ドナルド・トランプ米大統領の北の隣人であるカナダのジャスティン・トルドー首相は、トランプ政権との間でカナダにとって最も重要な5千億ドルに上る米国との経済関係をどのように維持するかという問題を抱えている。
「陽の当たる道」という楽観的なキャンペーンメッセージを用い、自ら男女同権主義を宣言する45歳のカナダの首相と、経済の保護主義と移民規制を基盤にして権力を獲得した70歳の米国大統領とは対照的である。...
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ドナルド・トランプ米大統領の北の隣人であるカナダのジャスティン・トルドー首相は、トランプ政権との間でカナダにとって最も重要な5千億ドルに上る米国との経済関係をどのように維持するかという問題を抱えている。
「陽の当たる道」という楽観的なキャンペーンメッセージを用い、自ら男女同権主義を宣言する45歳のカナダの首相と、経済の保護主義と移民規制を基盤にして権力を獲得した70歳の米国大統領とは対照的である。
政策面で潜在的な争点となるのは、1.米国の雇用喪失の原因になっており徹底的に見直すとトランプ米大統領が約束した北米自由貿易協定(NAFTA)、2.カナダが今年2万5000人のシリア難民を認めることを約束した移民問題、3. トランプ米大統領が米国の方針を変えた一方、トルドー加首相が推進する炭素税に絡む気候変動の問題、である。
トルドー加首相の2015年の選挙運動と最初の数ヶ月間外交政策顧問の1人であったロナルド・パリ氏は、「過去数週間でのトランプ米大統領は、彼が選挙期間中やると言ったことをやっただけだが、混乱を招いている。」と述べている。
最近の世論調査によると、トルドー加首相の課題は、米国との年間貿易額約5000億ドルを維持しながらもトランプ米大統領の大部分の政策に反対するカナダ人の信頼を維持することである。米元カナダの駐米大使のポール・フレーザー氏は、「関係を損なわないというのは常識だ。」と述べている。
トルドー首相は、トランプ米大統領が集中して発動した、イスラム系7ヶ国の人々の米国への入国禁止を含む大統領令を発動したことを見た。現在、米国の裁判所で係争中の入国禁止に関する訴訟は、元ソマリア難民でもあるアハメッド ・フッセン加移民大臣が加米両国間の9000kmにわたる国境線を越えることができるかどうかについての疑問を投げかけた。
両国間の結びつきは以前よりもほころびていた。保守党のスティーブン・ハーパー前加首相とバラク・オバマ前米大統領との関係は冷え冷えとしたものだった。また在任期間が長かったトルドー加首相の父ピエール元加首相は、リチャード・ニクソン元米大統領と衝突した。
しかし、トルドー加首相が舵を取ったとき、カナダは新しい時代に入った。トルドー加首相とオバマ前米大統領はイデオロギー的に合っており、ホワイトハウスのインスタグラムアカウントを“true bromance”と命名するほど関係は深かった。トランプ米大統領が米国の舵取りをすることになり、両国の関係は新たな時代に入り、そしてはるかに激動する段階に入った。
トルドー加首相は、トランプ米大統領と会談する際、二国間関係の重要性を強調するだろう。それはホワイトハウスの報道官であるシーン・スパイサー氏は、「まもなく」起こる可能性が高いと述べている。トルドー加首相はすでに、自分のスタッフを米国に送り、トランプ米大統領の補佐であり義理の息子でもあるジェアード・クシュナー氏やスティーブ・バノン米大統領上級顧問)と協議するなど、魅力的な攻撃を開始している。
トランプ米大統領の貿易に関する攻撃の矛先はメキシコと中国に向かっており、もし米国が北米自由貿易協定を離れるなら、米国とカナダは1980年代のような独自の貿易協定を締結するだろう。ブリティッシュ・コロンビア大学のマックス・キャメロン教授は、「だからある意味、カナダは再交渉を良好な立場から行える。」と述べている。
トルドー加首相の挑戦は、パリ氏によると「トランプ米大統領との戦いをせずに」という原則を守ることだという。トランプ米大統領が米国への入国禁止を発表した後のトルドー加首相の政治的パフォーマンスを取り上げ、彼がいかにカナダ国民を満足させるか方法を知っているとパリ氏は述べている。トルドー加首相は入国禁止の米大統領例の後すぐにトロント国際空港に行き、若いシリア難民を歓迎している彼の写真をツイートし、世間の賞賛を得た。翌日、ケベックのモスクでの大量虐殺事件の後、トルドー加首相はこの行為を「イスラム教徒に対するテロ」と非難した。
しかし、トルドー加首相は左翼の新民主党の指導者のトム・マルケアーやトランプの不人気を利用しようとしている暫定的な保守党指導者のロナ・アンブローズを含むライバルからの圧力を受けている。
世論調査の支持率は若干落ちたが、トルドー加首相は歴史的に人気のある首相である。しかし、「支持率はこれまでのところのものである。」、「何か突然トランプ米大統領が始めれば、カナダ人はすぐにトルドー加首相を見て、何をやろうとしているのだろうかと言うだろう。またその日は間もなく来るだろう。」とフレーザー氏は警告している。
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