中国は、少子高齢化が進む日本を急追している。そうした中、年金受給額も僅かのために働き続けなければならない60歳以上の高齢者の窮状について、欧米メディアが詳報している。
5月9日付
『ロイター通信』は、中国において急増する高齢者が働き続けなければならない窮状について詳報している。
経済協力開発機構(OECD、1961年設立)の2022年データによれば、主要国の総労働人口に占める60歳以上の比率は、日本・韓国が群を抜いていて、米・中国もそれに続き、いずれもOECD平均を上回っている。
●日本22%、韓国21%、米国14%、中国12.8%、OECD平均12.5%、イタリア9.5%
更に、国連世界人口予測(経済社会局人口部公表)の直近データによると、2024年から2034年にかけて、中国及び韓国における60歳以上の人口比率が飛躍的に伸びると予想されている。...
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5月9日付
『ロイター通信』は、中国において急増する高齢者が働き続けなければならない窮状について詳報している。
経済協力開発機構(OECD、1961年設立)の2022年データによれば、主要国の総労働人口に占める60歳以上の比率は、日本・韓国が群を抜いていて、米・中国もそれに続き、いずれもOECD平均を上回っている。
●日本22%、韓国21%、米国14%、中国12.8%、OECD平均12.5%、イタリア9.5%
更に、国連世界人口予測(経済社会局人口部公表)の直近データによると、2024年から2034年にかけて、中国及び韓国における60歳以上の人口比率が飛躍的に伸びると予想されている。
●日本37%→41%(+4%)、韓国27.5%→37%(+9.5%)、中国20.5%→30%(+9.5%)、イタリア32.5%→39%(+6.5%)、英国26%→29%(+3%)、米国24%→27%(+3%)、世界平均14%→18%(+4%)、インド11.5%→14%(+2.5%)
かかる背景もあって、中国における60歳以上の高齢労働者は以下のように窮状に喘いでいる。
・中国の2022年データによると、総労働人口7億3,400万人のうち、60歳以上の高齢者は9,400万人と12.8%を占め、2020年時の8.8%より増加。
・当該比率は、裕福とは言え同じく少子高齢化に喘ぐ日本、韓国よりまだ少ないが、今後10年で3億人まで急増する(そのうち約1億人が農村部からの出稼ぎ労働者)との予測。
・年金受給額は十分でなく、北京、上海のような大都市では月6千人民元(約12万9千円)だが、発展途上の小都市では3千人民元(約6万4,500円)。
・農村部では更に僅少で、今年3月に20人民元(約430円)引き上げられても、依然月123人民元(約2,650円)。
・これしか収入がない場合、世界銀行(1945年設立)の貧困基準である日3.65ドル(約570円)をも下回るが、従って、彼らの多くは都市部に出稼ぎに出るか、あるいは僅かな作物等を売って生活費の足しにせざるを得ない状況。
・農村部の年金受給者は約1億7千万人だが、上記上昇分は、18兆ドル(約2,804兆4千億円)に上る中国の国内総生産(GDP)の僅か0.001%。
・しかし、中国社会学院(CASS、1977年設立、哲学・社会科学研究の最高学術機構)によれば、中国年金基金は2035年には資金が枯渇すると予測。
・従って、都市部に出稼ぎ労働に出てきている多くの農村戸籍者(都市戸籍非保有者)は、60歳以上になっても都市部に残り、仕事を継続せざるを得ないが、現実問題は、例えば北京郊外在住の老夫婦は、13時間の清掃業務で月4千人民元(552ドル、約8万6千円)しか稼げない。
・また、別の老夫婦も段ボールやプラスチック類を集めてリサイクルステーションで金に換える仕事をしているが、せいぜい月4千人民元の収入しか得られない。
・従って、これらの高齢労働者は病気等になった場合の治療費を賄うことは不可能に近い。
・中国共産党機関紙『中国支部時報』10月号に掲載された、CASSエコノミストで元中国中央銀行顧問の蔡昉氏(ツァイ・ファン、67歳)の投稿によると、“農村部に暮らす60歳以上の高齢者の16%以上が「健康に問題あり」で、都市部の高齢者の場合の9.9%に比し1.6倍”。
・なお、今後10年で3億人にも上るとされる高齢労働者の多くは、「一人っ子政策(注後記)」の下で若年・壮年期を迎えていたために子供を一人しか持っていないこともあり、中国の古い伝統である“老いては子に養われる”風習に頼ることは難しく、生きるために仕事を継続せざるを得ない状況。
(注)一人っ子政策:1979~2014年に中国で実施された産児制限政策。人口爆発回避のために、原則一組の夫婦に子供は一人までと規制。
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5月6日付米
『CNN』:「中国、メーデーの観光客増加も財布のひもは固く」:
中国でレーバーデーを迎え観光客の増加が報告されているが、観光客の消費額は抑え気味で、世界第二の経済大国では経済不況が続く。
中国文化観光省によると、5日まで続いた5連休の間、中国国内の観光客は2億9500万人で、移動が制限されたコロナ禍以前となる2019年の同時期と比べ28%増となった。その一方、観光収益は1668億元(236億ドル)で、2019年比でわずか13.5%増となった。...
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5月6日付米
『CNN』:「中国、メーデーの観光客増加も財布のひもは固く」:
中国でレーバーデーを迎え観光客の増加が報告されているが、観光客の消費額は抑え気味で、世界第二の経済大国では経済不況が続く。
中国文化観光省によると、5日まで続いた5連休の間、中国国内の観光客は2億9500万人で、移動が制限されたコロナ禍以前となる2019年の同時期と比べ28%増となった。その一方、観光収益は1668億元(236億ドル)で、2019年比でわずか13.5%増となった。この結果から、観光客一人当たりの消費額が5年前と比べ6%減額しているといえる。
映画を例にとると、映画を見た人は3777万人で、2019年の3509万人を上回ったが、チケット売上高は2019年とほぼ同額だったという。
中国の消費者は、経済の低迷や雇用状況の悪化により消費を抑えてきた。世帯資産の7割を占める不動産の記録的な不況が消費者マインドに影響している。
6日発表の4月のCaixin/S&Pグローバルサービス指数(PMI)は、前月比52.7から52.5に下落。また、非製造業PMI(購買担当者景気指数)は、3月の52.4から50.3へと大きく下落した。3月の小売販売市場も2月の5.5%から3.1%に落ち込んだ。
同日付香港『SCMP』:「中国、観光業界全面的回復へ向けレーバーデーの観光急増」:
中国の観光業界がレーバーデーで活況を取り戻している。中国経済への弾みとなることが期待されているが、消費支出の伸びは同じようにはいかず、中間層の消費行動に変化がみられるという。
国内消費が低調な一方、旅行需要は高まっており、今年後半も、回復傾向が続くと予想されている。専門家は、コロナ禍で、外食、ライブイベント参加、旅行、贅沢品やハイテクグッズ等、世界的に消費者の支出優先順位に見直しがおきたと指摘する。不動産市場開発も見直され、将来的な不動産購入を控える動きが増した。
首都北京では、1696万人の海外からの観光客を迎え、観光収入は196億元に達した。一方、国民の収入は低水準のままで、コストを抑えるため近場への観光が中心となっている。観光産物による町おこしが盛んになる等、旅行はコロン禍を経た人々の癒やしとなっている。
国家移民局によると、過去5日間に中国を訪れた外国人観光客は前年同時期比98.7%増の77万9千人となった。中国のビザ免除制度、国際線増便、SNS上でのプロモーションが功を奏した。
アウトバウンドも好調で、旅行代理店によると、海外への渡航者は全旅行者の27%で、対前年比で190%の伸びとなり、渡航先で人気なのはマカオや香港に加え、日本、韓国、東南アジアとなっている。
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