気候変動がもたらす危機が叫ばれる中、国連はオーストラリア、米国、英国、その他のOECD諸国に2030年までに石炭の使用を停止するよう求める新しい気候対策計画を発表した。一方、世界最大の温室効果ガス排出国である中国は2030年の期限の対象外としており、オーストラリアが反発の声を上げている。
『エポックタイムズ』によると、国連の新しい気候対策計画は、国連の潘基文前事務総長をはじめとする国連関係者が、世界の国々に対してネット・ゼロ達成の具体的な期限を設けるよう求めていたことを受けて作成されたものだという。しかし、中国は世界最大の温室効果ガス生産国であるにもかかわらず、国連が設定した2030年という期限には含まれなかった。
国民党のマット・カナバン上院議員は、国連が世界最大の排出国に対して不平等な扱いをしているのは偽善的だとし、国際機関がオーストラリアの経済を破壊しようとしていると非難している。拒否権を持つ常任理事国である中国は、国連最大の財政支援者であり、最新の2021年予算では3億5千万米ドル(約386億円)を計上していることから、国連に対するその影響力が懸念されている。
労働党のジョエル・フィッツギボン議員は、スカイニュース・オーストラリアに対し、国連のあと10年という期限は「オーストラリアとその経済と市場に対する理解が不十分」であることを示すものだと述べている。石炭産業は主要な雇用提供者であり、炭鉱と石炭発電所で働くオーストラリア人は合わせて5万人近くに上る。さらに、過去5年間でオーストラリアは約2100億米ドル(約23億円)分の石炭を輸出しており、これはオーストラリアの総輸出額の約16%を占めている。フィッツギボン議員は、オーストラリアでは再生可能エネルギーへの移行が加速していることを指摘し、エネルギーの安定的な供給を確保するためには石炭発電の支援が必要だと主張している。
フィッツギボン議員はまた、「オーストラリアの石炭の80%は、インドや中国などの発展途上国を含むアジアのパートナーに輸出されている」と指摘し、「石炭の輸出をやめることはできない。輸出をやめるべきではない。」と述べた。
モリソン首相も以前、中国がOECD諸国の合計よりも多くの排出量を出していると訴えていた。世界最大の二酸化炭素排出国である中国は、16日間でオーストラリアの1年間の排出量を上回る二酸化炭素の量を排出している。
「グローバル・エネルギー・モニター」の報告書によると、2020年に中国は週に平均1基の大型石炭火力発電所を建設しており、世界の他の国々と比べて合計で3倍以上の石炭火力発電所を建設しているという。また、同報告書によると、2月時点で中国が開発中の石炭発電所は247ギガワットで、これはオーストラリアの総発電容量の約5倍にあたる。
カナダのニュースサイト『デジタル・ジャーナル』によると、国連の気候変動特別顧問であるセルウィン・ハート氏は5日、キャンベラで行われた講演で、オーストラリア政府は石炭の廃止に向けた取り組みを強化すべきであり、さもなければ気候変動が同国の経済に劇的なダメージを与えると批判した。ハート氏は、オーストラリア政府は「時機を捉えて」自然エネルギーに切り替えるべきだと述べ、「もし世界が急速に石炭を廃止しなければ、気候変動は農業から観光、そしてサービス業に至るまで、オーストラリア経済全体に大打撃を与えるだろう」と語った。
オーストラリアのキース・ピット資源大臣は、6日に声明を発表し、最新の輸出額を見れば、「石炭の死期が迫っている」という報道は大幅に誇張されており、2030年以降もその将来性は保証されていると述べ、強い反発を示した。「この重要な産業の将来は、オーストラリア政府が決定するものであり、何千人もの雇用と何十億ドルもの輸出を犠牲にして石炭を閉鎖しようとする外国の機関が決定するのではない」と反論した。
さらに、「国際エネルギー機関(IEA)は、中国、インド、韓国などのエネルギー需要を満たすために、アジア全体の石炭消費量が今後10年間で増加すると予測している。オーストラリアは、その需要を満たすために重要な役割を担っている。石炭は今後も数十億ドルのロイヤルティと税金を州政府と連邦政府にもたらし、5万人以上のオーストラリア人を直接雇用することになる」。」と主張した。
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2月11日付
『レイク・カウィチャン・ガゼット(ブリティッシュコロンビア州バンクーバー島内地方紙)』紙(
『カナダ・プレス通信』配信):「検疫中のクルーズ船乗客のブリティッシュコロンビア州の夫婦が支援強化を要請」
目下、横浜港に停泊し、検疫検査が進められているクルーズ船“ダイアモンド・プリンセス号”には、カナダ人乗客も乗船している。
そのうち、ホワイトロック市(バンクーバー南西部の小都市)在住のナイゲル&パトリック・フィンチ⁻コウル夫妻(編注;同性カップル)による、フェイスブック投稿メッセージがこの程公開された。
同夫妻は、他の4人のカナダ人家族とクルーズ船ツアーに参加していた。
そのメッセージによると、本船は2月4日以来横浜港に留め置かれて、連日、厚生労働省の検疫官による検査が実施されているという。
ただ、“2月4日の検査結果が翌日まで知らされず、ただ船室に待機して待つだけ”の状態だと述べている。
更に、“4日連続で船室待機させられたことによる苦痛、新型コロナウィルス感染患者が毎日搬送されることの恐怖、また、短時間だけプロムナード・デック散歩が許された際も他乗客と2メートル離れているよう強要されたことの不満”等を挙げている。
そして、英国生まれの同夫妻は、2月7日付投稿で、“カナダ政府及び英国政府に対して、カナダもしくは英国での検疫を行う等の支援を求める”とし、また、“友人にカナダ首相事務所にも直接はたらきかけるよう頼んだ”とも書いている。
同クルーズ船には、乗客2,666人、乗員1,045人、計3,711人が乗船しているが、2月10日現在、感染者は66人となっていて、そのうち8人のカナダ人も含まれている。
なお、同夫妻は最後に、“できれば、ティムズ・コーヒーを差し入れて欲しい”とユーモアたっぷりに書いている。
2月12日付『デジタル・ジャーナル』オンラインニュース:「日本に停泊中のクルーズ船の新型コロナウィルス感染患者が174人に」
日本の厚生労働省の2月12日発表によると、“ダイアモンド・プリンセス号”における新型コロナウィルス感染患者が39人増えて、174人に上ったという。
そして、同船の検疫に当たった検疫官1人も感染したとする。
菅義偉官房長官によると、現在の検疫体制から1日300人の検疫が最大で、隔離猶予期間の2月18日までにあと1,000人分の検疫ができるかどうか、だという。
ブリティッシュコロンビア州のサリー・アベルさんは、“休暇には程遠いけれど、リラックスに努めている”とフェイスブックに投稿している。
一方、ヤードリィ・ウォンさんは、“次は自分か、あるいは家族が感染するのか、不安が募るばかり”と投稿している。
ただ、ある乗客は、“船内がパニックにならないのは、ひとえに船長の冷静沈着、かつ、双方向の情報のやり取りに苦心する対応のお陰”だとした上で、“自分の国にはこのようなリーダーが必要だ”とツイートしている。
(注)ティムズ・コーヒー:カナダ最大のファーストフード・チェーン店“ティム・ホートンズ”が提供するコーヒー。創業は1964年で、元アイスホッケー選手のティム・ホートン氏がパートナーとハミルトン(オンタリオ州)で開業。主としてコーヒー・ドーナッツを提供。現在、日本を含む14ヵ国に4,846店舗を展開。
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