欧州連合(EU、1958年前身設立)は今週、中国製EVが政府補助金により不当に廉価販売されていることを理由として関税賦課の決定を行う予定である。しかし、EU加盟国間では、中国メーカーのEV新規工場誘致にしのぎを削っている。
6月10日付
『ロイター通信』は、EU全体では中国製EVへの関税賦課を検討しているが、加盟各国は中国EVメーカーの新規工場誘致で鍔迫り合いをしていると報じた。
EUは今週、中国製EVが政府補助金を受けて欧州に不当に廉価販売されていることを問題視して、関税賦課を決定する意向である。
ただ、米経営コンサルティング会社アリックスパートナーズ(1981年設立)によれば、昨年の欧州市場における中国EV販売シェアは4%で、2028年までに7%に伸びるのがせいぜいであるという。...
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6月10日付
『ロイター通信』は、EU全体では中国製EVへの関税賦課を検討しているが、加盟各国は中国EVメーカーの新規工場誘致で鍔迫り合いをしていると報じた。
EUは今週、中国製EVが政府補助金を受けて欧州に不当に廉価販売されていることを問題視して、関税賦課を決定する意向である。
ただ、米経営コンサルティング会社アリックスパートナーズ(1981年設立)によれば、昨年の欧州市場における中国EV販売シェアは4%で、2028年までに7%に伸びるのがせいぜいであるという。
しかし、EU各国は、新規海外投資を増やして自国の経済成長に繋げたい意向であり、中国EVメーカーが検討している欧州における新規工場建設も自国に取り入れたい選択肢のひとつである。
米経営コンサルティング会社ベイン&カンパニー(1973年設立)共同経営者のジャンルカ・ディ・ロレート氏は、“中国EVメーカーの比亜迪(BYD、1995年設立)、奇瑞汽車(チェリー、1997年設立)、中国国営の上海汽車(SAIC、1958年設立)としては、欧州より中国国内でEV生産する方がずっと安価でできるが、欧州進出は将来を見据えた経営判断である”とする。
“何故なら、中国から欧州への輸送コストや、現在取り沙汰されている関税賦課を考えた場合、欧州に自社工場を持って生産・販売をする方がずっと有利と考えるからである”とし、“欧州自社工場で生産すれば、中国車ではなく欧州車とのブランドイメージが確立できるからだ”と付言している。
かかる背景の下、EU各国では以下のように、中国EVメーカーの新規投資誘致に躍起になっている。
● ハンガリー
・昨年、BYDの欧州第一工場誘致に成功。2025年に計画されている同社の第二工場誘致も交渉中。
・目下、中国最大の長城汽車(1976年設立)の欧州第一工場を誘致すべく、新規雇用創出の補助金・税優遇措置・規制緩和等を提案。
・また、世界最大手のEV用電池メーカー寧徳時代新能源科技(CATL、2011年設立)や韓国EV用電池メーカーの新規工場誘致のために10億ドル(約1,570億円)余りを支援。
● ポーランド
・零跑汽車(リープモーター、2015年設立)は、フランス・イタリア合弁企業のステランティス(2021年設立、世界第4位の自動車メーカー)が同国南部のティヒに保有する工場を新規EV生産拠点とすることで合意。
・同国開発技術省によると、上記を含めたネットゼロ経済(脱炭素化に基づく経済推進)達成のための支援や高失業率地域への新規投資に対する法人税50%減額等、総額100億ドル(約1兆5,700億円)を超える様々な支援プロジェクトが進行中。
● スペイン
・2020年に、新規EVや電池工場建設誘致のため総額37億ユーロ(約6,220億円)の支援を決定。
・上記支援政策の下、チェリーは同国東端バルセロナの日産旧工場跡地に現地パートナーとの合弁で新規EV工場建設を決定し、今年第4四半期に生産開始。
・また、再生可能エネルギー企業の遠景科技(エンビジョングループ)も、総額25億ユーロ(約4,200億円)の新規EV用電池工場建設に当たって、既に3億ユーロ(約504億円)の補助金を受領済み。
・CATLも、ステランティスとの合弁でスペインに電池工場を建設することを検討中。
● イタリア
・自動車産業支援のため、2025~2030年の間に60億ユーロ(約1兆80億円)の支援拠出を決定。
・これに基づき、チェリーは第二工場、また東風汽車(1969年設立)は第一工場を建設する計画について伊政府と交渉中。
なお、SAICは今年7月、2023年に明らかにした年5万台のEV生産工場の建設地を明らかにするとしているが、年20万台生産規模の第二工場建設計画含めて、候補地としてドイツ、イタリア、スペイン、ハンガリーが挙げられている。
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