英国機密諜報部(MI5)から、前例のない警告が13日に国会議員と関係者に通達された。MI5は、中国人の弁護士クリスティン・リーが中国共産党のために英国国会議員に不適切な影響を与えようとしていると非難している。
カタールのメディア
『アルジャジーラ』によると、下院議長のリンゼイ・ホイルの事務所は13日、国会議員に配布した資料で、MI5がこの女性が「中国共産党のために政治干渉活動に従事している」ことを発見したと発表した。資料には、行方が分からなくなっている弁護士が、様々な議員と関わり、「香港や中国に拠点を置く外国人の代理として、現役の国会議員や国会議員志望者への金銭的な寄付を促進した」と記されている。MI5は、リー弁護士と接触する者は「中国共産党のアジェンダを推進する任務」を任されている「彼女の所属先を留意」するべきであると注意している。
与党保守党の元党首、イアン・ダンカン・スミス議員は2日、国会でこの件について「重大な懸念事項」であると述べた。この女性を強制送還するよう求め、ボリス・ジョンソン首相がこの件に関して下院で声明を出すよう要求した。ダンカン・スミス氏は、中国北西部の新疆ウイグル自治区での人権侵害の疑いを強調したことで、中国から制裁を受けたことがある。
同じ保守党の議員で元国防相のトビアス・エルウッド氏も、下院で政府の声明を出すよう要求した。「中国からのこのようなグレーゾーン的な干渉は、私たちが予期していることだ。しかし、この議会に対して起こったことに、政府は危機感を持たなければならない」と述べた。
英『ガーディアン』は、英国の情報機関はここ数年、中国のスパイ行為や影響を及ぼす活動の懸念について、徐々に警告を強めてきていたが、これまでは、英国での秘密工作についてあまり公に警告してこなかったと報じている。今回MI5が13日に発表した警告の方法は、2020年に3人のスパイが英国で活動していると結論付けたときの対応と対照的だという。当時MI5は、彼らがジャーナリストを装っていたとの結論に達し、ひっそりと追放し、そのニュースが流れたのは2021年2月のことだった。
昨年4月の警告でも、少なくとも1万人の英国人が偽のプロフィールを使い、LinkedInでオンライン採用担当者を装って情報を引き出そうとする人物に狙われていると警告したが、中国の名前は出されなかった。しかし、同庁の関係者は、この活動の背後には中国政府がいると考えられていることを内々に認めている。
『ガーディアン』は、両国政府の関係が悪化する中、英国情報機関が中国の活動に対する懸念を表明する意欲が高まっていることが、変化の一因だと分析している。
11月、対外情報機関MI6のリチャード・ムーア長官が、同機関で歴史上初めて中国を「唯一最大の優先事項」であると宣言すると、流れが一変したという。これまでの警告は、どこか机上の空論的な側面があったが、今回MI5は、リー弁護士に関する懸念を国会議員や関係者に警告するために、本人の情報と顔写真が掲載されたPDFで、左上にはMI5のロゴが表示された資料を配布した。
著名な弁護士であるリーは、長年にわたり政治家に積極的に働きかけ、2005年に労働党議員に初めて寄付を行い、ブレント・ノースの議員の事務所に58万4177.88ポンド(約9千万円)を寄付し、その多くは研究資金として現物給付していた。リーはまた、元首相のデービッド・キャメロンと元労働党首のジェレミー・コービンと一緒に写真を撮られており、テレサ・メイ前首相から表彰を受けたりしている。
中国の諜報活動は、習近平が命じた組織再編によって専門化し、グローバルな監視能力を身につけたとみられている。
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