日銀はインフレ回復と円高回避のために、マイナス金利に踏み切った。現時点では、金融機関が日銀に預ける当座預金の内の超過準備の上乗せ分のみが対象で、一般預金には影響がない。仏メディアは日銀史上初のマイナス金利を次の通り報じる。
「レゼコー紙」「トリビューン紙」「ルモンド紙」などの仏メディアのマイナス金利に対する評価はほぼ一致する。「即時的効果」、「原油価格下落と中国経済の先行き不透明感が企業の景況感に与える影響力」など、マイナス金利に踏み切った状況や一定の効果を認識しつつも、「実体経済への効果」は不明である。「アベノミクスは金融緩和に依存しすぎ」で「構造改革の欠如」により「第三の矢は最終的にコスト削減によって利益を追求することになる」(「ルモンド紙」)との見解が象徴する。
最も否定的な見方を示すのは仏最大経済紙の
『レゼコー紙』である。「日銀は全ての犠牲を払って、日本のデフレ脱却を頓挫させ得る円高と抗戦する意志を見せたかった」と報じ、「円の安定化の見通しが日経平均の上昇を後押しできる」と評するも、効果はあくまで「瞬間的な株価急騰や円安」と指摘するBNPパリバ東京の河野氏の見解に同意する。「日本国債の利回り低下で、株式市場で新たな投資先へと資金移動が起こる」。しかし「金融政策が金融資産に及ぼす影響と実体経済に及ぼす影響を区別する事が重要」とドイツ銀行のサラヴェロス氏が顧客に注意を促した事に触れて、「ドイツ銀行はディーリングルームの外の激変を疑問視しているようだ」と評する。「レゼコー紙」の記事の中で激しく批判したのは
『東洋経済』の英文誌
『オリエンタル・エコノミスト』のアナリストのリチャード・カッツ氏で、日銀の決定を「全く不要で象徴的にすぎない」行為で「機能しない」と強調する。「国際情勢を懸念する企業から融資の求めがなければ、銀行がこれ以上国内で現金を注入する事はなく」、「マイナス金利により将来の銀行の超過準備が少なくなる」からである。カッツ氏によると「250兆円の総準備金の内10兆から30兆が該当する」。また「レゼコー紙」は「日銀の今回の決定は、大規模な量的緩和政策を実施したにも関わらず、就任時の公約の2%のインフレ目標を達成できなかった総裁の動揺を証明する事になる」と報じる。
この点は
『ルモンド紙』も指摘する。日銀の決定は賛成5反対4の僅差で採択され、日銀内でも揉めた事が伺われるが、「ルモンド紙」は反対票を投じた金融政策委員会の一人、白井小百合氏が「マイナス金利の措置は、今まで試みた他の措置が失敗だったと白状したと解釈される」と懸念すると伝え、「米国の連邦準備制度理事会(FRB)が金融市場の副作用を考慮してマイナス金利に頼る事を敬遠した」事と比較する。
また
『トリビューン紙』は「驚くべき」と「世界第三位の経済大国で世界第二の中央銀行がうってでたマイナス金利」を受け止め、インフレ回復だけでなく、「貸付金にではなく、日銀の準備金に現金を注ぎ込む銀行を実質的に罰する意味合いがある」と分析する。
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