イタリア政府が中国企業の事業買収を阻止、今年で3例目(2021/11/25)
イタリアのマリオ・ドラギ首相が中国企業の買収申請を却下する決定を下した。2月の政権発足以来、中国企業による買収阻止はこれで3例目となる。
『ロイター通信』 によると、中国のハイテク企業である浙江晶盛机电股份有限公司は、アメリカの半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズの香港法人と合弁会社を設立し、アプライドがイタリアで保有するスクリーン印刷機事業を買収しようとしたが、イタリア政府がこれを阻止した。
この決定は11月18日の閣議で下され、ジャンカルロ・ジョルジェッティ産業相が、この買収が戦略的な半導体分野に影響を与える可能性があるとして、却下することを推奨したという。...
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『ロイター通信』 によると、中国のハイテク企業である浙江晶盛机电股份有限公司は、アメリカの半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズの香港法人と合弁会社を設立し、アプライドがイタリアで保有するスクリーン印刷機事業を買収しようとしたが、イタリア政府がこれを阻止した。
この決定は11月18日の閣議で下され、ジャンカルロ・ジョルジェッティ産業相が、この買収が戦略的な半導体分野に影響を与える可能性があるとして、却下することを推奨したという。アプライドは、半導体やその他のハイテク部品を製造する機械を扱っている。申請書によると、この合弁会社は、アプライドがシンガポールで展開しているウェハー装置事業と中国でのその資産の買収も目指していた。
イタリア政府は、銀行、エネルギー、通信、医療など、戦略的に重要と考えられる産業において、「買収防止法」に基づき、望ましくない入札を阻止する権利を有している。政府は多くの合併や供給設備の取引を精査しており、ほとんどの場合、国益を維持することを勧告した上で承認している。
イタリアは、2012年に買収防止法を導入して以来、これまでに5回、イタリアにおける外国企業による買収を阻止している。そのうち4回は、中国企業による入札だった。また、3回はドラギ政権発足後の9カ月の間に決定された。また、イタリア政府は、中国の投資家が2018年に軍用のハイテク無人機を製造するイタリア企業を非公開で買収していたことを正式に告訴する方針を明らかにし、この取引を無効にすることを目指している。
香港メディア『サウスチャイナモーニング・ポスト』 によると、ドラギ首相は10月に、中国が保有するスイスの多国籍企業シンジェンタへの野菜種子製造会社の売却に拒否権を発動し、4月には中国企業シンセン・インベンランド・ホールディングスが、半導体製造会社から支配的な保有数の株式を買い集めるのを阻止していた。
仏『レゼコー』 誌によると、欧州委員会は23日、欧州連合(EU)における外国企業の買収規制に関する初の見直しを行うにあたり、加盟国への規制の必要性を改めて訴えた。報告書は、「国家、EU、単一市場の集団安全保障」の名のもとに、「27のすべての加盟国が制御メカニズムを備えることを強く期待する」とし、「近年、投資家のプロフィールとその投資パターンに明らかな変化が生じており、OECD非加盟国の買収者が増加している。」と指摘している。
近年、中国からの買収案件は60%以上減少しているが、欧州委員会は、中国の投資家のハイテクに対する意欲は高まっており、今後メインの投資先になるのではないかと考えている。2013年以降の中国企業による買収の74%は、中国政府の10年計画「Made in China 2025」で定められた中国政府の優先事項に沿ったものでもあった。
欧州委員会は、イタリアやドイツなどでは2020年のM&A取引件数のそれぞれ29%以上、25%以上おいて、中国企業が関与していた。しかし、平均すると、買収された企業の資本金の25%は、中国政府が保持していることが確認されている。中国企業はオフショア取引でEUに参入していることが多いため、この数字はおそらく過小評価されているとも言われている。
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フランス国際政治学者、「日本は米国の新しいお気に入り」(2021/10/27)
インド太平洋地域は、中国の台頭によって世界の新たな中心地となっている。こうした中、バイデン政権にとって日本が一番の同盟国に選ばれていると、フランスの著名な国際政治学者が述べている。
フランス国際関係研究所(IFRI)の特別顧問であり国際政治学者のドミニク・モイジ氏が仏
『レゼコー』 紙への寄稿で、中国に対抗する上で、今、日本が米国にとって最も大切な同盟国になっていると主張している。
モイジ氏によると、第二次世界大戦後、長い間英国が米国の最も大切な同盟国であった。ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終結して以降、アメリカにとって最も大切な同盟国は、その時の大統領に応じて変わっていった。...
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フランス国際関係研究所(IFRI)の特別顧問であり国際政治学者のドミニク・モイジ氏が仏
『レゼコー』 紙への寄稿で、中国に対抗する上で、今、日本が米国にとって最も大切な同盟国になっていると主張している。
モイジ氏によると、第二次世界大戦後、長い間英国が米国の最も大切な同盟国であった。ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終結して以降、アメリカにとって最も大切な同盟国は、その時の大統領に応じて変わっていった。オバマ元大統領時代はドイツ、トランプ前大統領時代はイスラエルとサウジアラビアがあげられる。そして今、アメリカには新しい「お気に入り」ができた。
アメリカのある上級外交官は、「世界の中でアメリカにとって最高の同盟国は、もはや日本であることに疑いの余地はない」と述べていた。バイデン大統領の就任後、ホワイトハウスに最初に迎えられた訪問者は日本の首相であり、続いて韓国の大統領であった。これは、アメリカがインド太平洋地域を優先し始めていることを示しているという。
モイジ氏は、アメリカが日本を選んだのは偶然ではないとも主張している。インドは人口比では世界最大の民主主義国家であるが、民主主義の実践面で多くの問題を抱えている。一方、日本は米国にとって好ましい面を沢山備えている。日本は手続きが煩雑で腰が重い面があるものの、安定した民主主義の国である。また、米国、中国に次ぐ世界第3位の経済大国であり、グローバルパワーとして紛れもない地位を確立している。そして何よりも、日本は地理的に、世界にとっての新たな脅威である中国に非常に近く、世界の新しい中心地の最前列にいる。
香港の『サウスチャイナモーニング・ポスト』 は、米国の駐日大使に指名されているラーム・エマニュエル氏が米上院の公聴会で証言し、中国が「分断による征服」を目指す中、日米の二国間関係を強化することを宣言するとともに、東京の防衛費が増加する可能性があることを歓迎したと伝えている。
オバマ元大統領の大統領側近の首席補佐官を務めたエマニュエル氏は、日米のパートナーシップは「自由で開かれたインド太平洋における平和と繁栄の礎となってきた」と述べ、大使として「承認されれば、私の最優先事項はこの結びつきを強化することだ」と述べた。そして、「中国は分裂による征服を目的としている。アメリカの戦略は結束による安全保障である。地域の結束は、日米同盟のうえに築かれている」と付け加えている。
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