設計思想を大事にしたい(1月22日)
脱炭素化とデジタル化の進展はまさに時代が変わろうとしているサインであり、新型コロナ感染症がこの流れを加速させている。一方日本の思考方法を変えざるを得ない局面に追い込まれている。
新たな時代の担い手の一つは、IT企業や半導体企業である。日本に巨大なIT企業が少ない大きな遠因は2008年、スマホとクラウドへの世界的大移行の波に乗り遅れたことでもある。すでに米国では、GAFAが登場していたが、それからも日本の企業はG
A F A規模にはなれなかった。...
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脱炭素化とデジタル化の進展はまさに時代が変わろうとしているサインであり、新型コロナ感染症がこの流れを加速させている。一方日本の思考方法を変えざるを得ない局面に追い込まれている。
新たな時代の担い手の一つは、IT企業や半導体企業である。日本に巨大なIT企業が少ない大きな遠因は2008年、スマホとクラウドへの世界的大移行の波に乗り遅れたことでもある。すでに米国では、GAFAが登場していたが、それからも日本の企業はG
A F A規模にはなれなかった。
携帯からスマホへの移行が遅れ、クラウドの受け入れを遅延させ、ガラパゴス化を生んでしまった。上層部にはお金やビジネスの専門家が多かったが発想やビジョンを持つ人が少なく、新しい時代に対する構想力が不足していた。
今でもこの構造はあまり変わっておらず、例えば半導体産業をトータルでイメージできている専門家は少ない。半導体産業というと日本では70から80年代に作っていたトランジスターや発光ダイオードのようなチップを製造する企業だと想像する人が多い。あるいはTSMCのような半導体製造会社(ファウンドリー)が製造している製品を半導体産業のコアだと思っている人もいる。しかし、半導体を作るためには数えきれないほどの段階があり、上流部分にあるアーキテクチャーに目を向ける人は少ない。
具体的にはアームなどの、基本回路の設計図、仕様を決めるアーキテクチャー企業群が上流には存在する。彼らが作った設計図をアップルやグーグル、クアルコム、エヌビディアといった、例えていうなら設計事務所が設計し、TSMCのようなファウンドリーに作らせているというのが実情である。
振り返れば70年代の日本、例えば富士通は新たなアーキテクチャーを開発する意欲を少なくとも持っていた。米国IBMからアムダール博士を独立させ、新型コンピュターの設計図を作らせていたことからもそれは明らかである。残念ながら2022年の日本ではもはやアーキテクチャーの概念そのものが重要視されていない。
この流れを理解しアーキテクチャーのジャンルに踏み込んでいかない限り、日本はアーキテクチャラーが構想したものを作るだけの立場で終わってしまうだろう。今、日本企業に、求められているのはアーキテクチャーの重要性を認識し、作り出してゆく創造ではないだろうか。
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外国人労働者の動向(1月3日)
コンビニエンスストアの店員から中国人や韓国人が減り、ネパール人やウズベキスタン人、カンボジア人、ミャンマー人の店員が増えている。
ネパール人やウズベキスタン人、カンボジア人、ミャンマー人が増えているのは2019年4月に人手不足を解消するために安倍政権下で成立した「改正出入国管理法」を施行したことが大きい。
「改正出入国管理法」で設けられた在留資格「特定技能」とは、日常会話程度の日本語ができ、業種ごとに定められた一定の技能を満たしていると認定されれば、最長5年間日本で働くことが認められるというもので、当時は移民を促す法律であるとして批判された。...
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コンビニエンスストアの店員から中国人や韓国人が減り、ネパール人やウズベキスタン人、カンボジア人、ミャンマー人の店員が増えている。
ネパール人やウズベキスタン人、カンボジア人、ミャンマー人が増えているのは2019年4月に人手不足を解消するために安倍政権下で成立した「改正出入国管理法」を施行したことが大きい。
「改正出入国管理法」で設けられた在留資格「特定技能」とは、日常会話程度の日本語ができ、業種ごとに定められた一定の技能を満たしていると認定されれば、最長5年間日本で働くことが認められるというもので、当時は移民を促す法律であるとして批判された。「改正出入国管理法」には対象国が指定されており、ベトナム、フィリピン、カンボジア、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、中国、モンゴルの9か国だった。
これまで安い労働力を提供してきた中国人や韓国人が少なくなった理由は彼らが裕福になったためであり、そうした労働をする必要がなくなったため日本に来なくなったという解釈が可能である。
ベトナム人については悪質ブローカーによる搾取問題という送り出しサイドの問題が大きくクローズアップされ、受け入れ側が敬遠したことも大きい。日本に行くために莫大な借金を背負い、日本で犯罪に手を染めてしまうベトナム人も少ないのはそのせいかも知れない。
「特定技能」をめぐっては、新型コロナの影響もあり希望者が思うように増えてきていない現状がある。日本で介護の仕事をしようと考えていたインドネシア人もコロナを機に来日を諦めてしまい、日本の介護業界の人手不足に拍車がかかる可能性も指摘されている。
インターネットの登場で外国人を安い賃金で使う日本を含む先進国のグローバリズム的な雇用形態が白日のもとにさらされるようになり、批判を浴びるようにもなってきている。
新しい資本主義を掲げる岸田政権下では安い外国人労働者を使う方向性から、賃上げして日本国内の人材を使う方向にシフトしていくかも知れない。
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EVをめぐる世界の駆け引き・その時トヨタは(12月18日)
脱炭素を錦の御旗に掲げ、EV化の波が世界を覆いつくそうとしている。米国の自動車産業の象徴であったデトロイトではEVやバッテリー関連の工場が次々と建設されている。日本では佐川急便が輸入を決めるなど、中国製の商用EVトラックがいつの間にか入り始めている。欧州や中国の企業はEV化に向けてまっしぐらに突き進んでおり、素材から生産設備まで全ての生産インフラに先手をつけ、「EV以外の動きに出ても無駄だ」と言わんばかりに外堀を埋める動きに出てきている。...
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脱炭素を錦の御旗に掲げ、EV化の波が世界を覆いつくそうとしている。米国の自動車産業の象徴であったデトロイトではEVやバッテリー関連の工場が次々と建設されている。日本では佐川急便が輸入を決めるなど、中国製の商用EVトラックがいつの間にか入り始めている。欧州や中国の企業はEV化に向けてまっしぐらに突き進んでおり、素材から生産設備まで全ての生産インフラに先手をつけ、「EV以外の動きに出ても無駄だ」と言わんばかりに外堀を埋める動きに出てきている。
例えば、後から追随しようにもEVやEVバッテリーに必要な素材であるリチウム、コバルト、ニッケルを買い占め、値段をつり上げ、入手できないようにしてしまう、最終的には彼らの用意した部品をただ組み立てるだけの仕事しか残っていないという状態を彼らは作りあげようとしている。
こうした動きを横目で見つつ、トヨタ自動車・豊田章男社長はEVとバッテリーに関する会見を開き「2035年までに350万台30車種のEVを投入する」と発表した。これまでEVに積極的でないと言われていたトヨタのイメージを一新する狙いがこの会見にはあった。
同じ日本の自動車産業でも日産とホンダはEV化の方向に舵を切った。こうした状況の中で、豊田社長は世界的潮流となっているEV一辺倒の流れには追随することなしに、「EVもやるが、(エンジンを内包した)HVも、PHVも同様にやっていく」という強気の姿勢を見せた。世界の自動車市場をけん引してきたトヨタならではの自信から来るものであり、トヨタは他の動力車と同じぐらいの力をEVにも注ぐつもりであるという意思表示であった。
他方、フォルクスワーゲンなどは2035年までにEVを5割まで引き上げていくとしているなど、EVへの力の入れ具合にはかなりの温度差が存在する。トヨタが力を分散させている間にも欧州・中国勢はなりふり構わずEVに全力を注ぎ、その差を広げようとトップスピードで走っている。
GMやダイムラー、フォルクスワーゲンなど世界を代表する自動車会社が2024年までに全米の自動車市場をEVで席捲しようという計画がある中で、従業員の雇用にまで目を配る日本型企業経営者の代表的存在、トヨタ自動車・豊田章男社長の戦略的成功に日本の将来がかかっていると言っても過言ではないかも知れない。
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日本独自の工夫でCO2削減へ(12月6日)
日本は日本独自のやり方でCO2の削減を考えている。発電方式では大まかに2つある。1つは高効率の石炭火力発電所である。
燃焼時にCO2を発生させないアンモニアを混ぜていく手法である。日本はCOP26で化石賞をもらったが、日本は老朽化した石炭火力発電所のフェードアウトを実現させている。
一方で、石炭とともに、バイオマスやアンモニアを混焼することによって発電効率の向上と低炭素化を図っている。...
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日本は日本独自のやり方でCO2の削減を考えている。発電方式では大まかに2つある。1つは高効率の石炭火力発電所である。
燃焼時にCO2を発生させないアンモニアを混ぜていく手法である。日本はCOP26で化石賞をもらったが、日本は老朽化した石炭火力発電所のフェードアウトを実現させている。
一方で、石炭とともに、バイオマスやアンモニアを混焼することによって発電効率の向上と低炭素化を図っている。例えば、広島の竹原火力発電所は熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱効率が48%で、石炭を微粒子に粉砕して燃やす方式では世界最高水準に位置している。日本の石炭火力発電には、世界最高水準のガス化技術や高効率の発電技術の蓄積があり、CO2排出減にも貢献している。
もうひとつは、SMRと呼ばれる次世代小型原発も発電時にCO2を出さないエネルギー源として期待されている。「脱炭素エネルギー」として世界的に原発を再評価する動きが広がっている中、SMRと呼ばれる次世代小型原発も発電時にCO2を出さないエネルギー源として期待されている。日立製作所とGEの合弁会社「GE日立ニュークリエナジー」などが製造するSMRは炉心が小さく、故障してもすぐに停止できるというメリットがある。重大事故の場合でも、冷却水を自動的に循環させる仕組みになっており、安全に停止させることができる。モジュール化されているため短期間で建設でき、建設コストも低く抑えられる。SMRは原子力関連技術のイノベーションと言っても良い程のレベルにある。
上記2つに太陽光発電や風力など再生可能エネルギーとCO2を地下に貯蔵するCCSやCCUSといった技術、排出権取引や省エネ、カーボンプライシングなどを組み合わせていくことが現実的手法となる。
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ゲームチェンジャーとなり得る技術・光電融合とは何か(11月23日)
日本の半導体業界はNTTの新たな技術に救われるかも知れない。
NTTが技術開発で「光電融合」技術の確立に成功したことが大きい。世界の先頭を走れる高い技術である「光電融合」とは具体的に言うと、電気信号を光信号に変換し、光信号を電気信号に変換し、入力した光信号を別の光に変換・増幅する「光トランジスタ」と光信号のオンとオフや光の行き先を切り替える「全光スイッチ」、超高速の演算処理を担う「光論理ゲート」の3つの要素から成り立つ「電子技術」の限界を突破し、従来の性能をはるかに上回る強力かつ汎用性に富んだ「光技術」である。...
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日本の半導体業界はNTTの新たな技術に救われるかも知れない。
NTTが技術開発で「光電融合」技術の確立に成功したことが大きい。世界の先頭を走れる高い技術である「光電融合」とは具体的に言うと、電気信号を光信号に変換し、光信号を電気信号に変換し、入力した光信号を別の光に変換・増幅する「光トランジスタ」と光信号のオンとオフや光の行き先を切り替える「全光スイッチ」、超高速の演算処理を担う「光論理ゲート」の3つの要素から成り立つ「電子技術」の限界を突破し、従来の性能をはるかに上回る強力かつ汎用性に富んだ「光技術」である。
単純化して言うと、電気を光信号に変え、力を小さくし、省エネ化を達成する一方で、高速でデータを流通させることができるICTの性能を革命的に向上させる可能性を秘めたインフラストラクチャーということである。
NTTは「光電融合」のデバイスを搭載した機器を配置した「オールフォトニクス・ネットワーク」を構築し、2030年をめどに次世代データセンターをけん引していこうとしている。
NTTは「光電融合」を中核に、ネットワークから端末、半導体など全てのデバイスに光ベースの技術を導入し、従来にないサービスを実現するという「アイオン」構想を提唱している。これは半導体技術などに大きな革命をもたらすものになるかも知れない。
注意すべきことは、米中の政治的な変数が入り込むことによって時期がずれたり、邪魔が入らないとも限らないことである。そうならないように状況をよく見極め、大胆に行動していくことが求められている。
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