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日本版GPS「みちびき」打ち上げ(11月6日)
先月26日、高度3万6000キロの宇宙空間に向けて日本の準天頂星測位システム(QZSS)「みちびき」がH2Aロケットによって打ち上げられた。
測位衛星は国の安全保障や防災、サービス分野における基幹インフラであり、主に船舶や航空、自動車、鉄道のナビゲーションや地図アプリなどに利用されており、今や日常生活に欠かせないシステムとなっている。
今回の打ち上げは日本の測位衛星の4基のうちのひとつが老朽化したために打ち上げるというのが、打ち上げの表向きの理由となっている。...
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先月26日、高度3万6000キロの宇宙空間に向けて日本の準天頂星測位システム(QZSS)「みちびき」がH2Aロケットによって打ち上げられた。
測位衛星は国の安全保障や防災、サービス分野における基幹インフラであり、主に船舶や航空、自動車、鉄道のナビゲーションや地図アプリなどに利用されており、今や日常生活に欠かせないシステムとなっている。
今回の打ち上げは日本の測位衛星の4基のうちのひとつが老朽化したために打ち上げるというのが、打ち上げの表向きの理由となっている。
もうひとつの理由としては、米国製の測位衛星であるGPS(全地球測位システム)に依存しすぎない体制の構築が挙げられる。
1970年代後半から配備が始まった米国のGPSはクリントン大統領時代にGPS信号を無償提供する代わりにこれを世界標準として受け入れることを要求し、米国は影響力拡大のためのツールとして使っていった。
欧州はこの流れに疑問を呈し、GPSが途中で米国に止められてしまうことを恐れ、自前の衛星システム「ガリレオ」を打ち上げた。今や先進国では測位衛星について自前のものを使うのが当たり前になっている。
測位衛星は国の安全保障にも絡むため、例え同盟国と言っても、相手国の都合に左右されることも考えられ、頼り過ぎるのは危険であるという認識が一般的である。
今後、日本はさらに3基の衛星を打ち上げ、2023年をめどに7基体制としアジア太平洋地域において高精度の位置情報を提供していきたい考えである。
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ノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏を讃える(10月9日)
ことしのノーベル物理学賞の受賞者に、プリンストン大学の上級研究員、真鍋淑郎氏が選ばれた。
真鍋氏のすごいところは地球温暖化問題を早くから提唱し、今のようにコンピュータが普及していない時代だったにも関わらず、数理モデルを作り、複雑な仕組みをコンピューターシミュレーションで、わかりやすく示したということに尽きる。
さらに大気と海流を2大変数として着目した点も特筆すべき点ではないだろうか。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書にも真鍋氏の予測モデルが引用されている。...
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ことしのノーベル物理学賞の受賞者に、プリンストン大学の上級研究員、真鍋淑郎氏が選ばれた。
真鍋氏のすごいところは地球温暖化問題を早くから提唱し、今のようにコンピュータが普及していない時代だったにも関わらず、数理モデルを作り、複雑な仕組みをコンピューターシミュレーションで、わかりやすく示したということに尽きる。
さらに大気と海流を2大変数として着目した点も特筆すべき点ではないだろうか。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書にも真鍋氏の予測モデルが引用されている。
真鍋氏の大きな功績は「地球温暖化問題」「数理モデル化」「シミュレーション」の3つである。
1958年に渡米した真鍋氏は米国での研究生活の中で、「コンピュータ」を使いこなし、気温や雨の分布といった地球の大気と海流の動き等をコンピュータ上で再現し、大気循環モデルを分かりやすくし、問題点を明確化した功績ではないだろうか。
40年間の気象研究で使った研究費は、驚くべきことに150億円で、このうち約75億円をスーパーコンピュータに費やした。まさに「コンピュータ」活用の達人と言える。
「コンピュータ」という道具を「地球温暖化問題」という人類が直面する大問題の解析に活用し、その理解を容易にしたということで、まさにノーベル物理学賞にふさわしい業績を残したと言える。
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半導体の新たなアーキテクチャーを切り開く(9月25日)
東京五輪が開催されるまで、日本が成長戦略に据えていたのは「観光」であった。ところが予期せぬコロナの到来と東京五輪の無観客開催によってこの戦略は宙に浮いてしまった。
そこで急遽浮上したのが半導体である。日本は米国や台湾などと連携しながら成長戦略の真ん中に半導体を据えていこうとしている。
日本で半導体と言う場合には主としてモノ作り分野での側面を指している場合が多いが、ひとことで半導体と言っても幅広い分野がある。...
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東京五輪が開催されるまで、日本が成長戦略に据えていたのは「観光」であった。ところが予期せぬコロナの到来と東京五輪の無観客開催によってこの戦略は宙に浮いてしまった。
そこで急遽浮上したのが半導体である。日本は米国や台湾などと連携しながら成長戦略の真ん中に半導体を据えていこうとしている。
日本で半導体と言う場合には主としてモノ作り分野での側面を指している場合が多いが、ひとことで半導体と言っても幅広い分野がある。
例えば、スマホに搭載されているプロセッサーの多くは英国・ARMによるものだが、ARMはモノ作りに携わっている会社ではなく、プロセッサーや周辺技術の基本設計や開発を行い、作り方・作ったものを売る権利(アーキテクチャ)を販売している会社である。言い換えれば知的財産権を販売している会社である。
一方、多くの日本人にとって半導体というのは半導体チップというモノそのものである。そのため、日本人の半導体認識から言えばARMという会社の存在自体、なかなか理解しづらいものである。
孫正義氏が鋭いビジネス嗅覚でARMを一旦は買収したが、その後、どう活用していいかわからずに手放したことに象徴されるように、日本の半導体戦略にはアーキテクチャという視点や知財権を販売するなどの視点が欠落している。
80年代に日本は半導体業界をけん引していたが、この時の規格化された汎用チップとしてのステレオタイプな半導体イメージを未だに引きずっていることがそうした状況を招いてきた大きな要因と考えられる。
こうした状態から脱却するには、人型ロボット用の頭脳となるCPUやその周辺の半導体を設計思想から解き起こして、生み出してゆく等、新たな試行が求められる。
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日本の活力をどう生むか(9月20日)
9月19日の読売新聞の「地球を読む」欄にシャレド・ダイアモンド氏の小論文が掲載されていた。
今、日本では自民党総裁選挙で、4人の候補者が持論を展開し、活発に議論しているが、この小論文では、「コロナ禍に対する日中韓と欧米の違い」は、食料生産の歴史的違いから生じてきていると論じていた。
即ち、同調性の高い農耕民族は、しっかりと「マスクを付け」、必要性が低い欧米人は「いわれてもマスクを付けない」傾向が強いと論じ、それが死者数にも表れているとしている。...
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9月19日の読売新聞の「地球を読む」欄にシャレド・ダイアモンド氏の小論文が掲載されていた。
今、日本では自民党総裁選挙で、4人の候補者が持論を展開し、活発に議論しているが、この小論文では、「コロナ禍に対する日中韓と欧米の違い」は、食料生産の歴史的違いから生じてきていると論じていた。
即ち、同調性の高い農耕民族は、しっかりと「マスクを付け」、必要性が低い欧米人は「いわれてもマスクを付けない」傾向が強いと論じ、それが死者数にも表れているとしている。
確かに、氏の分析はかなり的を得たものだと頷ける。
ところで、コロナ禍はいつまでも続くものではない。その先に来る平時の時代に、農耕民族である日本人は、どのように世界の中で生きて行ったら良いのだろうか。
一例を上げれば、次なるフロンティアである「宇宙開発」においては、イーロンマスク率いるスペースXに大きく水をあけられている。
中国は、国家主義によって宇宙開発にも力を注ぎ、一定の成果を上げている。
あらゆる産業の芽の中で、今日本の開発力と実現力は、新たな視点と努力が求められているのではないだろうか。
自民党総裁候補の口から、その構想が出てこないのは、どうしてなのかと訝しく感じられる。
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低軌道衛星の戦略的価値(9月18日)
1957年にソ連が世界初の人工衛星「スプートニク」の打ち上げに成功し1960年代に米国が初めて静止軌道へ通信衛星を打ち上げたことがきっかけとなり、本格的な衛星利用時代が始まった。
打ち上げられた衛星には放送衛星、通信衛星、科学衛星、測位・ナビゲーション衛星、偵察衛星、農業衛星、気象衛星など、いろいろあり、利用価値も高くなっている。
2000年代からはイリジウム社などの企業が衛星の民間利用に参入するようになり、2019年末から宇宙観光ビジネスなどその利用は爆発的な増加に転じた。...
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1957年にソ連が世界初の人工衛星「スプートニク」の打ち上げに成功し1960年代に米国が初めて静止軌道へ通信衛星を打ち上げたことがきっかけとなり、本格的な衛星利用時代が始まった。
打ち上げられた衛星には放送衛星、通信衛星、科学衛星、測位・ナビゲーション衛星、偵察衛星、農業衛星、気象衛星など、いろいろあり、利用価値も高くなっている。
2000年代からはイリジウム社などの企業が衛星の民間利用に参入するようになり、2019年末から宇宙観光ビジネスなどその利用は爆発的な増加に転じた。
特筆すべき企業はロシア系米国人のイーロンマスク率いるスペースXであり、彼らは既に1200基以上の衛星を打ち上げている。
懸念されるのは、各国や企業が競うように衛星を打ち上げているため、日本も多岐に様々な衛星を打ち上げていかないと、低軌道帯が混雑し、衛星を打ち上げられなくなる日がくる可能性もないとはいえないことである。
日本は自国だけで、日本の民間企業だけで衛星を打ち上げるという手法だけでなく、スペースXなどと提携し、安全保障分野で協力してもらうというやり方も考えられる。
例えば、某国の鉄道網や道路網から弾道ミサイルが発射されないよう、スペースXの衛星コンステレーション網でミサイル発射の兆候を察知し、敵基地先制攻撃でポイントを叩くなどの使い方もシナリオのひとつとして考えられるのではないか。
衛星を打ち上げる意味は本来の用途以外にもある。それは、中国に宇宙覇権を確立させないということである。そのためにも衛星を飛ばし、常に宇宙に意識を向けていく必要がある。
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