G20貿易問題が焦点に(7月17日)
日本から麻生副総理兼総務省、日銀・黒田総裁が出席予定のG20は今月アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれる。
米国と中国の間では貿易摩擦が激化、米国・トランプ政権は日本やEUから輸入の自動車・自動車部品も関税の引き上げを検討している。
こうしたことから今回のG20は貿易問題が焦点になる見通しで日本は自由貿易の重要性を改めて訴える。
米国の利上げが引き金の新興国通貨の下落、仮想通貨の規制のあり方などが意見交換されるものとみられる。
日本経済への影響(7月15日)
(米中貿易戦争は膠着状態)
米国・トランプ政権は22兆円相当の追加関税リストを公表し、正式に発動されれば中国からの輸入品のほぼ半分に関税が上乗せされることになる。中国は「理性を失った行為だ」としてこれを厳しく非難し、米中貿易戦争の先行きはますます不透明となってきている。そんな中、トランプ大統領が問題視する中国の巨額な対米黒字が1337億ドル(約15兆円)に達したというニュースが飛びこんできた。...
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(米中貿易戦争は膠着状態)
米国・トランプ政権は22兆円相当の追加関税リストを公表し、正式に発動されれば中国からの輸入品のほぼ半分に関税が上乗せされることになる。中国は「理性を失った行為だ」としてこれを厳しく非難し、米中貿易戦争の先行きはますます不透明となってきている。そんな中、トランプ大統領が問題視する中国の巨額な対米黒字が1337億ドル(約15兆円)に達したというニュースが飛びこんできた。これは前年同月比でみると14%増という状況で、好景気の米国による輸入が中国からの輸出を上回るペースで進んでいるためにこうした結果となったと分析されている。これ以上の事態悪化を避けるため、対中融和派のムニューシン米国財務長官が「中国側が構造的な変化を起こそうと真剣に努力するならば、米国はいつでも議論する用意ができている」と事態の鎮静化に向けて動き出した。ムニューシン長官は、中国・リウホー副首相との間で、米中貿易戦争の妥協点を模索し、5月には両国の摩擦は一時的に緩和されていた。その後、USTRライトハイザー代表など、対中強硬派の意向が政権内部でより強く反映されるようになり、現在に至っている。中国側は「中米貿易戦争が今後、どうなるかについては全て米国側の態度にかかっている」として米側の行動を静観する構えを見せている。
(トランプ大統領の強硬姿勢の背景)
今回の世界貿易戦争ではトランプ大統領は、悪役の役回りを引き受けている。常識はずれで予測不能、何をしでかすかわからない大統領とメディアは大方、トランプ大統領に批判的スタンスである。ただ違った角度から見ると、トランプ大統領がきわめて現実的かつ合理的な判断を行っているようにも見える。今回の米中貿易摩擦も、トランプ大統領側が一方的に仕掛けたかのような話になっているが、その根底にあるのは2020年度までに日本円にして107兆円を突破すると言われている米国が持つ巨額な財政赤字の存在がある。拡大する財政赤字の穴埋めにこれまで多額の米国債が発行され続けてきたということや貿易不均衡を拡大していく経済構造もトランプ大統領の持っている危機感につながっている。ある意味ではトランプ大統領の行動は国の不正常な状況を正すという真っ当なものに見える。もちろんこれらの行動の前提となっているのはあと3か月に迫まる中間選挙があることは間違いない。有権者の注目を集めるための劇場型の政権運営という要素もそこにはある。大局的に見れば、米国はしばらく理想主義と決別し、現実的に自国の借金体質を改善する道を選んだということができるのではないか。
(米国輸入車関税措置・日本に矛先が向く日も近い)
日本に目を移そう。世界貿易戦争において日本政府にとっての一番の関心事は、トランプ政権が検討する輸入車・部品の関税上乗せ措置である。これを実施するかどうかについての調査を、米国は今月中に終える見通しとなっている。米国商務省は輸入車関税措置にからむ公聴会を19日にも開催すると発表し、この公聴会にEUや日本政府の代表者や経団連、企業関係者らが出席して意見を述べることになっている。トランプ大統領は、25日にもEUと貿易協議を始めることを明らかにしているが、この協議が不調に終われば、EUから輸入される自動車に追加関税を課すという構えを示している。輸入自動車関税の問題は今後、日本に矛先が向いてくる可能性が非常に高い。仮に米国が、すべての輸入自動車関税を25%に引き上げた場合、日本のGDP成長率は0.5から0.8%押し下げられるとみられる。
(日本のとるべき打ち手は何か)
後手に回ることの多い日本としては、例えばTPP11やRCEPや日EU・EPAなど日本が絡む様々な国際経済協定をうまく運用、活用し、米国への輸出なしでもやっていけるような体制づくりを早急に準備していくことが必要となっている。それと同時に行うべきことは、いつでもトランプ大統領とのディールが可能な手持ちのカードをいくつか用意しておくということだ。トランプ大統領が今後、日本に求めてくる可能性がある項目は、日米FTAの開催への参加、為替介入、防衛備品の購入、農業分野(コメや牛肉等)でのより一層の市場開放、対イラン制裁での同調、カジノ政策の推進、北朝鮮問題での経済援助などであり、これらのうちのいくつかと引き換えに自動車輸出に対する追加関税措置を緩めるということは可能性としてはゼロではない。日本としてはリスクが生じることは承知の上で、リスクを最小にしていく選択をするしかないという状況も覚悟しておく必要もある。
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トランプ大統領・EUと協議・輸入車に追加関税も(7月13日)
ヨーロッパを訪問している米国・トランプ大統領は、貿易を巡る対立が続くEUと貿易協議を始めることを明らかにした。
トランプ大統領は「EUが誠実な姿勢で交渉しないなら輸入される自動車に何らかの措置をとる」と述べ、協議が不調に終わればEUから輸入される自動車に追加関税を課す構えを示した。
トランプ政権は、輸入車や部品などに関税を上乗せするか検討を進めており、今月中にも調査を終える見通し。
輸入車への関税が実施されれば日本やドイツなどに深刻な打撃を与えかねず、EUとの協議の行方が注目される。
米中貿易で激しく対立…日系企業影響への懸念広がる(7月12日)
米国と中国が互いの輸入品に高い関税をかけるなど貿易で激しく対立しているなか、米国にある日系企業にも深刻な懸念が広がっている。
中国貿易の玄関口であるロサンゼルス港では扱う貨物の15%が追加関税の対象となっている。
ジェトロが米国にある日系企業数十社に調査したところ、中国から部品などの輸入を行う製造業を中心に赤字になるなど深刻な影響を懸念する回答が相次いだという。
トランプ政権は10日、中国に対しさらに追加での関税を検討している。
世界貿易戦争(7月7日)
(米中貿易戦争が泥沼化)
トランプ大統領が知財権の侵害を理由に半導体、自動車、通信衛星など818品目、約3.8兆円相当の中国からの輸入品に25%の追加関税をかける制裁を発動した。習国家主席の肝入り政策「中国製造2025」を狙い撃ちにした格好だ。中国も同規模の報復措置を米国産の大豆や自動車などに対し行ない、WTOに米国を提訴するなど米中貿易戦争は沈静化する兆しが全く見えなくなっている。トランプ大統領は実施時期が未定だった残りの対中関税措置を2週間後に発動すると中国に対するさらなる強硬姿勢を打ち出している。...
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(米中貿易戦争が泥沼化)
トランプ大統領が知財権の侵害を理由に半導体、自動車、通信衛星など818品目、約3.8兆円相当の中国からの輸入品に25%の追加関税をかける制裁を発動した。習国家主席の肝入り政策「中国製造2025」を狙い撃ちにした格好だ。中国も同規模の報復措置を米国産の大豆や自動車などに対し行ない、WTOに米国を提訴するなど米中貿易戦争は沈静化する兆しが全く見えなくなっている。トランプ大統領は実施時期が未定だった残りの対中関税措置を2週間後に発動すると中国に対するさらなる強硬姿勢を打ち出している。米中貿易戦争の根底にあるのは技術・軍事覇権をめぐる米中の覇権争いであるため、報復の連鎖が過熱した場合、実際の戦争につながる可能性もないとはいえない。少なくともトランプ大統領が意識する11月の中間選挙までの間は米中貿易戦争が激化する可能性はかなり高いといえるだろう。
(日本企業への影響は?)
6月の世界の製造業の景況感を示す製造業購買担当者指数は景気判断の分かれ目となる50は上回っているものの、2か月連続で低下し、米中貿易戦争による先行き不透明感が影響している模様だ。シャープは米中貿易戦争のあおりを受け、株価が低迷し新株発行を断念するという事態に追い込まれた。日本にとって最も深刻なのはトランプ大統領が検討している輸入自動車と部品の関税を最大25%に引き上げる措置だろう。自動車産業を主幹産業とする日本にとってこの措置が発動された場合は大打撃となることは間違いない。この政策に対して、安倍首相は「極めて理解しがたい。受け入れることはできない」と表明した。米国で販売するほとんどの車を日本で製造しているマツダや三菱自動車だけでなく、トヨタ自動車など米国に工場を持ち自動車を生産をしている企業も、部品に対して関税がかかるため損失額は1.9兆円にも及ぶと言われている。EUは米国車にかけていた関税を引き下げるという譲歩案を米国に示し、自動車摩擦を回避する方向で動いているが、日本は既に米国車への関税を0%にしており、EUのような交渉カードがない。日米FTAを求めているトランプ政権が自動車に関税をかけない代わりに農業の非関税障壁であるとか残された農産物の規制緩和の話などを求めてくる可能性もある。米国に日本車への追加関税を課されないような対策を考えることが急がれる。
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