国連は7日、核兵器禁止条約を賛成多数で採択した。第2次世界大戦後、核兵器を違法とする条約が国連で採択されたのは初めてである。条約は9月20日から各国の署名が始まり、50カ国の批准を得てから90日後に発効する。条約の交渉会議には129カ国が参加し、122カ国が賛成した。但し、核保有国や、米国の「核の傘」に入っている日本などの同盟国が参加しておらず、今後どのように実際の非核化や軍縮、不拡散等の行動へと結び付けていくかが大きな課題となる。
条約は前文と20条の条文からなり、核兵器の開発、実験、生産や実際の配備、使用といった行為だけでなく、核の抑止力そのものである、核兵器をちらつかせて使用すると「威嚇」することも違法としており、核を全面的に禁止する。条約の目的は、核兵器をすぐに廃棄するのではなく、化学兵器や地雷と同様に「違法」化して非難の対象とすることにある。前文には「被爆者(ヒバクシャ)の受け入れ難い苦しみと損害に留意する。」「被爆者(ヒバクシャ)による目標達成への努力を認識」と明記されており、広島・長崎の被爆者の強い訴えが盛り込まれた。
交渉には193カ国の国連加盟国の内、米国の「核の傘」に入らない非核保有国などの129カ国が参加した。核保有国である米露英仏中の5カ国、実質的核保有国とされるイスラエル、パキスタン、インド、北朝鮮、そして米国の「核の傘」に依存している日本、韓国、ドイツ、イタリア、ポーランド、カナダの各国は参加しておらず、非核保有国との分断が浮き彫りになった。NATO(北大西洋条約機構)からはオランダだけが参加している。採決では賛成が122カ国、反対はオランダで、シンガポールが棄権した。
交渉に参加した各国は、本条約の採択を通じ、国際世論の高まりにより核保有国等が条約に参加する圧力となることを期待しており、今後の加盟も想定して、実戦配備から外し核の廃棄計画を示した保有国の加盟に関する手続、条約締結国の会議に未締結国がオブザーバーとして参加できる規定も条約に盛り込んだ。
国連の核兵器禁止条約・交渉会議の議長である、コスタリカのエレイン・ホワイト(Elayne Whyte Gomez)大使は、「我々は今日、非常に感動している。」として、「現在そして未来の世代の夢に応えている。核兵器のない世界という夢に向かって進んでいく責任を果たしている。」と歓喜に満ちていた。採択後、南アフリカの代表から「今日ここにいる
『ヒバクシャ』に賛辞を送りたい。」と日本の被爆者が条約制定に当たり大きな役割を果たしたと賞賛の声が寄せられた。
NATOから唯一会議に参加したが反対の意思を表明した、オランダのベルト・クーンデルス(Bert Koenders)外相は、オランダは核兵器の禁止は支持するが、実際の解決策そのものに関する問題を懸念していると実効性に疑問を表した。
米国のニッキー・ヘイリー(Nikki Hayley)国連大使は禁止条約の内容に原則賛成すると言いながらも、北朝鮮による核・ミサイル開発の脅威が高まる中、「我々は現実的である必要がある。」として、「北朝鮮は米国民を危険な状態に陥れ、そうした核兵器禁止に
『喝采』しているだろう。」と述べた。
唯一の被爆国として、大きな役割を果たすことを期待された日本は、米国の圧力を受け、3月の会議に出席して「国際社会の分断を一層深め、核兵器のない世界を遠ざける。」とコメントし、以降は欠席した。条約採択後、別所国連大使が国連内で会見し、「保有国、非保有国の信頼関係構築が大事であり、この条約はそうした姿で行われたものではない。」として「署名することはない。」と述べた。
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