イランでは18日、保守穏健派ロウハニ大統領の任期満了に伴う大統領選が行われる。しかし、中東第2位の経済大国は、権力層の腐敗、パンデミックそしてアメリカの制裁措置のために悲惨な状況にあり、希望を見いだせない国民の選挙への無関心が高まっている。
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『レゼコー』は、イランの国民は、貧困、失業、インフレと、壊滅的な経済状況の中で、大統領選挙の投票に呼ばれていると報じている。すべての経済指標が赤字で、世界銀行は過去12カ月のインフレ率を48%と推定しており、ここ数週間でパンの価格が驚くほど上昇しているという。
インフレに拍車をかけているのは、GDPの6%に相当する過去10年間で最も膨張した財政赤字と、通貨リアルの目まぐるしい下落による生活必需品の大半を占める輸入品のコスト上昇だという。...
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『レゼコー』は、イランの国民は、貧困、失業、インフレと、壊滅的な経済状況の中で、大統領選挙の投票に呼ばれていると報じている。すべての経済指標が赤字で、世界銀行は過去12カ月のインフレ率を48%と推定しており、ここ数週間でパンの価格が驚くほど上昇しているという。
インフレに拍車をかけているのは、GDPの6%に相当する過去10年間で最も膨張した財政赤字と、通貨リアルの目まぐるしい下落による生活必需品の大半を占める輸入品のコスト上昇だという。通貨は、2020年4月以降から半減、2018年に米国の制裁が復活してからは90%の価値を失っている。また、2015年に大国との間でイラン核合意が締結されたときには400万バレルだった石油輸出量が、制裁により日量100万バレルを大きく下回っている。さらには、パンデミックの影響で、昨年は世界的な石油需要の崩壊により原油価格が急落した。石油とガスは、イランの外貨獲得のほぼすべてと、政府の収入の大部分を占めているが、ガスは、昨年当初の予算法で想定されていた額の半分をわずかに超えた程度にとどまっている。
この経済的停滞の結果、イランの半数の世帯は、高額な社会的支援にもかかわらず、貧困ラインを下回るようになった。また、失業率、特に若年層の失業率は、労働人口の11%という公式の数字よりも高いと見なされている。将来を不安視したイランの富裕層は不動産に多額の投資を行い、一般家庭には手が届かなくなっている。
シンクタンク「チャタムハウス」のイラン専門家、サナム・ヴァキル氏は、イランはパンデミック、アメリカの制裁、原油価格の下落という「トリプルショック」に見舞われているだけでなく、平時であってもイラン経済がその資産を生かすことができないという構造的な問題があると指摘している。経済は、官僚主義と汚職に悩まされ、宗教的基盤に支配されている。
その結果、公共サービスやインフラが劣悪な状態に陥っている。このような状況は、毎晩のように繰り返される官公庁の建物への襲撃事件に見られるように、国民の不満を助長している。しかしイラン人は、2019年秋の抗議活動に対して、2000人の死者を出したと言われる弾圧が行われて以来、白昼堂々と抗議活動をする勇気がなくなった。
仏『RFI』は、非常に厳しい生活状況が続く中、政権に失望した国民の一部は、今回の選挙をボイコットする計画だと伝えている。特に、今回の選挙で8年ぶりに政権奪還を目指す保守強硬派のライシ司法府代表の勝利が予め決定されていると考えられており、予め結果が決まっている大統領選に対し国民の関心が低いという。そのため、今回の選挙は棄権率が特に高くなることが予想されている。
『AP通信』も、今回の大統領選は国民の無関心の中ですすめられていると報じている。首都テヘランは、投票日数日前であるにもかかわらず不気味なほど静かで、過去の選挙中の大規模な街頭集会も行われていない。しかし、選挙の結果にかかわらず、多くのイラン人は、制裁や戦争の恐怖、生活難から解放された「普通の国」になることを夢見ているという。また、このような厳しい経済状況を受けて、すでに何十万人もの人々が国を離れ、海外でチャンスをつかもうとしている。服飾デザイナーのナスリン・ハサニさんは、「手段のある人はイランを離れています。私の友人の多くもイランを離れていきました。私はただ、事態が改善し、人々がここに残りたいと思うようになることを願っています」と語っている。
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