インドでは任期満了に伴う大統領選の投票が実施され、20日に開票が行われたが、与党であるインド人民党等が推薦した候補である、前ビハール州知事のラム・ナート・コビンド氏が当選した。コビンド氏は71歳、任期は5年である。
プラナブ・ムカジー現大統領の任期が今月の25日で切れるため、その後任を選ぶ選挙であったが、17日に上下両院の国会議員と州議会議員約5,000人による間接選挙で投票が行われた。選挙管理委員会は20日に開票結果を公表し、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党などが推薦したラム・ナート・コビンド氏が、65.65%の票を獲得して第14代大統領に選出された。各国メディアが伝えている。
コビンド氏は北部のウッタル・プラデーシュ州出身の弁護士で、これまで上院議員を2期経験し、2015年にビハール州知事に就任した。...
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プラナブ・ムカジー現大統領の任期が今月の25日で切れるため、その後任を選ぶ選挙であったが、17日に上下両院の国会議員と州議会議員約5,000人による間接選挙で投票が行われた。選挙管理委員会は20日に開票結果を公表し、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党などが推薦したラム・ナート・コビンド氏が、65.65%の票を獲得して第14代大統領に選出された。各国メディアが伝えている。
コビンド氏は北部のウッタル・プラデーシュ州出身の弁護士で、これまで上院議員を2期経験し、2015年にビハール州知事に就任した。13億のインドの人口の内、およそ2億人いると言われる、カースト最底辺層の被差別カースト(ダリット)出身であり、1997-2002年に務めたナラヤナン元大統領以来2人目となる。今回は野党の国民会議派も、ダリット出身の元下院議長のクマール氏を擁立し、「ダリット選挙」と言われた。
首相が政治の実権を握るインドでは、大統領は国家統合の象徴的な存在で、その役割は儀礼的なものが多い。但し、議会の法案を再考するよう差し戻すことができ、また総選挙で過半数に達した政党が出ない場合には、特定の政党に組閣を促すなどの指導的役割を果たすため、政治的に一定の影響力を持っている。
ムカジー現大統領は、2014年まで政権の座にあった国民会議派の推薦で5年前に就任していたので、大統領と首相の出身政党が異なる、いわゆるねじれの状況にあったが、今回の選挙でこれが解消された。ダリットに対する重要なメッセージを送ったことにもなり、モディ首相にとっては、政権基盤が安定することになるだろう。
モディ首相は、自身のツイッターで、コビンド氏の当選に祝意を表した。コビンド氏は、大統領に選出された報告を受け、「感動的な瞬間だ。」とその気持ちを表現した。「デリーでは朝から雨が降っていたが、故郷の村の家での子供時代を思い出した。そこでは雨が降った時、兄弟姉妹が皆、雨漏りのする天井から落ちる雨水を避けるため、壁の近くで身を寄せ合ったものだった。今日でさえも、この国は非常に多くの『ラム・ナート・コビンド』が、日雇い労働者や農業従事者として、次の食事のために汗を流して働いている。私は大統領官邸にあなたたちの代表として行くのだ、と彼らに言いたい。」と語った。
コビンド氏の地元のウッタル・プラデーシュ州の町や村では、人々が当選を祝っていた。ダリットは、インドの最も貧しいコミュニティであり、現在ではカーストによる差別は憲法で禁じられ、法的な保護を受けているにも係わらず、差別は根強く残っており、ダリット出身者は教育他の機会を日常的に閉ざされている。
コビンド氏は、自らの大統領就任について、インドの民主主義の力強さを強調するものであるとして、「私は大統領の座につくことを考えたこともないし、それを狙ったこともない。私はインド憲法を守るために働く。」と語った。
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