9月19日発刊の「The Lancet Neurology」は、直近三十年間で世界において脳卒中患者が急増した原因についての研究論文を掲載した。

報告者は、ワシントン州立大（1861年創立）のバレリー・フェイギン客員教授とキャサリン・ジョンソン主任研究員である。...

9月19日発刊の「The Lancet Neurology」は、直近三十年間で世界において脳卒中患者が急増した原因についての研究論文を掲載した。

報告者は、ワシントン州立大（1861年創立）のバレリー・フェイギン客員教授とキャサリン・ジョンソン主任研究員である。

両氏の研究論文の骨子は以下のとおり；

・1990～2021年の間、脳卒中患者は70％も増え、うち死者は44％、後遺症障害者も32％と急増。

・現在も、同疾患総数は1,200万人弱で死者は700万人超。

・脳卒中疾患の原因について、84％の患者に23の危険因子があると特定。主な原因は大気汚染、喫煙、肥満、高血圧。

・特に懸念された点は、大気汚染や地球温暖化に因る気温上昇等の環境要因の増大。大気汚染で発生する粒子状物質は、致命的な脳出血にも関連しており、喫煙と同等の要因。

・インド、ナイジェリア、バングラデシュ等の低・中所得国における同疾患死亡者数が世界全体の4分の3超。

・脳卒中罹患率も、東アジアの一部、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国、及び中央アジアにおいては、北米等の高所得国に比べて10倍。

・これら途上国において、高血圧症、若年成人の肥満・2型糖尿病疾患の増加に対して十分な予防措置が講じられない限り、若年層の脳卒中リスクは引き続き上昇と懸念。

・世界全体で見ても、高血圧、高コレステロール、肥満等の代謝因子が脳卒中の主原因。共通するのは、特に若年層における運動不足、高糖質の飲食習慣。

（注）The Lancet Neurology：1823年に英国外科医によって創刊された査読制の医学週刊誌「The Lancet」（世界五大医学雑誌のひとつ、ロンドン・ニューヨークに編集拠点）より、2002年に生み出された神経学に関わる専門学術誌。