景気が減速傾向にある中国だが、その市場規模は巨大で世界経済に及ぼす影響は大き
い。EU随一の経済大国であるドイツとも貿易摩擦問題を抱えている。そんな中、メル
ケル首相が中国を訪問し、首相や国家主席と会談を行っている。今後中国とドイツの
経済関係はどのように展開していくのか、各メディアは次のように報じている。
6月13日付
『人民日報』(中国)は「新華社通信」の記事を引用し、昨日中国の李克強首
相とドイツのメルケル首相が北京のホテルで会談を行ったことを報じている。記事に
よると両国は双方の利益と発展のために協力関係を強化すべきとの意見で一致したと
いう。
メルケル首相の訪中は今回で9回目であり、両者は4度目となる両政府間の会議の共同
議長を務める予定だという。会議の中で、中国は自国の産業発展計画である「メイド
インチャイナ2025」(今後10年で中国の製造強国化を図る計画)を、ドイツ側は「イ
ンダストリー4.0」(工業のデジタル化により製造コストを大幅に削減する計画)に
ついての意見を交換する。...
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6月13日付
『人民日報』(中国)は「新華社通信」の記事を引用し、昨日中国の李克強首
相とドイツのメルケル首相が北京のホテルで会談を行ったことを報じている。記事に
よると両国は双方の利益と発展のために協力関係を強化すべきとの意見で一致したと
いう。
メルケル首相の訪中は今回で9回目であり、両者は4度目となる両政府間の会議の共同
議長を務める予定だという。会議の中で、中国は自国の産業発展計画である「メイド
インチャイナ2025」(今後10年で中国の製造強国化を図る計画)を、ドイツ側は「イ
ンダストリー4.0」(工業のデジタル化により製造コストを大幅に削減する計画)に
ついての意見を交換する。また、両国は知的製造業や技術革新、起業についてなど、
様々な分野での意見交換を行う予定である。
同記事は2国間の関係が良好で、発展しつつある点を強調しているが、もちろん2国間
の経済関係は単純なものではない。
6月12日付
『DW.com』(ドイツ)はメルケル首相が李克強首相と会談を行う前日に中
国科学院でメルケル首相が行った演説にスポットを当てている。中国科学院とは、中
国が擁するハイテク総合研究と自然科学の最高研究機関のことである。そこでメルケ
ル首相は「貿易摩擦について話すのは気が引けるが」と前置きした上で、それでも2
国間の良好な経済関係の実現にむけて我々はオープンに話をすべきと演説している。
メルケル首相が示唆しているのは中国の鉄鋼の過剰生産のことであり、これが鉄鋼の
国際価格の下落を招いているのだという。中国は政府レベルでこの問題の対処を明言
しているものの、重工業の改革に踏み切れば大量の失業者が出ることが確実なため二
の足を踏んでいるとされる。他方、ドイツも中国側から経済市場の開放を求められて
いる。これは15年前に中国が世界貿易機関に加盟した際に決定していることであり、
今年末までに様々な分野での市場開放が行われる予定であるが、中国が様々な分野で
過剰生産を行っていることを理由にEU内から懸念の声が上がっている。
メルケル首相は中国に対し、経済大国としての責務を果たすことを求めており、中国
国内での人権尊重の徹底や、近隣諸国との南シナ海や東シナ海における領土問題での
平和的解決を求めていく方針であるという。
また、ドイツの企業が中国に進出するハードルを下げるための法整備や、IT分野にお
ける中国によるスパイ活動の取り締まり強化が、2国間の経済関係強化に不可欠であ
る点を強調する構えだという。
メルケル首相は李克強首相との会談後、習近平国家主席と会談する予定である。
6月13日付
『abcニュース』(米)では、中国とドイツの経済関係が微妙な関係である
最中にメルケル首相が中国を訪問し、ドイツの企業が中国へ進出する際の障害をなく
すべく努力していると報じる。
前述の通り、法整備やスパイ活動の取り締まりがドイツ企業から求められているが、
最近は中国企業によるドイツ企業の買収が勢いを増しおり、このことがドイツ国内で
問題視されているという。先月には中国の家電メーカーであるミデア社がドイツの産
業用ロボットメーカーであるクカ社を52億ドル(約5519億円)で買収する話が持ち上
がっており、メルケル首相はこの件についても懸念を表明するものと見られている。
ちなみに中国は昨年ドイツの4位の貿易相手国である。
ドイツとの関係を良好に保つことは、EUとの経済関係にも反映される。中国が今後ド
イツとどのような関係を築いていくのか注目される。
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