イタリアは2019年、中国との連携強化による経済活性化を目論んで、欧州域内国で初めて「一帯一路経済圏構想(BRI、注1後記)」参画を決めた。しかし、4年経って非BRI国のフランス等に対中貿易で後れをとっている現実に直面し、現政権が前政権の過ちだったと公言し、いよいよ同構想からの撤退準備に入ろうとしている。
7月31日付米
『ザ・クオーツ』オンラインニュース(2012年設立の国際ニュース専門サイト)、英国
『BBCニュース』等は、イタリア政府がいよいよ中国主導のBRIから離脱する準備に入ろうとしていると報じた。
イタリア政府はこの程、中国主導で進められているBRIに参画したことを大いに後悔している旨表明している。
同BRIは、2代前のジュゼッペ・コンテ首相(現58歳、2018~2021年在任)が中国との貿易拡大を期待して、欧州域内国として初めてBRI参画を決めたものである。...
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7月31日付米
『ザ・クオーツ』オンラインニュース(2012年設立の国際ニュース専門サイト)、英国
『BBCニュース』等は、イタリア政府がいよいよ中国主導のBRIから離脱する準備に入ろうとしていると報じた。
イタリア政府はこの程、中国主導で進められているBRIに参画したことを大いに後悔している旨表明している。
同BRIは、2代前のジュゼッペ・コンテ首相(現58歳、2018~2021年在任)が中国との貿易拡大を期待して、欧州域内国として初めてBRI参画を決めたものである。
しかし、当初期待ほど貿易額は伸びず、特に、BRI不参加のフランスが、民間航空機の大型契約(注2後記)等を通じて対中貿易を飛躍的に伸ばしており、2022年に政権を奪取したジョルジャ・メローニ現首相(46歳)は、2022年9月の総選挙に臨むに当たって、BRIへの参画は“大きな過ちだ”として離脱することを公約に上げていた。
そしてこの程新たに、グイード・クロセット国防相(59歳、2022年就任)が7月30日、『コリエーレ・デラ・セラ』紙(1876年創刊のイタリア最古の全国紙)のインタビューに答えて、“過去の政権が性急でとてもひどい行いをした”として、BRI参画の政策を厳しく非難したものである。
同国防相は、“BRI参画によってむしろ二重にマイナスの結果がもたらされている”とし、“最も愚かな例は、BRI不参加のフランスが、中国側と数百億ドルにも上る航空機の大型契約を締結する一方、イタリアの対中貿易は実質的に伸びていない”と不満を表明した。
ただ同相は、“中国との関係を損ねることなく、如何にBRI離脱を認めさせるかに苦心することになる”とも吐露している。
英国オックスフォード大学(1167年設立の国立大)中国研究センターのジョージ・マグナス経済学教授は、“今回のケースはオレンジかレモンかの古いたとえ話(いずれも柑橘類の果物)のようなものだ”とし、“イタリアは中国向けにより多くのオレンジを輸出したが、これに対して中国はイタリア向けにその倍以上のレモンを輸出することができた”と解説している。
なお、米シンクタンク、ピュー研究所(2004年設立)がBRI参画決定後翌年の2020年に欧州二十数ヵ国を調査したところ、英国・フランスに次いで3番目に中国人居住者が多いイタリアが唯一、米国よりも中国を重視するとの結果となっていたという。
しかし、BRI参画決定から4年経った現在、現政権としては、今年12月にもBRIからの正式離脱を目指すとみられている。
(注1)BRI:中国と中央アジア・中東・欧州・アフリカにかけての広域経済圏の構想・計画・宣伝などの総称。習近平総書記が2013年9月、「シルクロード経済ベルト」構築を提案したことに始まり、翌2014年11月に北京市で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で習総書記が正式に提唱。中国からユーラシア大陸を経由して欧州につながる陸路の「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ海路の「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画。
(注2)民間航空機の大型契約:巨大航空機メーカーのエアバス(1970年設立の仏・独合弁事業)が2022年7月、中国三大航空会社(中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空)と締結した契約で、計292機、総額372億5700万ドル(約5兆2160億円)。
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