東欧のマケドニアで9月30日、国名変更の是非を問う国民投票が実施された。9割を超える賛成票が投じられたものの、投票率が成立に必要な50%を大きく下回り、不成立の見通しとなった。
マケドニアの国家選挙管理委員会がウェブサイト上に掲載した情報によれば、投票率は36.86%にとどまり、成立に必要な50%に届かなかった。但し、国民投票は国民の意見を参考に聴くためのものであり、その結果に関わらず、同国のゾラン・ザエフ首相は、憲法を改正し、国名変更を行う議会手続を開始することができるという。
首相は「投票した人の大半が賛成票を投じ、国民投票は成功した」と、勝利であると訴え、議会手続に入る意向を示した。...
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マケドニアの国家選挙管理委員会がウェブサイト上に掲載した情報によれば、投票率は36.86%にとどまり、成立に必要な50%に届かなかった。但し、国民投票は国民の意見を参考に聴くためのものであり、その結果に関わらず、同国のゾラン・ザエフ首相は、憲法を改正し、国名変更を行う議会手続を開始することができるという。
首相は「投票した人の大半が賛成票を投じ、国民投票は成功した」と、勝利であると訴え、議会手続に入る意向を示した。一方、野党も低い投票率により、国名変更が支持されなかったことは明らかとして、双方が勝利を宣言する異例の事態となっている。
今回の国民投票は、国名を「北マケドニア共和国」に変更するという隣国ギリシャとの合意内容を受け入れ、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に加盟することの是非を問うものだった。ギリシャは、旧ユーゴスラビアが崩壊し、1991年に新たな「マケドニア」が建国されると激しく反発。アレクサンドロス大王の生誕地であるギリシャ北部地域のみが「マケドニア」を名乗れると主張し、マケドニアのEUやNATOへの加盟を拒んできた。その後EUの仲介もあり、今年6月に「北マケドニア」に国名を変更することで両国の首相が合意し、30年近くにわたる論争の決着に向けて動き出したところだった。
マケドニア国民の多くは、ギリシャとの合意は経済再生に向けた好機と見ており、合意をまとめたザエフ首相は、NATO加盟がマケドニアに必要な投資をもたらすとしてきた。首都スコピエには、メルケル独首相、マティス米国防長官、ストルテンベルグNATO事務総長、モゲリーニEU副委員長などの要人が相次いで訪れ、合意への支持を呼びかけた。
しかし一方で、国民投票のボイコットを呼びかける、大規模かつ組織的な偽情報を流す運動が行われ、投票率低下につながったものと思われる。バルカン半島への影響力を強め、マケドニアのNATO加盟に反対するロシアの介入との見方が広がっている。
マケドニア議会は与野党伯仲の状況で、与党が憲法改正に必要な3分の2の支持を得るためには、野党の一部を取り込まねばならない。国民投票が不成立となると反対派の切り崩しも困難となり、ギリシャ議会の承認も必要なため、国名変更は困難との声も出ている。
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