9月11日付
『CNBCニュース』は、ウクライナ戦争勃発後1年半余りも経過した現在、これからロシア撤退を果たそうとする西側企業にとって、ロシアに留まる以上に困難が待ち受けていると報じた。
オランダのビール醸造大手のハイネケンは8月25日、ロシア撤退意向を表明後1年余り経過後、漸く事業撤退を完了した。
しかし、撤退計画進行に当たって、ロシア人従業員1,800人の雇用確保交渉に難航したこともあって、実際には事業継承先のロシア複合企業アーネスト・グループ(1971年設立、化粧品・日用雑貨・製缶業大手)に1ユーロ(約157円)の名目上の価格で売却せざるを得なかった。...
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9月11日付
『CNBCニュース』は、ウクライナ戦争勃発後1年半余りも経過した現在、これからロシア撤退を果たそうとする西側企業にとって、ロシアに留まる以上に困難が待ち受けていると報じた。
オランダのビール醸造大手のハイネケンは8月25日、ロシア撤退意向を表明後1年余り経過後、漸く事業撤退を完了した。
しかし、撤退計画進行に当たって、ロシア人従業員1,800人の雇用確保交渉に難航したこともあって、実際には事業継承先のロシア複合企業アーネスト・グループ(1971年設立、化粧品・日用雑貨・製缶業大手)に1ユーロ(約157円)の名目上の価格で売却せざるを得なかった。
この結果、同社は3億ユーロもの損失を計上することになっている。
また、今年の7月に撤退を完了させた、デンマークのビール醸造会社カールスバーグ(1799年設立)とフランスの食品大手ダノン(1919年設立、スペイン発祥)の場合は、事業売却を画策していたにも拘らず、結果的にはウラジーミル・プーチン大統領の側近に強制的に接収されてしまっている。
かかる動きから、英国の経営コンサルタント会社コントロール・リスクス(1975年設立)幹部であり元『モスクワ・タイムズ』編集長だったナビ・アブダラーエフ氏は先月、“西側企業は、対ロシア制裁や金融危機の中、ロシア撤退を希望しているが、時が経つに連れてロシアに居残るより厳しい局面に曝されるようになっている”と『CNBCニュース』のインタビューに答えた。
同氏は更に、“その結果、幾つかの西側企業がロシア残留を決めている”とした上で、“何故なら、ロシア政府が次々に法律を変更して、残った資産の略奪等、撤退企業に無理難題を押し付けようとしているだけでなく、雇用されていたロシア人を犯罪者として訴追するリスクも高まっているからである”とも言及している。
また、英国の国際関係シンクタンク、国際戦略研究所(1958年設立)経済制裁問題上級研究員のマリア・シャギーナ氏は、“ロシア政府によるカールスバーグ・ダノンへの仕打ちは、今後ロシア撤退をしようとしている西側企業に対する強烈な警告になっているはずだ”と分析している。
かかる背景もあってか、依然ロシアには、英国の一般消費財メーカー大手のユニリーバ(1930年設立)、スイスの世界最大食品・飲料メーカーのネスレ(1866年設立)、米国の世界最大煙草メーカーのフィリップモリス(1900年設立)、イタリアの銀行ウニクレディト(1998年設立)、スイス金融グループのライファイゼン(1899年設立)、米食品・スナック・飲料メーカーのペプシコ(1965年設立)等が居残っている。
シャギーナ氏によれば、まだ500社余りの西側企業がロシアに留まっているという。
ただ、止むを得ずロシアに残留している企業は、ロシア政府から追加納税を強いられるだけでなく、西側諸国からの非難に曝されることになる。
例えばウクライナ政府は、“ユニリーバやその他ロシア残留企業は、ロシアによるウクライナ戦争の支持者だ”と酷評している。
なお、シャギーナ氏は『CNBCニュース』の取材に対して、“対イラン、対北朝鮮制裁と違って、対ロシア制裁は抜け穴があり、一般のロシア市民向けやその他人道支援関連ビジネスの制裁は除外されているため、ロシア残留西側企業はこの分野での事業継続は可能である”とコメントしている。
一方、米コンサルティング会社テネオ(2011年設立)中央・東欧州地域担当のアンドリアス・ターサ顧問は、“国際的対ロシア制裁及び数百社の西側企業のロシア撤退に伴い、ロシア経済は段々疲弊することになろう”とし、“時が経てば経つ程、ロシア経済は先細りとなり、益々中国頼みとなろう”と分析している。
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