新型コロナウィルス蔓延は政治犯にとっては朗報? イランとフランスで各々拘束者を交換・釈放【米・イランメデイア】(2020/03/21)
新型コロナウィルス感染の世界的流行は更に勢いを増し、3月21日現在、世界166ヵ国、感染者27万5,434人、死者1万1,399人まで膨れ上がっている。そうした中、感染者数が世界5位のイラン(1万9,644人、死者1,433人)と同7位のフランス(1万2,632人、死者450万人)両国が、各々の政治犯を交換・釈放した。なお、イランでは、収容所内の感染拡大予防措置として、その他の一般囚人9万5千人を一時的に釈放している。
3月20日付米
『AP通信』:「イラン、囚人交換合意に伴い、拘束中のフランス人研究者を釈放」
イラン国営メディアは3月20日、イラン政府が、フランスとの囚人交換合意を受けて、8ヵ月余り前に国家機密保持法違反で逮捕・拘束していたフランス人研究者を釈放したと報じた。
釈放されたのはローランド・マーシャルで、テヘランのフランス大使館側に引き渡された。
その数時間前、フランス政府が、米国による対イラン制裁に違反した罪で1年余り前に逮捕していたイラン人ジャラル・ルホラフネジャッドを釈放している。...
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3月20日付米
『AP通信』:「イラン、囚人交換合意に伴い、拘束中のフランス人研究者を釈放」
イラン国営メディアは3月20日、イラン政府が、フランスとの囚人交換合意を受けて、8ヵ月余り前に国家機密保持法違反で逮捕・拘束していたフランス人研究者を釈放したと報じた。
釈放されたのはローランド・マーシャルで、テヘランのフランス大使館側に引き渡された。
その数時間前、フランス政府が、米国による対イラン制裁に違反した罪で1年余り前に逮捕していたイラン人ジャラル・ルホラフネジャッドを釈放している。
イランメディアによれば、フランス政府は当初、ルホラフネジャッド容疑者を、米政府に引き渡すことを考えていたという。
一方、マーシャル容疑者は、共同研究者であり、かつ傑出した人類学者であるフランス系イラン人ファリバ・アデルカーを昨年6月に訪ねた際、反政府プロパガンダを流布したとして逮捕された。
その際、同時にアデルカー容疑者もスパイ容疑で逮捕されたが、後にスパイ容疑は引っ込められ、罪状が国家機密保持に関わる違反行為に絞られた。
なお、イランは目下、中東内で新型コロナウィルス感染が最も深刻で、同国保健省の3月20日発表では、死者が1,433人にも上っている。
そこで同政府は既に、収容所内での新型コロナウィルス感染拡大を防ぐため、8万5千人の囚人を一時的に釈放している。
そして更に3月19日、ペルシアの新年に当たるノウルーズに伴う恩赦として、1万人の囚人を釈放すると発表した。
なお、その中に政治犯や、活動家、あるいは言論統制違反者がどれほど含まれるのか明かされていない。
3月21日付イラン『イラン・デイリィ』紙:「イラン、フランス政府がイラン人技師を釈放したのと交換にフランス人を釈放」
昨年6月にイラン当局によって拘束されたフランス人ローランド・マーシャル容疑者は、国家機密保持法違反の罪で、イラン革命裁判所で5年の有罪判決を受けていた。
今回、同容疑者と交換でフランスから釈放されるのは、イラン人技師ファリバ・ルホラフネジャッド(41歳)で、昨年2月にニース空港到着時にフランス当局によって逮捕されていた。
そして昨年5月、フランス南部のエクサンプロバンス地裁は、イラン政府の釈放要請を拒否した上、イラン企業に代わって米製技術品を違法にイランに輸入しようとした罪で、同技師が米国内法で裁かれることを認めて、米政府への引き渡しを決定していた。
なお、直近でもフランス最高裁は、地裁による米国への引き渡し判断を支持していたが、今回、イラン・フランス両政府間の交換交渉が結実したことになる。
専門家らの評価によると、今回の措置はイラン政府にとっての外交的勝利だとする。
何故なら、米同盟国であるフランスが、米国の要請を無視して、当該イラン人の釈放、イランへの帰国を認めたからである。
すなわち、この結果として、米政府が主張する反イラン政策の失敗を意味するからだとする。
(注)ノウルーズ:ペルシア語で、ノウは「新しい」、ルーズは「日」を意味。太陽が春分点を通過する春分の日に当たり、農事暦上重要であることから、イランを中心に、中央アジア、アゼルバイジャンからアフリカまでに及ぶ広い地域で祝われる祭日。国連総会は、2010年2月23日にこの日を「ノウルーズ国際デー」として正式に承認している。
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トランプ大統領がイスラム過激派掃討作戦の忠実なパートナーのクルド人勢力を裏切ったと著名トークショー司会者も猛烈非難【米・イランメディア】(2019/10/25)
ドナルド・トランプ大統領は10月23日、シリア北部から米軍が撤収することで、トルコ軍による同地域のクルド人勢力への攻撃を恒久的に止められた、と自画自賛する演説を行った。米軍の撤収については、これまでイスラム過激派掃討作戦に忠実に貢献してきたクルド人勢力を見捨てる行為だとして、与党・共和党からも造反者が出て、10月16日の下院において同大統領の撤収決定に反対する決議案が圧倒的多数で可決されている。そしてこの程、米テレビ著名トークショー司会者も、同大統領のお粗末な決定は、同地域への影響力拡大を目論むウラジーミル・プーチン大統領を喜ばせただけだと猛批判した。
10月23日付米
『ハフィントン・ポスト』オンラインニュース:「著名司会者コルベア、冷徹な事実検証を以てトランプ大統領の自画自賛演説を酷評」
著名トークショー司会者のスティーブン・コルベア氏(注1後記)は10月23日放送の「レイト・ショー」の中で、当日ドナルド・ドナルドトランプ大統領が行った演説を酷評した。
すなわち、同大統領がシリア北東部から米軍を撤収したことによって、トルコ軍に恒久的停戦をなさしめ、同地域に平和をもたらしたとする自画自賛の評価について、同地域における影響力を拡大しようとしていた、同大統領の盟友であるウラジーミル・プーチン大統領を喜ばせただけだと一蹴した。...
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10月23日付米
『ハフィントン・ポスト』オンラインニュース:「著名司会者コルベア、冷徹な事実検証を以てトランプ大統領の自画自賛演説を酷評」
著名トークショー司会者のスティーブン・コルベア氏(注1後記)は10月23日放送の「レイト・ショー」の中で、当日ドナルド・ドナルドトランプ大統領が行った演説を酷評した。
すなわち、同大統領がシリア北東部から米軍を撤収したことによって、トルコ軍に恒久的停戦をなさしめ、同地域に平和をもたらしたとする自画自賛の評価について、同地域における影響力を拡大しようとしていた、同大統領の盟友であるウラジーミル・プーチン大統領を喜ばせただけだと一蹴した。
これに先立つ10月中旬、米下院議会は354対60の大差(編注;共和党造反議員129人)で、同大統領のシリア撤収決定を非難する決議案を採択している。
そして同氏は、同大統領の決定は、これまで米軍と共に忠実にイスラム過激派掃討作戦に従事してきたクルド人勢力を、“完全に裏切るもの”だと非難した。
なお、国連は、トランプ大統領の米軍撤収の決定以降、同地域に暮らす8万人の子供も含めた18万人が追放されたと発表している。
一方、10月24日付イラン『イラン・デイリィ』紙:「クルド人勢力主体のシリア民主軍、トルコ軍によるシリア北東部への侵入を止めてくれたロシアに謝意」
クルド人勢力主体のシリア民主軍(SDF、注2後記)のマズルーム・アブディ司令官は10月23日、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相とワレリー・ゲラシモフ参謀総長とのテレビ電話で、ロシアがトルコから取り付けた合意によって、クルド人勢力がトルコ軍による攻撃によって“惨劇”に遭わないで済むようになったとして、謝意を表明した。
ロシアのプーチン大統領とトルコのタイイップ・エルドアン大統領は10月22日にソチで会談し、クルド人勢力をトルコ国境から30キロメーター程シリア領内に退去させた後、同地域を“安全地帯”としてロシア軍とシリア軍が共同で警備する、という停戦案に合意している。
SDFは、これまで支援を得ていた米軍が、10月初めのトランプ大統領による方針大転換によって同地域から撤収することとなり、クルド人勢力がトルコ軍による攻撃にさらされることとなったことから、米国に代わってシリア(ロシアが後ろ盾)に支援を要請することとしていた。
(注1)スティーブン・コルベア:著名なコメディアン・俳優・作家。エミー賞(テレビ番組等に与えられる賞)を3度受賞。2015年よりCBSテレビの「レイト・ショー」というトーク番組の司会役。
(注2)SDF:シリアの反体制派グループ。シリア内戦下の2015年10月、シリアのクルド人民兵組織のクルド人民防衛隊(YPG)を主体として結成。所属組織には、「ユーフラテスの火山」などそれまでYPGと共闘してきたクルド系、アラブ系、シリア語系キリスト教徒の組織等、約40の組織が参加。
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