米薬局、防犯AI顔認識システムで誤認検出(2023/12/21)
米薬局チェーン、ライト・エイドが、顧客の同意なしに、万引きの可能性があるとみられる顧客の顔を認証するシステムを使用、その対象者は主に、女性、黒人、ラテン系、アジア系の人々だったという。米連邦取引委員会(FTC)は、消費者に損害を与えたとして5年間システムの使用を禁止している。
12月21日付
『Yahooニュース』(NBC):「ライトエイド、顔認証を客に万引き嫌疑をかけるため不正使用と米連邦取引委員会(FTC)」:
米連邦取引委員会(FTC)は20日、ライト・エイド社が10年に及ぶ期間、顧客に周知せずに顔認証を密かに使用し、万引きを誤って感知していたと発表。
当局によると、白人よりも、黒人やアジア系の顧客を、男性よりも女性が、万引き犯や万引きする可能性がより高い者として感知されていたという。...
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12月21日付
『Yahooニュース』(NBC):「ライトエイド、顔認証を客に万引き嫌疑をかけるため不正使用と米連邦取引委員会(FTC)」:
米連邦取引委員会(FTC)は20日、ライト・エイド社が10年に及ぶ期間、顧客に周知せずに顔認証を密かに使用し、万引きを誤って感知していたと発表。
当局によると、白人よりも、黒人やアジア系の顧客を、男性よりも女性が、万引き犯や万引きする可能性がより高い者として感知されていたという。
FTCの申立によると、同社は2社と契約し、過去万引き歴のある人や万引きで訴えられたことのある「該当者」の画像データベースを開発。データベースは、店の防犯カメラや、従業員の携帯電話、ニュース記事などから集められ、低画質のものも多いという。
2012年からAI顔認証の使用を開始し、一定の店舗で、犯罪歴や名前などの情報に基づき、犯罪に関与したり犯罪が起こりそうな人物を予測していた。このシステムは数店舗のみで使用され、2020年までには使用が中止されていたとしている。
システムは数千マイルも離れた他の店での万引き歴でも認識されることもあり、1人が全国の10店舗以上でマークされている場合もあった。黒人やアジア人の多い地域での店舗を中心に、誤検出が多かったという。また、認証システムを導入していることを顧客に周知することもなく、従業員はこれを口外しないよう指導されていたという。
当局は、同社が顔認証技術を店舗やオンラインで使用するのを5年間禁止。顔認証の使用が禁止された例は初となる。一方でライト・エイド社は10月に破産保護申請をしているため、破産裁判所がこの命令を認める必要がある。
同社は誤作動のリスクを低減する施策を採らず、システムの定期調整や試験も行われていなかったという。また、従業員に誤作動が発生する場合があることも周知されていなかったという。
同社への罰金はないが、認証技術の使用が広がる中、企業責任が問われる前例となった。FTCは5月、顔認証等の生体認証を利用する企業に対し、公正で害の及ばない範囲での使用徹底を指導していた。
12月20日付英『Guardian』:「ライトエイド:顔認証で黒人、ラテン系やアジア系を万引き”予備軍”として誤認識」
米連邦取引委員会(FTC)の最新調停によると、ライト・エイドが、顧客の同意なしに、誤認もあるとの通知もなく、事前に「万引きの可能性あり」とみられる顧客の顔を認証するシステムを使用していた。その対象者は主に、女性、黒人、ラテン系、アジア系の人々だったという。同社は5年間顔認証システムの使用を禁止される。
FTCは連邦裁判所の申立で、同社が2012年10月から2020年7月の間、数百店舗で、「万引きや犯罪行動をする可能性がみられた」客を感知するため、顔認証システムを使用していたとする。
警戒リスト上の人物が店に入るのを感知すると、従業員にメールや電話で知らせが入る仕組み。その後従業員は監視を強化し、購入を禁止したり、友人や家族の前で批判したりしていたという。
顔認証はニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、フィラデルフィア、バルティモア、デトロイト、更に西海岸の都市、シアトル、カリフォルニア等で主に使用されていた。政府当局は、同社が顧客への損害を未然に防ぐための「適切な手続き」を取らなかったとしている。
電子プライバシー情報センター(EPIC)は、顔認証が誤認することは如何なる場合でも十分想定されるが、同社は最も基本的な対策を採らなかったと批判。
複数の研究によると、顔認証システムは、高い頻度で黒人や褐色の人々を誤認識することが起きている。過去数年、米国では黒人が誤って逮捕される事件が6件発生しており、今回のケースは、プライバシーと市民権にとって大きな前進となる。
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豪州首相、7年振りに訪中(2)【欧米メディア】(2023/11/06)
10月23日付GLOBALi「
豪州首相、7年振りに訪中」で触れたとおり、9年振りに政権に返り咲いた豪州労働党の首相が、中豪間関係修復のために7年振りに中国詣でをすることになった。そこで、国際政治専門家らが、豪州及び中国首脳の各々の思惑について分析している。
11月3日付米
『CNNニュース』、11月4日付欧米
『ロイター通信』等は、豪州首相として7年振りにアンソニー・アルバニージー首相(60歳、2022年就任)が訪中しているが、中・豪首脳の各々の思惑に関する国際政治専門家の分析について詳報している。
豪州首相として7年振りに11月4~7日に訪中するアンソニー・アルバニージー氏は、その直前に記者団に対して、中豪間の関係改善に向けて“積極的に”対応していくと述べた。...
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11月3日付米
『CNNニュース』、11月4日付欧米
『ロイター通信』等は、豪州首相として7年振りにアンソニー・アルバニージー首相(60歳、2022年就任)が訪中しているが、中・豪首脳の各々の思惑に関する国際政治専門家の分析について詳報している。
豪州首相として7年振りに11月4~7日に訪中するアンソニー・アルバニージー氏は、その直前に記者団に対して、中豪間の関係改善に向けて“積極的に”対応していくと述べた。
すなわち、懸案となっていた中国による豪州ワインへの高額関税について、10月下旬に撤廃に向けた交渉についての合意がなされたばかりで、同首相としては、総額12億豪州ドル(7億7,360万ドル、約1,160億円)の再興が悲願となっているからである。
ただ、同首相は10月下旬(編注;10月23~26日)に訪米し、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)と会談したばかりである。
米豪首脳はその際、南シナ海における“中国の過度な海洋権益主張”について非常に懸念する旨同調している。
更に、両首脳は、AUKUS(2021年発足の豪州・米国・英国の軍事同盟)及びクワッド会議(注1後記)を通じての連携強化を確認している。
かかる背景の中、豪州首相の対中国交渉と中国側の思惑について、国際政治専門家が分析している。
● シドニー大学アジア太平洋地域安全保障問題専攻の元京東准教授(ユアン・チンドン)
・今回の訪問は象徴的なものであるが、しかし重要な意味を持つ。何故なら、昨年5月(保守党政権退陣時)まで中豪関係は非常にギクシャクしていたばかりであるから。
・そこでアルバニージー首相は、習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)他幹部と会談するに当たって、AUKUSやクワッド会議は安全保障関連での長い関係性を持つものだが、決して中国を標的としたものではないと強調しよう。
・更に、米国と密接な関係を持っていても、豪州が米中関係の間を取り持つ役割を果たすことができるということをアピールしたいとみられる。
・一方、習国家主席は11月中旬に米国・サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC、1989年設立の非公式協議体)に出席する予定であることから、その直前に豪州関係を改善しておくことが、APECに出席した際に中国の好印象を他国に与えることになると期待していると考えられる。
● シドニー工科大学傘下の中豪関係研究所のエレーナ・コリンソン主査
・中国としては、再生可能エネルギー政策強化のため、豪州の天然資源及び再生可能エネルギー産業へのアクセスが必須と考えており、今回の豪州首相の来訪は良い機会と捉えている。
・また、中国が希望している「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP、注2後記)への加盟について、豪州からの後押しを期待している。
・更に、米国との緊張が高まっている一方、中国国内経済に陰りが見える中、米国の同盟国であり、かつ天然資源が豊富な豪州との関係修復が必要と判断しているとみられる。
・一方、これまで貿易上の圧力で以て、米同盟国をして米国から離反させることを試みてきたが、反って豪州含めた多くの国の疑念や警戒心を高めるだけだったことを悟ったものと考えられる。
(注1)クワッド会議:日・米・豪・印4ヵ国でつくる連携や協力の枠組み。メンバー国は、民主主義等の価値観を共有していて、それぞれ連携を強めることで、インド太平洋地域で影響力を高める中国の行動を抑えたい狙いを持つ。特に米国は、中国に対抗する上で価値観を共有する同盟国や友好国との連携を重視していて、クワッド会議を首脳レベルに引き上げて、2021年3月にオンラインの首脳会議を主催。同年9月には対面での首脳会議を初めて開き、今後は毎年開催することで合意。2022年5月には日本が主催。
(注2)CPTPP(またはTPP11):2017年に米国がTPPを離脱した後に再開されたFTA(自由貿易協定)であり、世界のGDPの約14%を占める巨大自由経済圏。TPP11では関税撤廃が定められていることから、ヒトやモノの移動がより活発化することを期待。加盟国は、日・豪・NZ・加・チリ・メキシコ・ペルー・マレーシア・シンガポール・ブルネイ・ベトナム。
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