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米兵遺骨返還に喜びのトランプツイッター(7月27日)
米国トランプ大統領が、「米兵遺骨返還にあたり金正恩に感謝の念」をツイッターで表した。
内容は、
「米兵の遺骨がまもなく北朝鮮から米国に返還される!長年かかったが、多くの遺族にとり素晴らしいことであろう。金正恩氏に感謝します。」
というものであった。
対北朝鮮で短期的成果を得た米国(7月21日)
北朝鮮訪問を終えた米国のポンペオ国務長官は20日、安保理理事国と日韓に北朝鮮訪問についての報告会議を行った。日本からは別所国連大使、韓国からはカンギョンファ外相が出席した。ポンペオ長官は「北朝鮮の非核化に向けて安保理の国々の考えは完全に一致している。その目標達成のためには制裁の着実な実行が重要だ」「北朝鮮が非核化に向けた具体的な措置をとるまで圧力をかけ続けるべきだ」とこれまでの様子見姿勢を一変させ、会議後の記者会見においても、北朝鮮の違法な瀬取り行為を非難するなど強硬姿勢に転じた。...
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北朝鮮訪問を終えた米国のポンペオ国務長官は20日、安保理理事国と日韓に北朝鮮訪問についての報告会議を行った。日本からは別所国連大使、韓国からはカンギョンファ外相が出席した。ポンペオ長官は「北朝鮮の非核化に向けて安保理の国々の考えは完全に一致している。その目標達成のためには制裁の着実な実行が重要だ」「北朝鮮が非核化に向けた具体的な措置をとるまで圧力をかけ続けるべきだ」とこれまでの様子見姿勢を一変させ、会議後の記者会見においても、北朝鮮の違法な瀬取り行為を非難するなど強硬姿勢に転じた。ただ、ポンペオ長官は北朝鮮と米兵の遺骨50~55柱を引き渡しで合意しており、米国が対北朝鮮で6月12日以前のような強硬姿勢に戻ることはなさそうだ。11月に中間選挙を迎えるトランプ大統領にとっては北朝鮮との交渉において短期的な成果が必要とされるが、それは米兵遺骨の返還ということで達成されたのかもしれない。トランプ大統領は中間選挙で金正恩との歴史的な会談や、北朝鮮が核開発を中止したこと、拘束された米国人を解放したことなどと合わせて米兵遺骨の返還を有権者にアピールするものとみられる。
米兵遺骨返還の意味
米朝首脳会談後の記者会見でトランプ大統領が「遺骨が戻ってくる。北朝鮮側は直ぐにも作業に着手するだろう」と自慢げに語っていたことを思い出すが、トランプ大統領にとっては朝鮮戦争中に北朝鮮で行方不明になったとみられる米兵(MIA)の遺骨の返還は右派系米国人として特別な思い入れがあるように見受けられる。MIAは8000人を上回ると言われており、1996年の米朝枠組み合意を受けて、8000人のうちの5300人分の遺骨の捜索が、米朝共同で始められたが、その後の2005年、北朝鮮の核開発をめぐる対立で打ち切られたという経緯があった。ポンペオ長官はこの共同捜索を再開することで北朝鮮と合意し、北朝鮮側がすでに返還を表明している米兵50人の遺骨についてはサンプルとして2~3週間以内に米国へ送る方向で調整が進められているようだ。どのような形で誰が資金を負担するのかや、実際に米兵の骨かどうかの確認作業など遺骨返還のプロセスには手間と時間がかかるため、残りの遺骨の返還にはかなりの時間がかかりそうだ。仮に資金を一部、米国が負担する場合には北朝鮮への圧力を継続していくとしているポンペオ長官の発言との整合性も問われそうだ。
日本の対北朝鮮外交戦略は練り直しが必要
朝鮮半島の非核化に向けて当初は乗り気だったトランプ大統領だが、中間選挙を前提に戦略を考えるトランプ大統領の頭の中では北朝鮮のプライオリティが下がっているように見えなくもない。米朝首脳会談の流れに乗じて日朝首脳会談を開催し、朝鮮半島の非核化、拉致問題の解決に向けて一挙に駒を進めたかった日本にとってはハシゴを外された格好となっている。日本がこれまで通りの外交を展開した場合、国際社会の中で孤立してしまう恐れもあり、実効性のある対北朝鮮外交の戦略練り直しが求められている。
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遠ざかる第2回米朝首脳会談(7月19日)
9月に開催される国連総会の一般討論演説の登壇者リストに金正恩委員長の名前はなく、国連総会への参加を見送った模様。米国のトランプ大統領や日本の安倍首相は演説を行う予定なので、もし金正恩委員長が国連総会で参加すれば、その機会を利用して、第2回の米朝首脳会談や日朝首脳会談が行われるのではないかとの観測もあったが、どちらも実現は難しくなった。
もっとも6月12日の米朝首脳会談以降、米朝間での非核化交渉が進まなかったことや米朝間の意見の相違が目立ったこと、連絡事務所の設置は、行方不明米兵の遺骨収集といった北朝鮮に利益をもたらすかもしれない問題まで、うまくいかない現状をみれば、国連総会に金正恩委員長が参加しないという事態はある程度予想はできた。...
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9月に開催される国連総会の一般討論演説の登壇者リストに金正恩委員長の名前はなく、国連総会への参加を見送った模様。米国のトランプ大統領や日本の安倍首相は演説を行う予定なので、もし金正恩委員長が国連総会で参加すれば、その機会を利用して、第2回の米朝首脳会談や日朝首脳会談が行われるのではないかとの観測もあったが、どちらも実現は難しくなった。
もっとも6月12日の米朝首脳会談以降、米朝間での非核化交渉が進まなかったことや米朝間の意見の相違が目立ったこと、連絡事務所の設置は、行方不明米兵の遺骨収集といった北朝鮮に利益をもたらすかもしれない問題まで、うまくいかない現状をみれば、国連総会に金正恩委員長が参加しないという事態はある程度予想はできた。
2017年には「ちびのロケットマン」とすら金正恩委員長を非難していたトランプ大統領は、7月のポンペオ国務長官の訪朝で、なんら進展がなかったと米国内の非難が高まると、金正恩委員長の親書を公開し、「素晴らしい進展がなされつつある」とつぶやいていた。さらに北朝鮮で濃縮ウラン工場が稼働していることなど、北朝鮮の非核化の意思を疑わせるニュースが流れても北朝鮮を非難しないどころか、16日にはCBS放送のインタビューで、北朝鮮の非核化を「急がない」と答えている。
北朝鮮にとってみれば、米国が北朝鮮の時間稼ぎを認めてくれたようなものである。このまま2回目の米朝首脳会談を回避していけば、新たな言質をとられずにすむ状態が続きそうである。
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遺骨収集では合意するもなお遠い非核化(7月16日)
15日、北朝鮮と米国は板門店にて将官級協議を行い、朝鮮戦争時の米兵の遺骨発掘作業を再開することで、合意した。この協議で北朝鮮は朝鮮戦争の終戦宣言についても持ち出した模様だが、それについてどのような話し合いがなされたかは公表されていない。同協議は当初12日に事務レベルで開催するとされていたが、北朝鮮が欠席したもの。16日以降は事務手続きなどに関する話し合いが続行されるという。ただし遺骨の収集発掘には費用が生じる。...
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15日、北朝鮮と米国は板門店にて将官級協議を行い、朝鮮戦争時の米兵の遺骨発掘作業を再開することで、合意した。この協議で北朝鮮は朝鮮戦争の終戦宣言についても持ち出した模様だが、それについてどのような話し合いがなされたかは公表されていない。同協議は当初12日に事務レベルで開催するとされていたが、北朝鮮が欠席したもの。16日以降は事務手続きなどに関する話し合いが続行されるという。ただし遺骨の収集発掘には費用が生じる。米国は制裁を課している北朝鮮に発掘費用を支払うのであろうか。
一方で7月6-7日のポンペオ国務長官の訪朝後、「強盗的」だと批判した北朝鮮であるが、同長官が北朝鮮で未だウラン濃縮施設が稼働していることを問いただしたことに対して非難した模様。
「非核化を約束しなければ終戦宣言をしない」という米国に対し、北朝鮮は終戦を宣言して、北朝鮮の安全保障を確保することが体制の保証につながるとみなしている。新たに体制を保証する機能が確立されない限り、「体制を保証するための核」を手放すことは北朝鮮にとってますます難しくなる。米国と北朝鮮の前提条件と結果が逆になっている無限ループのような状態のまま、何も結果が出ずに時間だけが過ぎていくことになる。
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北朝鮮との関係改善を強調するトランプ大統領(7月14日)
先週、朝鮮半島の非核化に向けた具体策の協議のため、米国・ポンペオ国務長官が北朝鮮入りしたが、その際に受け取ったとみられる金正恩委員長からの親書をトランプ大統領がツイッターで公開した。この中で金委員長は非核化の具体的な言及はしていないものの、米国との対話姿勢を強調している。トランプ大統領はこの親書を評価し「(米朝関係は)大きく前進している」と北朝鮮との関係改善をアピールした。今回の訪朝の際、ポンペオ長官はトランプ大統領から金委員長へのプレゼントとして、英国人歌手・エルトンジョンの「ロケットマン」のCDを託されていたが、金委員長と会談する機会がなかったため結局CDは渡せなかった。...
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先週、朝鮮半島の非核化に向けた具体策の協議のため、米国・ポンペオ国務長官が北朝鮮入りしたが、その際に受け取ったとみられる金正恩委員長からの親書をトランプ大統領がツイッターで公開した。この中で金委員長は非核化の具体的な言及はしていないものの、米国との対話姿勢を強調している。トランプ大統領はこの親書を評価し「(米朝関係は)大きく前進している」と北朝鮮との関係改善をアピールした。今回の訪朝の際、ポンペオ長官はトランプ大統領から金委員長へのプレゼントとして、英国人歌手・エルトンジョンの「ロケットマン」のCDを託されていたが、金委員長と会談する機会がなかったため結局CDは渡せなかった。過去に金委員長を「ロケットマン」と呼んだことをジョークにして融和を演出を狙ったものとみられる。
暗雲が漂いはじめた米朝関係
こうした中、米朝間には暗雲も漂いはじめている。実は米国と北朝鮮の交渉はうまくいっているとは言い難い状況にある。ポンペオ長官の訪朝直後には、北朝鮮外務省が「米国の態度と立場は実に遺憾だ」との声明を発表し、12日に予定されていた朝鮮戦争行方不明米兵の遺骨返還をめぐる実務者協議にも北朝鮮側は一方的に欠席した。この要因としてポンペオ長官の朝鮮戦争終戦宣言に関する曖昧な態度に不満があったからとの観測もある。さらに米政府の国連代表部が国連安保理・北朝鮮制裁委員会に対して報告書を提出し、今年1月から5月末までの間、洋上でタンカーを横づけして石油精製品を積み替える「瀬取り」を北朝鮮が少なくとも89回繰り返していたことを明らかにした。瀬取りだけで北朝鮮の年間輸入量の上限を超えたものとみられ、米国は中国とロシアを念頭に輸出停止を求めている。北朝鮮が米国との融和ムードの裏側で制裁破りの密輸を続けていた事実が改めて浮き彫りとなった形だ。こうした事実を明らかにした背景にはのらりくらりと米国の要求する非核化をかわそうとする北朝鮮への米国のいらだちがあるものと推測できる。
15日の米兵遺骨返還協議が再開されるかどうかに注目
北朝鮮サイドは米国に15日の協議開催を提案し、米国側はこれに前向きな姿勢を示しているが、前回の協議を一方的にドタキャンした北朝鮮の言うことをもはや信用することはできないだろう。北朝鮮がドタキャンした場合には短気なトランプ大統領が再び軍事・経済圧力路線に戻る可能性もあるだろう。日本としても腹をくくって状況を注視していくことが求められている。
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