タックスヘイブンを巡る「パナマ文書」の衝撃(2016/04/05)
パナマの法律事務所から流出した大量の内部文書により、オフショアのペーパーカンパニーを利用した租税回避に世界の政治家や著名人多数が関与している事実が明らかになってきた。流出した大量の文書は、南ドイツ新聞社(Sueddeutsche Zeitung)が匿名の提供者から入手し、報道調査国際連合(ICIJ)と連携して調査を行ってきたものであり、今回その一部が公開された。調査が進むに従い、今後さらに大きな脱税スキャンダルが明るみに出てくる可能性があり、世界中に衝撃が広がっている。
4月5日付の米ソーシャルメディア
『フュージョン』は、米メディアとしてパナマ文書の調査プロジェクトに参加し、プロジェクトがどのようにして大量の文書の解明を行ったかを報じている。
パナマのモッサック・フォンセカ法律事務所から流失した2.6テラバイトの「パナマ文書」と呼ばれるデータには、世界中の政治家、著名人、資産家が秘密のオフショア口座で租税回避をしていることを示す膨大な情報が収められていた。...
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4月5日付の米ソーシャルメディア
『フュージョン』は、米メディアとしてパナマ文書の調査プロジェクトに参加し、プロジェクトがどのようにして大量の文書の解明を行ったかを報じている。
パナマのモッサック・フォンセカ法律事務所から流失した2.6テラバイトの「パナマ文書」と呼ばれるデータには、世界中の政治家、著名人、資産家が秘密のオフショア口座で租税回避をしていることを示す膨大な情報が収められていた。
今月4日、世界中の報道機関が連携した報道調査国際連合(ICIJ)によって、驚くべき流出情報の第一弾が公表された。米国報道機関としては、フュージョン社とマックラチー新聞社の2社だけがこのプロジェクトに参加した。
そもそもの発端は、昨年初め内部告発により大量の資料が南ドイツ新聞社に流出し、その内容を見た編集者らがICIJに協力を求め、流出データを共有することになったものである。この調査は「プロメテウス・プロジェクト」と命名され、世界250の報道メディアが参加した。
最初の課題は、タイムゾーン毎に報道機関が発見した内容を共有し、透明性が高く協力し易い報道のプロセスを構築することであった。最初は、ミュンヘンやワシントンンなどの都市で大会合を開いて協議したが、実際の調査・連携はICIJのデータベースをイントラネットで共有し、プロジェクト参加者はフェースブックを通じて情報交換した。参加者はそれぞれの調査内容を相互に交換し、テーマごとのグループを作り真相解明に向けて協力した。
ペーパーカンパニーは更にいくつものペーパーカンパニーに保有されるなど何重にも複雑に隠されているため、それを所有する人物を特定することは簡単なことではない。ある記者が面白そうな手掛かりを見つけた場合、イントラネットに投稿し、本来は特ダネ競争をする記者らがコメントや自分の情報を提供して協力した。
第一弾の発表後も、調査活動は続いており、今後数カ月で更に多くの新たな事実が明るみに出てくるはずである。フュージョン社は4月17日にこれに関するドキュメンタリー番組を公開する。パナマ文書の与えるインパクトは、単独の記者や新聞社・テレビ局では絶対にできないほど凄いものである。
4日付
『フォーチュン』誌は、「パナマ文書」のニュースが世界に衝撃を与えていると報じた。
昨年初め、過去40年分に亘る著名な政治家などに関係する持株会社や口座の詳細なデータが、南ドイツ新聞社に流出した。同新聞社はICIJと連携し調査に乗り出した。
75ヵ国から約400人のジャーナリストが参加した大掛かりな国際調査プロジェクトが、オフショア持株会社の設立を専門とするパナマの法律事務所から流出した約1150万件の文書を調査した。
パナマ文書の一部が公表され、アイスランド首相がオフショア・ペーパーカンパニーを所有していることが明るみに出て強い非難を浴びるなど、数ヵ国で重大ニュースとなっている。また、合計20億ドルの資産を持つ複数の持株会社がロシアのプーチン大統領と関係があるとしている。
さらに、中国の習近平国家主席やキャメロン英首相の父親が租税回避目的で持株会社を所有している疑惑が持ち上がっているほか、ウクライナやパキスタンの指導者についても調査が進んでいる模様である。
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フォルクスワーゲン社のスキャンダルが投げかけた問題(2015/09/24)
アメリカでフォルクスワーゲン社が排気ガスを不正に操作する違法なソフトウェアを
搭載した車を販売していたことで、リコールや制裁金など様々な問題が起こりつつあ
る。各メディアはこのスキャンダルが、経済的な影響にとどまらない問題を包含して
いるとする。
まず、スキャンダル自体の及ぼす直接的な影響について
9月24日付
『ラピッド・ニュース』はフォルクスワーゲン社のスキャンダルはアメリ
カのみならず、世界に広がりつつあるとする。韓国は同社の代表者を呼んでスキャン
ダルについての尋問を行うとしている。また、イギリスやフランスも調査に乗り出す
意向だという。
9月24日付
『PRニュースワイヤー』によると、9月21日の時点で同社の株価は20%以上
下落し、23日には最高経営責任者であるマルチン・ヴィンターコルン氏が引責辞任し
たことを伝え、2009年から2015年製造の同社の該当自動車の所有者は集団訴訟を弁護
士に相談するよう呼びかけている。...
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まず、スキャンダル自体の及ぼす直接的な影響について
9月24日付
『ラピッド・ニュース』はフォルクスワーゲン社のスキャンダルはアメリ
カのみならず、世界に広がりつつあるとする。韓国は同社の代表者を呼んでスキャン
ダルについての尋問を行うとしている。また、イギリスやフランスも調査に乗り出す
意向だという。
9月24日付
『PRニュースワイヤー』によると、9月21日の時点で同社の株価は20%以上
下落し、23日には最高経営責任者であるマルチン・ヴィンターコルン氏が引責辞任し
たことを伝え、2009年から2015年製造の同社の該当自動車の所有者は集団訴訟を弁護
士に相談するよう呼びかけている。
次にスキャンダルが及ぼす2次的な影響について
9月24日付
『ロイター通信』によると、ドイツ政府は同社のスキャンダルがダイム
ラーやBMWといった、他のメーカーにも悪影響を及ぼすことを懸念しているとい
う。ドイツは22日に「スキャンダルがあってもなお自動車産業は自国の経済を支える
要であり、革新的で利益をもたらす産業でもある」と発表している。ただ、専門家に
よれば、中国経済の減退などに加えて今回のスキャンダルがドイツの今年度の経済成
長率予測1.8%に影を落とすだろうと予測している。2014年時点で、実に77万5000人
がドイツ国内の自動車産業に従事していおり、これは国内の全労働力の2%近くだと
いう。また、ドイツの自動車関連の売上げは2014年に対国外で2000億ユーロ(27兆
円)であり、ドイツの輸出額の約5分の1を占める。
もっとも、
『ロイター通信』はこのスキャンダルにより、ドイツの自動車産業が途端
にダメになるとみるべきではないとする意見にも言及している。コメルツ銀行のチー
フエコノミスト、イエルク・クレイマー氏はロイター通信のインタビューに対し「一
会社のせいで景気が後退するとは考えにくい」と述べたという。
最後にこのスキャンダルが暗示する問題点について
9月24日付
『フュージョン』はまず、今回のスキャンダルはたまたまフォルクスワー
ゲン社が挙げられただけで、他の会社が製品に同様のプログラムを組み込むことも十
分にあり得ると指摘する。
『フュージョン』はその例として1998年のフォード社のス
キャンダルに言及している。これはフォード社が車の燃費をよくするため、高速道路
で有害な排気ガスを大量に放出する違法な「電子制御装置」を自社製品に組み込み、
政府から課金されたという事件である。これらの問題は結局のところ法と利潤追求の
とのせめぎ合いに行きつくとする。
さらに
『フュージョン』は車のみならず、テレビ、スマートフォン、タブレット、ロ
ボット、さらにはおもちゃまで、人工知能が発達したおかげで様々な商品による悪事
が発見されにくくなり、デジタル犯罪
の時代が幕開けを迎えつつあるとしている。例えば人工知能を搭載した車が人間を目
的地まで時間内に運ぶために巡回中のパトカーがいないことを認識したうえでスピー
ドオーバーし、その記録をアップデートのために消去してしまう場合や、工場で、ロ
ボットが動きをチェックされていない時を検知して作業の能率を落とすなどとという
ようなことが考えられるという。これらは監督されていれば最大限努力し、そうでな
ければ手を抜くという人間特有と思われている傾向と全く同じである。
このデジタル犯罪では二つの点が問題になるという。まず、違法性の発見である。こ
の点についてはロボットを取り締るロボットが出現する可能性がある。そして次に違
法行為を行うロボットを開発者が故意に開発したのか否かという点の立証であるとい
う。今回は政府の執拗な追及にフォルクスワーゲン社が過失を認めたことにより発覚
したが、フォルクスワーゲン社が認めなければ2009年から2010年のトヨタの事件のよ
うに、立証により長い歳月が費やされることになったであろうとする。
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