米メディア;謹厳実直なドイツ自動車メーカーが不正大スキャンダル!(4)(2015/09/29)
既報どおり、フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れの不正操作問題に関し、VW監査役会は、前最高経営責任者(CEO)の辞任を受けて、直ぐさま後任人事を決定し、経営体制の立て直しを図ろうとしている。しかし、スキャンダルの根本原因の調査や責任追及、また、顧客、株主等数多の関係者の訴訟等、VWは今後長い間針のむしろに座らされることになると米メディアが伝えている。
9月28日付
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「VWに訴訟の嵐」との見出しで、「米環境保護局(EPA)が9月18日にVWの不正問題を発表して以来、これまでに二十数件の損害賠償請求訴訟が提起されている。特に顧客からの訴訟は、VW所有車のリセール・バリュー激減や、クリーン・ディーゼルとして払った一台当たり6,000ドル(約72万円)の補償等が要求されることになるので、その数は今後も増えて数百件以上となり、総額で数十億ドル(数千億円)に上る可能性がある。...
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9月28日付
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「VWに訴訟の嵐」との見出しで、「米環境保護局(EPA)が9月18日にVWの不正問題を発表して以来、これまでに二十数件の損害賠償請求訴訟が提起されている。特に顧客からの訴訟は、VW所有車のリセール・バリュー激減や、クリーン・ディーゼルとして払った一台当たり6,000ドル(約72万円)の補償等が要求されることになるので、その数は今後も増えて数百件以上となり、総額で数十億ドル(数千億円)に上る可能性がある。」と報じた。
同日付
『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「VW、米企業よりも厳しい罰金に直面」との見出しで、「バージニア法科大学の調査によると、2001~2012年の間、米国内における不法行為等に関わる罰金額が、外国企業の場合は米企業の7倍にもなるという。米企業は訴追前や司法取引などで早めの決着が図られるが、外国企業の約80%が、訴追されて有罪が確定してからの罰金賦課となっている。最大の罰金額は、昨年に米国が制裁対象としたスーダン、シリア、イランと金融取引を行った、フランスのBNPパリバ銀行が支払ったもので、89億ドル(約1兆700億円)であった。しかし、今回のVWの不正行為は、米国の大気浄化法に照らし、最大で180億ドル(約2兆1,600億円、48万台x 3万7,500ドル)にも上るおそれがある。」と伝えた。
一方、9月29日付
『ディスパッチ・タイムズ』オンラインニュースは、「ドイツ検察、ウィンターコルン前CEOを捜査対象に」との見出しで、「ドイツの検察当局は9月28日、ウィンターコルン前CEOについて、詐欺容疑で捜査を開始したと発表した。排ガスの検査値を不正に捜査する装置を付けた車を販売することで、顧客に対する詐欺を行った疑いがあるというもので、同検察には、複数の市民に加えて、VWからも刑事告発がなされたという。なお、ドイツ地元紙によると、VW社内技術者から2011年に、当該ソフトウェアが法律違反となるおそれがあるとの指摘がなされていたという。」と報じた。
また、別のドイツ地元紙報道では、問題のソフトウェアを開発した自動車部品メーカーのボッシュが、VWグループに対して2007年、同ソフトウェアはあくまで試験用であり、道路上での使用は違法となると警告していたという。しかし、これらの警告も、また、VW技術者の問題指摘も、VW担当幹部は無視する決定をした模様で、現在のところ、VW技術開発責任者のハッケンベルク氏、ノイサー取締役、子会社ポルシェのハッツ取締役の3名が出勤停止処分を受けており、また、同3名はドイツ検察の捜査対象にもなっている。
本邦で直近に発覚した、東芝の不適切経理問題では、歴代のトップの命令に誰も異論を唱えられなかったことが原因のひとつとされているが、VWにおいても同様の事態が起こっていたものと想像される。ただ、日本では歴代トップが引責辞任しただけで(辞任後も暫らくの間、専用役員室やハイヤー使用が許されていたという恥の上乗り事態があったが)、かつてのカネボウや今回のVWのように、刑事訴追されることはないとみられ、残念なことに、日本のうやむや幕引きがまたしても露呈している。
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米メディア;過激派組織イスラミックステートの脅威(2015/08/10)
今年6月に何度か報じたとおり、過激派組織イスラミックステート(IS)は、最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者の後継者と目されていたアブアラー・アフリ容疑者、及びIS金融担当幹部を相次いで失い、ISの勢力は縮小するとみられていた。しかし、近況報告では、ISによるイラク、シリア両国の支配地域は依然変わらず、中東や北アフリカでは、ISの影響下にある組織によるテロが続発している。そうした中、ISによる残虐な行為が依然繰り返されていると米メディアが伝えた。
8月8日付
『ラピッド・ニュース・ネットワーク』は、「IS戦闘員、シリアのキリスト教信者らを拉致」との見出しで、「シリア人権監視団体が8月7日に明らかにしたところによると、シリア中央部のアル・カリアテイン村の住民300人近くが、IS戦闘員によって拉致されたという。約170人がスンニ派のイスラム教徒で、60人程がキリスト教徒とみられる。同地域では、イスラム教徒とキリスト教徒が平穏に暮らしていたが、近郊の古都パルミラが今年5月にISによって占領されて以降、2千人余りいたキリスト教徒の多くは逃げ出し、僅か300人程度しか残っていなかったという。...
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8月8日付
『ラピッド・ニュース・ネットワーク』は、「IS戦闘員、シリアのキリスト教信者らを拉致」との見出しで、「シリア人権監視団体が8月7日に明らかにしたところによると、シリア中央部のアル・カリアテイン村の住民300人近くが、IS戦闘員によって拉致されたという。約170人がスンニ派のイスラム教徒で、60人程がキリスト教徒とみられる。同地域では、イスラム教徒とキリスト教徒が平穏に暮らしていたが、近郊の古都パルミラが今年5月にISによって占領されて以降、2千人余りいたキリスト教徒の多くは逃げ出し、僅か300人程度しか残っていなかったという。」とし、「ISはシリアにおいて、これまで継続的にアサド政権の政府関係者、軍隊、政府協力者を殺害してきており、一般市民を含めると、7万1,781人(うち子供が1万1,964人)が犠牲になっている。」と報じた。
8月9日付
『Foxニュース』は、「IS、モスル(イラク)の当局者300人を殺害」との見出しで、「イラクの政府軍報道官によると、ISは8月8日、自身が制圧しているイラク北部のモスルで、少なくとも300人のイラク最高選挙管理委員会の当局者を殺害したという。IS戦闘員幹部が犠牲者の家族に伝えたことには、彼らはISが定めるイスラムの掟によって裁かれたとされた。なお、モスルではこの2週間で、合計2,070人が処刑されたと言われている。」とし、「ISは、昨年6月にモスルを制圧して以降、ここを中心拠点として、イラクとシリアの支配地域を拡大している。」と伝えた。
一方、8月8日付
『ディスパッチ・タイムズ』は、「IS、サウジアラビアのイスラム寺院で自爆テロ」との見出しで、「国連安保理事務局によると、サウジアラビアのイスラム教寺院で8月6日、ISによる自爆テロによって10人以上が犠牲になったという。サウジアラビア内務省報道官によると、他に9人が負傷し、うち3人は重傷という。ISはこれまで、シーア派が大勢を占めるサウジアラビアに対して、何度もテロ行為を仕掛けており、直近でも今年5月、別の都市のイスラム教寺院でも自爆テロを起こし、少なくとも21人の参拝者の命を奪い、97人を負傷させている。」と報じた。
米軍主導の有志連合は、昨年8月にイラク、そして9月にシリア領内でも対IS空爆に踏み切った。米中央軍は、これまでの空爆でIS戦闘員1万人以上を殺害したというが、米情報機関の調査では、IS戦闘員の規模は2~3万人と、空爆開始前から実質的に減っていない。ISによる、中東やその他諸国のイスラム圏出身者のIS戦闘員としての勧誘が、依然奏功しているとみられる。一方、米国のIS掃討作戦は戦闘部隊を派遣せず、空爆と、イラクやシリアでISと戦う部隊への武器供与と訓練に留めるという、対症療法的なものであるため、ISを減退させるまでに至っていないというのが実情と思われる。
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