カナダで拡大する中国の影響力
香港の民主化を庇護するカナダの団体「アライアンス・カナダ・香港」は5月31日、カナダの下院カナダ・中国関係特別委員会に報告書を提出し、中国による影響力拡大のための活動がカナダの広範囲に及んでいるにもかかわらず、ほとんど気づかれていないと警告した。
カナダ紙
『ナショナル・ポスト』によると、「アライアンス・カナダ・香港」代表のシェリー・ウォン氏は5月31日、下院特別委員会に対し、中国共産党が近年、外国でも世論を動かし、批判の目をそらすために広範囲に及ぶ取り組みを行っていることに対して警告した。中国の指導部は、自国の地政学的な地位を高めるために、カナダを含む外国の政治家、学者、メディア、その他の機関を支配しようとしているという。同氏によると、こうした取り組みは一般大衆にはほとんど気づかれず、中国が人権や知的財産に関する国際ルールを無視しているにもかかわらず、カナダの中国への依存度がさらに高まっていると警告している。...
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『ナショナル・ポスト』によると、「アライアンス・カナダ・香港」代表のシェリー・ウォン氏は5月31日、下院特別委員会に対し、中国共産党が近年、外国でも世論を動かし、批判の目をそらすために広範囲に及ぶ取り組みを行っていることに対して警告した。中国の指導部は、自国の地政学的な地位を高めるために、カナダを含む外国の政治家、学者、メディア、その他の機関を支配しようとしているという。同氏によると、こうした取り組みは一般大衆にはほとんど気づかれず、中国が人権や知的財産に関する国際ルールを無視しているにもかかわらず、カナダの中国への依存度がさらに高まっていると警告している。
ウォン氏は、「企業、非営利団体、学界、政治家、メディアなど、既得権益を持つ機関が中国政府を怒らせることを恐れる限り、脅し、検閲、脅迫は続くでしょう。中国は事実上、自国の権威主義を海外に輸出しているのです」と委員会に語った。
同氏によれば、中国政府に対する批判者は、さまざまな強制的な戦術によって黙らされるケースが増えているという。アライアンス・カナダ香港を設立したウォン氏は、かつて香港を支配しようとする中国の動きを批判したことで、脅迫電話を受けたことがあるという。「反体制派には安全がありません。職場でも、自宅でも、社会の中でも、そして海外のカナダでも安全ではないのです」。
また、カナダは「自国の機関、政治、社会に影響力を行使するために中国が築いたネットワークについて知識や理解が不足している」と述べ、その結果、カナダに影響を与えようとしている中国の取り組みに誰も気が付かないでいると指摘した。
「アライアンス・カナダ・香港」の報告書は、中国が海外の民主主義の国に支配力を行使している7つの主要分野について詳しく述べている。1つ目は、「一帯一路」構想に戦略的貿易インフラの相互接続を含めるなどして、カナダでの政治的影響力を確立しようとする分野だ。報告書は、バンクーバー空港近くに建設された47万平方メートルの「世界商品貿易センター」を例に挙げ、これは貿易関係の主導権を握り、戦略的利益を拡大するという中国政府のより広範な戦略に適合すると指摘している。
中国はまた、カナダの天然資源やその他の資産に巨額の投資を行うことを約束しているが、こうした取り組みによって、カナダの政治家が中国の指導力を批判する意欲が低下しているという。カナダのトルドー首相は、中国に対して軟弱な姿勢をとっていると批判されているが、これはカナダが農産物などの輸出で中国に大きく依存していることに起因していると言われている。
報告書は、中国が影響力を持つ2つ目の分野として、「海外エリートの囲い込み」を挙げている。この取り組みは、「関わる機会を作り、政策決定に影響を与え、共産党国家にとって有利な世論を形成する」ことを目的としているという。
中国共産党は、いわゆる「ソフトパワー」戦術に年間約100億ドル(約1兆円)を費やし、学術的手段やその他の方法で世論を揺るがそうとしている。北京のコンサルティング会社「Development Reimagined」 によると、中国共産党は過去 15 年間で約 500 の孔子学院を海外の大学キャンパスに設置し、中国語や歴史などの授業を通じて中国文化を広めてきた。中国はまた、学界、特に研究開発の分野でその影響力を拡大しており、多くの場合、「学者や研究者を長期的な支配的関係に閉じ込めるような資金提供」を通してその影響力を拡大している、と報告書は述べている。カナダのあらゆるレベルの政治家は、このような取り組みを徐々に認識するようになってきたが、「不適切な連邦規制」がこのような資金提供の継続を許しているという。
カナダ紙『グローブ・アンド・メール』によると、報告書では、中国の海外に対する影響力の調整を行う機関「統一戦線工作部」が、中国系カナダ人や政治家、学者、ビジネスリーダーを威嚇し、協力させるために、様々な組織の精巧なネットワークを指導、管理している様子が詳しく紹介されている。「統一戦線は、カナダでNGOや市民社会などの仮装グループを作り、活用している。これらの組織は、地域のための合法的な活動組織を装いながら、香港の国家安全保障法を称賛したり、北京オリンピックへの反対意見を非難したりするなど、親中的、共産党寄りのメッセージを積極的に広めている」という。また、統一戦線傘下の組織により嫌がらせや脅迫が行われるだけでなく、WeChatや中国語のメディアを通して、ウイグル人、チベット人、台湾人、民主主義を支持する香港人、中国本土の反体制派に関する誤情報が流されているという。
ウォン氏は委員会に対し、カナダ連邦政府が中国の反発を恐れることなく、米国やオーストラリアが採用しているような影響力を制限する措置を取らない限り、こうした影響力の行使は続くだろうと述べた。そして、オーストラリアのように、外国の国家のために活動する人や組織に外国代理人として登録することを義務付ける法律を作るべきだと主張した。そして、外国からの影響に関する政府機関を設立し、法律の調査と施行、公的調査の開始、外国からの影響に関するデータの収集などの権限を与えるべきだと提言した。
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カナダ公安相、国内のオピオイド危機は中国からの流入が主原因と発言
カナダのビル・ブレア公安相は議会特別委員会で25日、中国は合成オピオイドであるフェンタニルの主な供給源の一つであり、カナダ国内での過剰摂取の問題において重要な役割を果たしていると語った。
カナダ日刊紙
『ナショナル・ポスト』によると、ブレア公安相は冒頭の演説で、カナダにおける中国の対外干渉の試みが増えていることや、現在のオピオイド危機における中国の役割について繰り返し警告を発した。
「外国からの干渉は最重要課題の一つですが、それが唯一の問題ではありません。中国がフェンタニルだけでなく、この非常に強力で致死性の高い合成オピオイドを作るために使用される前駆体化学物質の主要な供給国の一つであることは周知の事実です。...
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カナダ日刊紙
『ナショナル・ポスト』によると、ブレア公安相は冒頭の演説で、カナダにおける中国の対外干渉の試みが増えていることや、現在のオピオイド危機における中国の役割について繰り返し警告を発した。
「外国からの干渉は最重要課題の一つですが、それが唯一の問題ではありません。中国がフェンタニルだけでなく、この非常に強力で致死性の高い合成オピオイドを作るために使用される前駆体化学物質の主要な供給国の一つであることは周知の事実です。」と述べ「過去4年間で カナダ国境サービス庁は335件の押収を行い 合計42. 2キログラム以上を押収しました。そのうち129件は 中国を供給国としています。」と説明した。
米『エポックタイムズ』によると、ブレア公安相は、カナダ・中国関係常任委員会の前で、諜報機関トップや安全保障関係者とともに、中国政権によるカナダへの対外干渉や潜入が増加していることについて証言し、その一つがフェンタニルの密輸であることを問題視した。
カナダ政府の統計によると、2016年1月から2020年6月までの間に、17,000人以上のカナダ人がオピオイドの過剰摂取で死亡した。2020年1月から2020年6月までの間に、死亡者の75%はフェンタニルが関係していた。
ブレア公安相は、カナダ連邦警察(RCMP)がカナダ国境サービス庁(CBSA)およびカナダ郵便と共に「組織犯罪共同対策センター」を設立し、国内への麻薬の流入を追跡し阻止するための措置を講じていると述べた。
中国からのフェンタニル流入は、カナダだけでなく米国でも深刻な被害をもたらしている。
香港メディア『アジアタイムズ』は昨年12月の記事で、2017年には、米国で28,000人がフェンタニルの過剰摂取で死亡しており、そのほとんどが中国から流入したものであったと伝えている。
中国の習近平国家主席は2018年に、当時のトランプ大統領との会談で、すべてのフェンタニル様物質を制限することを約束した。 トランプはこれを「大変革をもたらす(ゲームチェンジャー)」と宣言したが、その後もオピオイドの流入が止まることはなかった。
2019年には、37,000人を超えるアメリカ人がフェンタニルの過剰摂取で死亡した。状況は新型コロナウイルスによるロックダウン措置のために悪化しており、ジョージア州では、フェンタニルによる死亡は2020年3月以降60%増加した。そして死亡者の約半数は若者となっている。
同メディアは、国家主席の一声で法律を作り、監視カメラであらゆる人を確実に取り締まることの出来る中国が、フェンタニル製造者や密輸人に手を出さないのは、敵を弱体化させかつ稼ぐことができるというメリットがあるからだろうと伝えている。
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