【Globali】
EU、ロシアのガス禁輸措置には消極的(2022/06/01)
欧州連合(EU)首脳陣は今週頭、年末までにロシアの石油の90%を禁輸することを承認した。しかし、インフレが高騰する中、ロシア産ガスの制裁を検討すること対しては消極的な姿勢を見せている。
仏
『ゾーヌ・ブルス』によると、世界最大の天然ガス企業であるロシアのガスプロムは31日、ロシア側が要求しているルーブルでの支払いを拒否しているいくつかの「非友好的」な国への供給を停止すると発表した。ガスプロムは、オランダのガス取引業者ガステラ(GasTerra)へのガス供給を31日に完全に停止した。また、ドイツとデンマークのガス企業からのルーブルでの支払いが滞ったため、6月1日からガス供給を停止するとも発表した。...
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『ゾーヌ・ブルス』によると、世界最大の天然ガス企業であるロシアのガスプロムは31日、ロシア側が要求しているルーブルでの支払いを拒否しているいくつかの「非友好的」な国への供給を停止すると発表した。ガスプロムは、オランダのガス取引業者ガステラ(GasTerra)へのガス供給を31日に完全に停止した。また、ドイツとデンマークのガス企業からのルーブルでの支払いが滞ったため、6月1日からガス供給を停止するとも発表した。オランダ政府に代わってガスの売買を行うガステラは、10月までガスプロムから受け取る見込みであった20億立方メートル(bcm)のガスについて、他の供給源とすでに契約済みであることを明らかにした。ロシア企業によるこの動きは、ロシアの石油輸入を年末までに90%削減するという、EUによる最も厳しい対露制裁に対する最新の報復であり、ヨーロッパでのガス価格を上昇させるものである。
こうした中、仏『レゼコー』は、専門家達は今回のロシア産石油の禁輸措置の市場に対する影響に疑問を持ち始めていると報じている。ロシアは、欧州が買わなくなった石油を、アジアを中心とした他の場所で安く売らなければならなくなる。しかし、原油価格の上昇を背景に、財政的なダメージは欧州が望むほど大きくはないかもしれないというのだ。
それゆえ、ロシアによるガス供給削減の動きが出ている状況下においても、複数のEU加盟国は少なくとも当面は、新たな追加制裁としてガスの禁輸は適切ではないという考えを示している。ベルギーのデ・クロー首相は、「この大きな一歩を踏み出した後、今は一息つく」必要性があると指摘しており、オーストリアのネーハマー首相は、「ガス禁輸は次の制裁措置には含まれないだろう」と述べている。ドイツのショルツ首相も4月、シュピーゲル紙に対し、「ドイツの労働者に対して特別な責任を感じている」と語っていた。ユーロ圏のインフレ率は5月に過去最高を更新し、1年間で8.1%となっている。これ以上家計の負担を増やすことは難しいと考えられている。さらに、ガスの禁輸は、複雑な技術的問題を引き起こし、ヨーロッパに大規模な不況と雇用の喪失をもたらすことも懸念されている。
なお、EUは、欧州のガスの約40%を供給しているロシアからの供給削減を懸念し、冬を前にガスの貯蔵所の満杯を急いでいる。ガス業界団体GIEのデータによると、オランダのガス貯蔵所は約37%埋まっているという。オランダ政府は先週、欧州最大級のガス貯蔵施設であるベルハーメール施設への充填を企業に奨励するため、補助金を4億600万ユーロに増額すると発表した。デンマークのエネルギー大臣が議会に提出した書簡によると、デンマークのガス備蓄は現在55%埋まっており、ドイツからの供給が停止してもデンマークとスウェーデンのすべての顧客に5ヶ月間ガスを供給することができるという。
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