アストラゼネカ社とオックスフォード大学が共同開発した新型コロナウイルスのワクチンは、血栓の発生リスクが他社ワクチンよりもわずかに高いことから、世界の主要な国々から敬遠されてきた。その一方で、現在、世界で最も広く、特にワクチンを供給できていない低所得国で配布されているワクチンの一つになっている。
仏メディア
『BFMTV』は、1月末までに、世界の78億人のうち少なくとも半数の人、約40億人が、新型コロナウイルスのワクチンを2回以上接種していることになるだろうと伝えている。しかし世界各地では、特にアフリカで、政治的な意思の欠如、医療資源の不足、あるいは単にワクチン不足のため、ワクチン接種に苦労している国がまだ多くあるのが現状である。こうした中、欧米や日本で敬遠されていたアストラゼネカ製の新型コロナワクチンが、世界におけるワクチン接種の要になっている。
アストラゼネカ社は2021年に、アメリカのファイザー社や中国のシノバック社と同じ割合で、25億回分の投与量を供給している。そして1月上旬、低・中所得国には約36億回分の投与が行われた。このうち、ほぼ半数がアストラゼネカ社製のワクチンだという。
-70℃で保存することが求められるファイザー社やモデルナ社のメッセンジャーRNAのワクチンに比べて、保存が容易なアストラゼネカ製のワクチンは、特に最貧国には原価で販売され、使わなくなった国からも寄贈されるなど、批判はあるものの、世界各国に幅広くワクチンを提供するという目的を完璧に果たしていると言える。欧州連合(EU)などは、アストラゼネカとの契約により、昨年注文された医薬品を今後数カ月間にわたり受け取り続け、ワクチンを待っている国々に再配送することになっている。
なお、インドのニュースサイト『レパブリックワールド』によると、日本も先月末に、アストラゼネカ製ワクチン70万回分をイランに追加送付することを発表している。林外務大臣は記者会見で、COVAXを通じてワクチンを届けると発表した。この追加供与で日本からイランへのワクチン供与は3600万回分となった。その大半がアストラゼネカ製のものである。さらに、林外務大臣は、日本はこれまでに世界23カ国にコロナワクチンを届けてきたとも明らかにした。
米紙『ウォールストリート・ジャーナル』電子版によると、医薬品へのアクセスを推進している健康や人権団体のコンソーシアム「ピープルズ・ワクチン・アライアンス」に助言する世界保健政策の専門家、モガ・カマルヤンニ氏は「アストラゼネカのワクチンは救世主だった」と述べている。
アストラゼネカ社は当初から、世界中の製造パートナーシップを通じて、自社のワクチンへの公平なアクセスを約束していた。当初は、今年中に30億回分を供給し、パンデミックが続く限り、利益なしで販売することを目標としていた。アストラゼネカの最高経営責任者であるパスカル・ソリオ氏は昨年11月、「私たちがもたらした影響について会社全体で非常に誇りに思っている」と語っている。
アストラゼネカは昨年、ファイザーやモデルナと比べれば微々たるものではあるものの、新型コロナウイルスのワクチンでは、第3四半期に初めて利益を上げたと発表した。昨年9月までにこのワクチンで22億ドルの収益を計上した同社は、一部の購入者には利益を生み出す価格で販売し始めているが、低所得国にはまだ原価で販売している。
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