韓国大統領;レームダックとの陰口一掃のためバイデン大統領との直接会談の成果に期待【欧米・韓国メディア】(2021/05/21)
韓国の文在寅大統領(ムン・ジェイン、68歳)の支持率は、不動産問題等の失政で過去最低の30%台まで落ち込んでいる。任期1年を切った同大統領としても、来春の大統領選での与党・共に民主党候補の支持率向上に繋げるためにも、名誉挽回をかけてジョー・バイデン大統領(78歳)との直接会談に臨むことになる。
5月21日付
『ロイター通信』:「韓国の文大統領、世界で2番目の首脳としてバイデン大統領と直接会談」
韓国の文在寅大統領は5月21日、世界で2番目の首脳としてジョー・バイデン大統領との直接会談に臨む。
4月中旬の菅義偉首相(72歳)に続き、アジアから2人の首脳が続いて会談することから、バイデン政権が、対アジア政策、特に対中国及び対北朝鮮問題を重点方針としていることが窺える。
両首脳はこの他、マイクロチップなどの最先端技術産業、新型コロナウィルス(COVID-19)感染抑制、また、気候変動対策等での連携強化についても協議する。...
全部読む
5月21日付
『ロイター通信』:「韓国の文大統領、世界で2番目の首脳としてバイデン大統領と直接会談」
韓国の文在寅大統領は5月21日、世界で2番目の首脳としてジョー・バイデン大統領との直接会談に臨む。
4月中旬の菅義偉首相(72歳)に続き、アジアから2人の首脳が続いて会談することから、バイデン政権が、対アジア政策、特に対中国及び対北朝鮮問題を重点方針としていることが窺える。
両首脳はこの他、マイクロチップなどの最先端技術産業、新型コロナウィルス(COVID-19)感染抑制、また、気候変動対策等での連携強化についても協議する。
文大統領は、本国でCOVID-19用ワクチン確保に難儀していることから、米国からの追加供給の約束取り付けに注力し、一方バイデン大統領は、自身が復帰を決めたパリ協定(国連気候変動枠組み条約締約国による気候変動対策協定)に基づき、韓国側から積極的な気候変動対策が提案されることに期待している。
今回の訪米に当たって文大統領は、殊更中国を刺激しないように細心の注意を払うように努めていて、5月20日に先行して米議会のナンシー・ペロシ下院議長(81歳)と会談した際、米中関係が安定すること、及び朝鮮半島非核化に中国の存在が重要であると強調した。
しかし、バイデン大統領は、4月半ばに菅首相と会談した際に強調したように、中国に対抗するため共闘するよう強く求めるものと考えられる。
更に、北朝鮮問題に関しても、文大統領が北朝鮮との電撃的な平和協定構築を夢見ているのに対して、バイデン政権は、この問題を主要議題のひとつとするも、劇的な進捗をみせることはないと冷めた対応をしている。
一方、最先端技術分野の連携について、バイデン政権の高官は、中国との競争に打ち勝つため、今回文大統領に伴って訪米してきた大手企業トップらが、最先端技術用電池、半導体、第5世代移動通信システム、及び新世代ロジックチップ開発分野への投資を促進することに期待しているとコメントした。
なお、5月20日、フォードモーター(1903年設立)及び韓国電池メーカーSKイノベーション(1939年設立)が、米自動車メーカーの電気自動車用の車載電池を生産・販売するための合弁会社を設立することで合意したと発表している。
また、韓国メディアの5月17日付報道によれば、世界最大級の総合家電・電子部品・電子製品メーカーのサムスン電子(1969年設立)が、今年第3四半期に170億ドル(約1兆8,700億円)をかけたマイクロチップ生産工場建設に着手するという。
一方、同日付『KBSニュース』(1927年設立の韓国放送公社):「米韓共同声明に南北朝鮮板門店宣言の言及期待」
訪米中の文大統領に同行した大統領府高官が5月20日の記者会見で、翌日開催される米韓首脳会談後にリリースされる共同声明において、2018年に韓国・北朝鮮首脳会談後に発表された南北朝鮮板門店宣言(注後記)を尊重する旨言及されることが期待されると述べた。
外交問題専門家は、もしかかる表現が共同声明に織り込まれれば、韓国にとっては膠着した対北朝鮮関係改善の足掛かりとなり、朝鮮半島非核化に向けて現実的な交渉に取り掛かれるとコメントしている。
(注)板門店宣言:2018年南北首脳会談に臨んだ韓国・北朝鮮両首脳により4月27日に発表された共同宣言。主な内容としては、朝鮮半島の完全な非核化を南北の共同目標とすること、休戦状態の朝鮮戦争の終戦を2018年内に目指して停戦協定を平和協定に転換すること、南北共同連絡事務所を北朝鮮の開城に設置すること、軍事的緊張を解消し、軍事的信頼を構築し段階的軍縮を行うこと等。
閉じる
韓国の仁川広域市、北朝鮮での空港開発計画で物議を醸す(2021/05/12)
仁川広域市は10日、仁川国際空港を拡張し、朝鮮半島の玄関口にする計画を明らかにした。しかし、同市が仁川国際空港を南北交流の拠点として強化するための調査を行ったことが、韓国国内で政治的論争に発展しつつある。
『韓国放送公社』によると、調査は、欧米と北朝鮮の交流拠点としての役割を果たすために、中長期的に仁川国際空港の必要なインフラを整備することに焦点を当てている。仁川市は、北朝鮮が改革を行い、世界に門戸を開き、国際協力が可能になったときに、欧米と北朝鮮の交流拠点としての役割を果たすことを目指している。
調査は、仁川空港と、滑走路が2,000メートル以上ある北朝鮮の3つの空港を結ぶことを提案。...
全部読む
『韓国放送公社』によると、調査は、欧米と北朝鮮の交流拠点としての役割を果たすために、中長期的に仁川国際空港の必要なインフラを整備することに焦点を当てている。仁川市は、北朝鮮が改革を行い、世界に門戸を開き、国際協力が可能になったときに、欧米と北朝鮮の交流拠点としての役割を果たすことを目指している。
調査は、仁川空港と、滑走路が2,000メートル以上ある北朝鮮の3つの空港を結ぶことを提案。また、海州経済特区と開城工業団地を結ぶ道路の建設も提案している。この計画を実現するためには、6兆3千億ウォン(約6100億円)の予算が必要だという。
『コリアタイムズ』は、この調査は保守派の議員から計画の実現性や政治的動機について批判を受けていると報じている。
野党「国民の力(PPP)」党の韓基鎬(ハン・ギホ)議員に提出された仁川広域市の資料によると、仁川広域市は昨年5月、韓国交通大学を中心とするコンソーシアムに1億3500万ウォン(約1300万円)で調査を委託した。調査は、仁川国際空港を北朝鮮との中継基地として育てるための方法として、北朝鮮の既存の8つの空港を改良し、新たな空港を建設することが提案された。さらに、平壌国際空港、元山カルマ空港、白頭山近くの三池淵空港の3つの空港は、観光地の近くにあるため、ハブ空港として整備する必要があるとも主張している。また、北朝鮮とロシアの国境に近い港湾都市である羅先(ラソン)にも新たな空港を建設する必要があるとしている。
この計画の実行には、約4兆4千億ウォン(約4300億円)の費用を見込んでおり、韓国と仁川の地方自治体が国家予算または官民連携で資金を調達するとしている。空港計画のほかにも、西海岸に沿って南北を結ぶ1.8兆ウォン(約1745億円)の道路計画、780億ウォン(約76億円)の物流ターミナルなど、さまざまなプロジェクトが提案されており、総支出額は6兆3200億ウォン(約6100億円)に達する。
仁川市の朴南春(パク・ナムチュン)市長はフェイスブックに、この調査は「南北関係が大きく改善した場合に、国内最大の空港を持つ仁川の役割を探る」ことを目的としていると投稿した。与党「民主党」の元議員でもある朴市長は、「南北関係の展開によっては、北の航空インフラを整備する必要性が出てくるかもしれない。今回の研究は行政のノウハウを構築し、仁川の潜在的な役割を事前に模索するものだ」と述べている。また、市政府も同様のプレスリリースを発表した。
保守派の「国民の力(PPP)」党の議員たちはこの研究を非難している。PPPの仁川支部は声明で、「北朝鮮が戦争のような挑発行為を繰り返す中、市政府は、北朝鮮の過去の挑発行為で最大の被害者であるにもかかわらず、戦時に重要な戦略的役割を果たす空港を建設、開発しようとしている」と糾弾した。仁川広域市に属する延坪島は、2010年11月23日に北朝鮮による致命的な攻撃を受け、民間人2人と海兵隊員2人が死亡した。
また、PPPの申源シク(シン・ウォンシク)議員は「南北間のすべての共同経済プロジェクトは、北が非核化の状態に達し、制裁が解除されない限り、国連の制裁に違反する」と述べた。「与党は、韓国の経済と国民の生活には目をつぶって、北朝鮮政権が直面している課題と安全に対処することに執着しているように見える」と述べている。
この論争が政治的な争いに発展する兆しを見せている中、国家行政機関である「統一部」は、仁川市政府の調査から距離を置こうとしている。統一部の李種珠(イ・ジョンジュ)報道官は10日、「仁川市は独自に調査を行い、その目的と関連するプロセスを説明するだろう」と述べた。
閉じる
その他の最新記事