豪州は近年、中国との対立姿勢を鮮明にしてきたが、昨年5月に9年振りに返り咲いた労働党政権は、昨年末に中豪国交樹立50周年を迎えるに当たって、外相を政府要人として4年振りに中国に派遣し、関係修復に動き出そうとしている。そうした中、保守党政権時代に成立した、中国牽制のための米・英国との3ヵ国安全保障枠組み(AUKUS、2021年9月設立)に基づき、約束通り米原子力潜水艦購入は行うものの、米側期待に反して、台湾有事の際に米側との共同軍事作戦参加には慎重な姿勢を示している。
3月20日付豪州
『news.com.au』は、「米海軍省元トップ、AUKUSの下で台湾有事の際の豪州側支援に期待」と題して、中国の影響力拡大に対抗するために組織されたAUKUSの下、豪州側が米国提供の原子力潜水艦を駆使して、台湾有事の際に米側の支援に回ることを期待していると述べたと報じている。
これに対して、同日付米国『AP通信』は、「豪州、台湾有事の際に米軍に与するかは未定」として、豪州国防トップが、AUKUSの下で米原子力潜水艦の供与を受けたからと言って、台湾有事の際に米軍が指揮する軍事作戦に参加するかどうかは約束できないと慎重な姿勢とみせたと報じている。...
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3月20日付豪州
『news.com.au』は、「米海軍省元トップ、AUKUSの下で台湾有事の際の豪州側支援に期待」と題して、中国の影響力拡大に対抗するために組織されたAUKUSの下、豪州側が米国提供の原子力潜水艦を駆使して、台湾有事の際に米側の支援に回ることを期待していると述べたと報じている。
これに対して、同日付米国『AP通信』は、「豪州、台湾有事の際に米軍に与するかは未定」として、豪州国防トップが、AUKUSの下で米原子力潜水艦の供与を受けたからと言って、台湾有事の際に米軍が指揮する軍事作戦に参加するかどうかは約束できないと慎重な姿勢とみせたと報じている。
まず、米海軍省元長官のリチャード・スペンサー氏(64歳、2017~2019年在任)が3月20日、キャンベラ(豪州首都)在のナショナルプレスクラブでの公開インタビューで、米側は、AUKUSに基づき、米製原子力潜水艦を豪州に提供する以上、万が一台湾有事となった場合には、米軍支援のために同原潜を派遣することを期待している旨述べた。
ただ、同氏は、中国が台湾に軍事侵攻した際、米軍が参戦するということを確約するものではないが、もし米軍が軍事作戦を起こすことになった場合に豪州の支援を期待するものだと付言している。
このインタビューの1週間前、アンソニー・アルバニージー首相(60歳、2022年就任)が米・英国首脳との会談に臨んで、保守党政権時代に設立されたAUKUSの下、予定どおり米製原潜を取得する旨再確認していた。
なお、元米陸軍省長官で現在は豪州国立大学(1946年設立)国際政治戦略学部トップのトーマス・ホワイト教授(79歳)も、豪州はAUKUSに参画している以上、米軍が中国軍と一線を交えることになった場合、米軍に与することを“約束”しているものと見做されると分析している。
一方、豪州のリチャード・マールズ国防相(55歳、2022年就任)は同日、豪州『ABC』の報道番組「インサイダーズ」(2001年放送開始)に出演して、米製原潜を取得することになるからと言って、台湾有事の際に米軍に与することを約束するものではないと明言した。
同相は、“台湾の将来について憶測でものを言うことは控えたい”とした上で、“AUKUSに基づき、2030年代初めに米製原潜の提供を受けることは確かであるが、それはあくまでインド太平洋地域における安定維持に貢献しようとするためのものである”と強調している。
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