国際NGOの「国境なき記者団」は、4月26日(水)に2017年の「報道の自由度ランキング」を発表した。同記者団は、世界各地の記者・専門家へのアンケートを行い、法的環境やジャーナリストに対する政府の脅威等に関する評価を基に、毎年世界の「報道の自由度指数」をまとめている。
今回、米国は調査対象の180か国中43位であった。前年より2位低下しており、これは西アフリカのブルキナファソの下で、インド洋のコモロの上の順位である。米国のランキングは過去17位が最高で、この15年間は徐々に順位を下げている。
トランプ大統領のメディアへのツィッター攻撃や、特定メディアに対するホワイトハウスへのアクセス制限等の影響により、今年の順位が低下したものであるが、英国、フランス、カナダ等、他の民主主義諸国もそれぞれ順位を下げた。...
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今回、米国は調査対象の180か国中43位であった。前年より2位低下しており、これは西アフリカのブルキナファソの下で、インド洋のコモロの上の順位である。米国のランキングは過去17位が最高で、この15年間は徐々に順位を下げている。
トランプ大統領のメディアへのツィッター攻撃や、特定メディアに対するホワイトハウスへのアクセス制限等の影響により、今年の順位が低下したものであるが、英国、フランス、カナダ等、他の民主主義諸国もそれぞれ順位を下げた。
上位国は全てノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク等の北欧諸国が占めた。下位の国々は、北朝鮮、エリトリア、トルクメニスタン、シリア、中国といった報道規制をしている国々であり、ここ数年その傾向は変わっていない。他の欧州諸国の順位は、ドイツ16位、カナダ22位、フランス39位、イギリス40位、イタリア52位、ロシア148位等であった。
米国について、国境なき記者団は、「大統領選挙がジャーナリストに対する魔女狩りを引き起こした。」とデータの分析の中で述べている。「ドナルド・トランプの第四権(報道のこと)とその代表者に対する痛烈な攻撃により、メディアは「この世で最も信用できない人間である」とか、「故意に“嘘の(フェイク)ニュース”を流している」などと強く非難されたため、表現の自由を擁護するという、米国の長き伝統が損なわれていると述べた。さらにトランプ大統領の言わばヘイト・スピーチのような発言が、英仏などの民主主義の伝統国を含め、ほとんど世界中のメディアへの攻撃をしかける引き金となったとしている。
国境なき記者団は、トランプ大統領ばかりでなく、バラク・オバマ前大統領も、報道の自由、情報にアクセスする自由を損ねたと強く批判している。オバマ政権に関しては、情報を漏洩した内部告発者に対する刑事訴追件数の多さや、革命勢力について報道をした外国人ジャーナリストを渡航禁止としたこと等の、締め付けについて触れている。
民主主義国家であっても、政府のジャーナリスト監視など「全体的な傾向として、自由な報道の根本条件を脅かすような法令の策定等の動きが進んでいる」と警戒感を示している。パリを本拠としたあるメディアが、政府当局が無名のニュース媒体にまで、直接政治的圧力をかけたと言っていること、またフィンランドが過去6年間、ランキングトップの国であったにも係わらず、昨年ユハ・シピラ首相が、自分に不利な報道を抑圧するために国営放送に介入した事件のため、今年は3位となったこと等を指摘した。
さらにポーランド、トルコ、ハンガリーのように民主主義の歴史が浅い国々において、「権威主義的な強者のモデル」が生まれている、不快な声明、過酷な法律、肉体的な暴力等によって、世界各地でジャーナリズムの力が弱まっているなどと警告している。
日本は前年と同じく、72位だったが、52位のイタリアに抜かれ、G7では最下位だった。日本も2010年の11位から年々低下が続いている。国境なき記者団は、大手メディアの自主規制や記者クラブ制度によって、ジャーナリストが権力監視の役割を果たせていないことや、特定秘密保護法について、国連から疑問が提示されたにも関わらず、政権が議論を拒み続けていることなどを指摘している。
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