている。
また金利サイクルの変動から来る為替変動を指摘している。米連邦準備理事会(FRB)は来週、金利を引き上げると予想されているが、今年は一連の金利上昇が始まる可能性がある。為替リスクはすぐにではないが、大きなショックが起きて経済の回復を妨げる可能性があるとしている。
ドイツ、フランス、オランダなど選挙のある欧州では、政治的なリスクがあるとしている。OECDのデータによると、2007年以降、特にフランス、米国、ギリシャで政府への信頼感が低下している。政府への信頼低下は、政策課題を達成するとしている。
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