家康の世界地図-知られざるニッポン“開国”の夢-(12/17放送)
260年以上にわたる太平の世、江戸時代を切り開いた徳川家康。日本は海外との貿易を制限する鎖国の下で独自の国づくりを進めたが、それは家康が思い描いた日本の姿とは大きく異なっていた。今、世界で進む調査から意外な事実が浮かび上がってきた。家康は日本を世界に開くことで新しい国づくりを進めようとし、その秘策が外国人に日本のどこででも自由に売買を許す自由貿易だった。
時は大航海時代、家康が海外に強い関心をもったきっかけは関ヶ原の戦いに勝利するおよそ半年前のことであった。...
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260年以上にわたる太平の世、江戸時代を切り開いた徳川家康。日本は海外との貿易を制限する鎖国の下で独自の国づくりを進めたが、それは家康が思い描いた日本の姿とは大きく異なっていた。今、世界で進む調査から意外な事実が浮かび上がってきた。家康は日本を世界に開くことで新しい国づくりを進めようとし、その秘策が外国人に日本のどこででも自由に売買を許す自由貿易だった。
時は大航海時代、家康が海外に強い関心をもったきっかけは関ヶ原の戦いに勝利するおよそ半年前のことであった。日本に漂着した一隻のオランダ船の乗組員・英国人航海士・ウイリアムアダムスが家康に海外と貿易する利点を説明した。アダムスは貿易で世界中の品々を手に入れることで日本を豊かにすると力説し、家康は海外とのつながりを強く求めていくようになった。
京都市の国際日本文化研究センター研究員・フレデリッククレインス教授による調査によって家康が晩年の20年間に多くの国々と直接手紙でやりとりしていたことが分かってきた。アジア諸国との間で交わした書簡は42通。特に熱心だった欧州とその植民地とのやりとりは64通。合わせると13の国や地域と106通もの書簡をやり取りしていた。それまでにない多様な国々との交流は、まさに全方位外交と呼ぶべきものだった。
ところが前政権・豊臣秀吉の侵略的な外交政策によって、日本は各国から警戒心を持たれていた。そのため、家康は通常の外交文書では使われることのない「陋国」(取るに足らない国)という表現を使うことで、相手を敬い、へりくだることで海外の君主たちの警戒心を解こうと努力していた。こうしたことが功を奏し、日本に各国の使節や商人が次々と訪れるようになった。
家康は鉄砲や大砲などの武器を貿易を通じて、大量に入手していく。品々の多くは当時の国際通貨だった銀で購入していた。家康は銀を蓄積するため国内の鉱山を次々と開発した。産出量は当時、世界の3分の1を占めたともいわれる。こうして日本には欧州や東南アジアから多くの船が来るようになり、世界の富が集まるようになった。
こうした中で問題も出てきた。生糸の貿易では中国に拠点を作ったポルトガルが独占し、日本に高値で売りつけるようになり、深刻な貿易赤字を日本にもたらしていた。家康はこの危機を乗り越えようと策を巡らせ、オランダ使節と面会し、ポルトガルよりも有利な条件を与えた。その結果、長崎県平戸に毎年のように生糸を積んだオランダ船が来航するようになり、ポルトガルによる生糸の独占は解消されていった。
家康が次に目をつけた国は英国であった。英国はポルトガルやスペインに対抗するため、当時、まだ開拓されていなかった蝦夷を通り、欧州へと向かう北西航路を探索していた。家康はこの英国の思惑を利用し、蝦夷の通行権を英国に与えることで、航路の探索を後押しした。英国が新航路を発見すればそれを使って多くの品々を運んでくるようになるというもくろみだった。
家康は外国船を呼び寄せるだけでなく、日本自ら世界の海に乗り出すという前代未聞の試みも画策していた。家康は日本の船を現地に直接送り込み、直接売買することで、新たな貿易利益を手に入れようとした。安全を図るため航行の許可を得る必要があった。家康はスペイン国王に航行の許可を求め、何度も書簡を送ったが拒まれ続けた。
転機が訪れたのは1609年であった。一隻のスペイン船が日本の近海で座礁。乗っていたスペイン国王に仕える重臣の一人ビベロに日本はスペイン航路に参入する許可をもらえるよう交渉を始めたものの、ビベロは数々の厳しい条件を日本に突き付けた。ところが一部の条件を除き家康はビベロの突きつけた条件を受け入れた。この結果、スペイン本国では重要な許可書が作られていたことが明らかになった。
だが、スペインからの許可書は結局届くことなく家康は75歳でこの世を去ってしまう。世界を股にかけた貿易は見果てぬ夢に終わることになった。実はスペインからの許可書は米国大陸のアカプルコで止まっていた。
キリスト教徒の増加に脅威を感じた家康がキリスト教の禁教令を発したという情報がスペインに届き、発送が差し止められていたことがその理由であった。貿易と布教を別のものと考えた家康に対し切り離せないものとしたスペインだが、スペインが家康の禁教令に反発した格好だ。
家康の跡を継いだ2代将軍・秀忠は父の対外政策を転換していき、以後、200年、日本は鎖国の道に突き進むことになった。
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自衛隊・変貌の先に-“専守防衛”はいま~(12/10放送)
今、自衛隊が変貌しようとしている。この変化を推し進めているのが去年12月、岸田政権が閣議決定した、いわゆる安保3文書(安全保障関連3文書)の存在である。安保3文書は、日本の安全保障の指針を定めた最上位の文書「国家安全保障戦略」、防衛の目標と手段を示した「国家防衛戦略」、自衛隊の体制などを示した「防衛力整備計画」の3つから成り立つもので日本の安全保障政策を大きく転換させるものとなる。
3文書がまず強調しているのが日本を取り巻く安全保障環境の急激な変化である。...
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今、自衛隊が変貌しようとしている。この変化を推し進めているのが去年12月、岸田政権が閣議決定した、いわゆる安保3文書(安全保障関連3文書)の存在である。安保3文書は、日本の安全保障の指針を定めた最上位の文書「国家安全保障戦略」、防衛の目標と手段を示した「国家防衛戦略」、自衛隊の体制などを示した「防衛力整備計画」の3つから成り立つもので日本の安全保障政策を大きく転換させるものとなる。
3文書がまず強調しているのが日本を取り巻く安全保障環境の急激な変化である。その上で日本やその周辺での有事を防ぐため日米同盟をあらゆる分野でより緊密にし、同時に日本として今まで以上に主体的に対応できるよう防衛力を抜本的に強化するとしている。念頭にあるのが軍事的影響力を急速に拡大させる中国の存在である。
安保3文書でこれまでと大きく異なるのは、反撃能力を大きく打ち出している点である。専守防衛の下、これまで踏み込んでこなかった能力の保有に初めてかじを切った形である。相手の攻撃の拠点を破壊できる力を示すことで、抑止力を高めるのがねらいである。
反撃能力の導入は安保3文書が閣議決定される1年前から国家安全保障戦略研究会によって政府に提出されていた。国家安全保障戦略研究会メンバー・折木良一元統合幕僚長は現役時代、北朝鮮、そして中国のミサイルの能力向上を前により強い抑止力、反撃能力の導入が必要だと感じていた。
安保3文書は現場の部隊にも変化を及ぼしている。戦後、戦場で一発の銃弾も撃つことなくやってきた自衛隊は米国を支援する立場を超えて、米国と肩を並べて主体的に戦う組織への変化が要求されているという現実が合同軍事演習を通して見えてきた。
さらに戦後70年、阪神淡路大震災、東日本大震災などの災害派遣での技術が評価されてきた陸上自衛隊施設科も変貌しようとしている。ある施設科の男性隊員は中学生の頃、阪神淡路大震災の災害救助で活動する隊員たちの姿を見て自衛隊への入隊を決めた。
その施設科は今、南西諸島の最前線で敵国の上陸を阻止するためのバリケードなどの障害物を設置することを任務としている。男性隊員は、「具体的な戦い方を家族に説明するのは難しいと感じている」と語った。
自衛隊の変貌に伴い、今、その影響が身近な空港にまで及び始めている。自衛隊の基地が攻撃で破壊され使用できなくなった状況を想定し、有事の際に空港を基地の代わりとして使うための訓練が各地で広がっているのである。
更に全国規模で弾薬庫の増設も進められている。政府はおよそ10年後までに130棟の弾薬庫を新たに整備する方針を示している。反撃能力を担うミサイルも保管できる大型弾薬庫の設置場所として明らかになっているのが青森県と大分県である。大分市の中心部からおよそ10km離れた陸上自衛隊大分分屯地。ここは学校や住宅街と隣接しているが、防衛省は今ある弾薬庫に加えてこの場所に大型弾薬庫を増設するとしている。
ところが、どんな弾薬を保管するかを住民に明らかにしていなかったため、住民に対する説明会が開かれた。弾薬庫の周辺が攻撃されるリスクはどのぐらいあるのかなど、全ての疑問に答えてほしい住民側と紋切り型の説明に終始する政府側の溝は埋めがたく、説明会は紛糾して終了した。
安保3文書の閣議決定から既に1年が経過するが、これにともなって自衛隊が変貌していることを多くの人々が知ることのないまま、今に至っている。国家安全保障戦略研究会・折木良一元統合幕僚長は、現場を指揮してきた立場から「安全保障についてもっと議論してほしいというのが(我々の)主旨だったが、防衛費の話や反撃能力の議論は進んだが、全体としての戦略の議論は進まなかった。政治の世界、国民レベルの議論が必要だ」と指摘した。もうひとり、国家安全保障戦略研究会で専守防衛の意義を語っていた黒江哲郎元防衛事務次官は「専守防衛の下で何を変えようとしているのか、国民に対して説明する努力が政府には必要だ」と語った。
来年、創設から70年を迎える自衛隊だが、どのような道を歩んでいくのか、そのかじ取りの責任を最終的に負うことになるのは国民自身である。
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牛乳・肉・卵・タンパク源を守れるか~(12/3放送)
この1年で、全国で800を超える酪農家が離農している。暮らしに欠かせない肉や卵、牛乳の生産現場が今、土台から大きく揺らいでいる。食料自給率38%の日本は自らの食を守っていけるのか。
高度成長期の戦後日本。1961年に施行された農政の憲法ともいわれる「農業基本法」施行を皮切りに、この60年、日本人は主食のコメの消費を減らす一方、牛乳や肉、卵などの畜産物から多くのエネルギーをとるようになった。そのため家畜のエサを安い海外から大量に輸入してきた日本だが、飼料穀物の価格が世界的に高騰し、食卓を支えてきた大量生産システムが岐路に立たされている。...
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この1年で、全国で800を超える酪農家が離農している。暮らしに欠かせない肉や卵、牛乳の生産現場が今、土台から大きく揺らいでいる。食料自給率38%の日本は自らの食を守っていけるのか。
高度成長期の戦後日本。1961年に施行された農政の憲法ともいわれる「農業基本法」施行を皮切りに、この60年、日本人は主食のコメの消費を減らす一方、牛乳や肉、卵などの畜産物から多くのエネルギーをとるようになった。そのため家畜のエサを安い海外から大量に輸入してきた日本だが、飼料穀物の価格が世界的に高騰し、食卓を支えてきた大量生産システムが岐路に立たされている。
北海道では後継者不足などの問題もあったが、酪農家が規模を拡大することでこれまではなんとか生産量を維持してきた。ところが、コロナ禍を契機にこの2年で急激に悪化してしまった。さらに経営を圧迫したのが牛のエサのかつてない高騰だった。円安がこれに拍車をかけた。ドリームヒル・小椋幸男社長は「輸出業界、輸出業者は潤っているから日本経済を考えた場合には良いが、食料安保を考えたら絶対に違う」と語る。
なぜ飼料穀物の価格が高騰しているのか。1つ目は飼料用トウモロコシの主要輸出国のひとつだったウクライナで戦闘が長期化していること。2つ目は中国などの新興国がトウモロコシの輸入を急激に増やしていること。3つ目として以前は日本に多くのトウモロコシが輸出してきた米農家が、儲けがより多いバイオエタノール燃料用に用途を変更したことだ。飼料穀物の世界的高騰の影響は牛乳、肉など畜産物全体に広がっている。
酪農の危機は牛肉の生産現場とも密接に影響を与えている。食肉用として売られる子牛は大量のエサを与えられて食肉用として育ち、牛肉になるが、飼料高騰で畜産農家も経営が苦しく、子牛を買い控えるようになっている。その結果、農家の貴重な収入源だった子牛の価格が大きく下がっている。時には引き取ってすらもらえないこともあり、殺処分もあるという。
一方で、これまで輸入に頼ってきた飼料用トウモロコシを国内で生産する動きも始まっている。北海道の農家・柳原孝二は去年できた全国のトウモロコシ生産者組織・日本メイズ生産者協会の代表を務めている。外国産トウモロコシが高騰する中、酪農家や畜産農家から注文が殺到している。飼料用トウモロコシを作る取り組みは全国に広がり始めている。米農家が多い七戸町がこの取り組みを始めた背景には農家の高齢化や後継者不足がある。現在、国内で生産している飼料用トウモロコシは日本が輸入する量の0.1%以下にとどまっている。柳原氏は「これから海外から食料が入りにくくなるとか、穀物がひっ迫してくる中で国産トウモロコシを作るのは必然的なこと。それが全国に広がって日本の農業のひとつの柱となればやりがいがある」と目を輝かせる。目指すのは日本の需要の10%。全国で広がる耕作放棄地を活用すれば実現できるのではないかと考えている。
農林中金総合研究所・平澤明彦理事研究員は「問題はコメと食用の穀物、畜産とそのエサというものが、政策分野が分かれてしまっていることで、そこはちゃんとつなげた形にしていく必要があるし、そこをきちんとマッチングして地域の農地を皆で守っていくことが重要。労働力のいらない手間のかからない作物を守ることが農地を守るためには非常に重要。それが実現できる主な作物は今のところトウモロコシしかない。これが自給できれば食料安全保障も上がってくる」と語った。
今、日本の食料安全保障は大きな岐路に立たされている。人口80億人を突破した世界では食料をめぐる争奪戦が増えている。限られた国土で何を作り、何を食べていくのか、生産者だけでなく、日本人自身も考えていく必要に迫られている。
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主食コメ・忍び寄る危機~(11/26放送)
今。食料安全保障の生命線であるコメが瀬戸際に立たされている。コメ作りのモデルとされてきた大規模法人も行き詰まるケースが出てきている。去年まで20ヘクタールの農地でコメを生産していた男性は今年の春、破産し、所有していた農地の全てを失った。今は日雇いの仕事で生計を立てている。コロナ禍による外食産業の冷え込みでコメの価格が急落し売り上げが2割減少したことに加え、ロシアの軍事侵攻による肥料や燃料代の高騰も追い打ちをかけた。...
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今。食料安全保障の生命線であるコメが瀬戸際に立たされている。コメ作りのモデルとされてきた大規模法人も行き詰まるケースが出てきている。去年まで20ヘクタールの農地でコメを生産していた男性は今年の春、破産し、所有していた農地の全てを失った。今は日雇いの仕事で生計を立てている。コロナ禍による外食産業の冷え込みでコメの価格が急落し売り上げが2割減少したことに加え、ロシアの軍事侵攻による肥料や燃料代の高騰も追い打ちをかけた。最終的な負債総額は4500万円に上ったという。
これまでにない規模で農家の減少も進んでいる。宮城県の農協では長年、取扱量を増やし、全国で流通するコメの1割近くを担ってきたが、初めて取扱量を減らしかねない事態に直面している。
秋田県大仙市では国内のコメ生産の要となってきた穀倉地帯に異変が起きている。耕作されていない水田が少なくとも800ヘクタールにも及んでいる。これまでは高齢化した農家がやめると、ほかの農家がその農地を引き受けてきたが、今、引き受け農家も高齢化し、農地の維持が難しくなっているのだ。市が高齢の農家に今後も耕作を続ける意思があるかの確認したところ、多くが将来農業をやめると回答していた。最新の農業従事者の平均年齢はおよそ70歳だが、この年齢を超えると急速にリタイアしていき、今後5年でコメ生産を支えてきた大きな層が急速に減少するとみられている。
大分・豊後大野市清川町では3つの農業法人が連携し、経営を効率化することで担い手を確保できないか議論してきた。現状では3つの法人を合わせても所得は400万円に達するかどうかで、収益性の低さが食料供給を担う現場を脅かしている。
2020年度ではかろうじて需要を満たすだけの量を賄えているコメの生産だが、政府は2040年度には人口減少などで需要は減ると予測している。ただし、それに見合った生産は実現できるとしている。ところが、民間のシンクタンクでは異なるシナリオが示されている。今後、担い手が急速に減ることで需要の減りを上回るスピードで生産量が減少。最悪の場合、2040年には156万tのコメ不足に陥ると試算している。
農業の現場では今までにない方法で労働力を確保しようと苦闘が続いている。その一つが短期間で働くスポットワーカーの活用だ。農作業に当たるのは仕事も求職活動もしていないミッシングワーカーと呼ばれる人や副業をしたい人。多くはこれまで農業の経験はない。時給は作業内容や時期で異なり、日当はその日ごとに直接現金給付され、農業に気軽に参加してもらえるよう短期間でも働ける仕組みになっている。地元の農協と建設会社が共同で行うこの事業は年間延べ4万5000人を集めていて、今後コメ作りの現場への投入も見込んでいるが、登録しても年間の新規登録者は500人程度で、定着する人は多くはない。将来的には10倍程度まで増やさないと人手不足を補えないという。
現在、過去最少の4万5000人余りとなった新規就農者。こうした中、外国人材を今まで以上に活用できないかという試行錯誤も始まっている。農業分野の人材派遣会社が送り込んでいるのは特定技能の在留資格を持った外国人。現場で指揮するのはカンボジア人だ。会社では熟練した人材に賃金を割り増しし、リーダーとして技術指導まで担わせている。人材派遣会社では田植え・稲刈りなど繁忙期を中心に外国人材を活用できるのではないかと期待を寄せている。その一方で、担い手として期待する外国人材の獲得は年々厳しさを増している。その背景には世界の人材獲得競争で日本が劣勢に立たされている現実があるという。
世界的に食料供給が混乱する中、国は今、自給率を45%に引き上げようとしている。食料安全保障の強化を図るためにも重要な位置を占めるコメ。国は食料安全保障の根幹となるコメ農家に対して国はさまざまな取り組みを講じている。農家の収益を上げるため、利益の出やすい野菜などをコメと合わせて生産するよういざなう政策。更に小さい農地を束ね、一つの農家にまとめていく大規模化政策。広い農地であれば1台の機械でより大きな面積を耕作でき、コストが下がるとしている。農家の減少を生産性の向上で補うことで安定供給を図ろうというのである。
国民全体で自分たちが必要とする食料を守る制度を整えたスイスは国土の7割が山岳地帯。日本と同じく農業に向かない土地が大半だが、自給率は日本よりも高い49%を維持している。スーパーに並ぶ品物は国産で占められている。スイスが整えた制度は農家が安定して食料を生産するための仕組みだった。スーパーで買い物していたスイス人女性は「(制度を維持するには税金が高くつくが)そのお金は国に支払っているのはなく私たち自身のために支払っているお金だと考えている」と語った。
農林水産省の元官僚・東京大学大学院(農業経済学)・鈴木宣弘教授は「生産者も消費者も限界にきているのだとすればその差を埋めるのは政府。スイスのようにそれぞれの地域でもっと直接的に生産者・消費者・関係者が直接話し合う機会を作るべき。我々はもっと長期的、総合的に自分たちの食糧生産の価値を評価していくべき」と語った。
世界で食料供給の在り方が大きく変化する今、食への意識の変革が必要だ。
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混迷の世紀・世界“債務危機”は止められるか~(11/19放送)
外国からの借金を返せなくなり、債務危機に陥るリスクを抱える国が増えている。既にデフォルトに陥っている国は少なくとも3か国(ガーナ、スリランカ、ザンビア)。更にデフォルトに陥るリスクがあるとIMFが警戒を高めている国は34か国(ラオス、ソマリア、スーダン、ジンバブエ、アフガニスタン、カメルーン、ドミニカ国、エチオピア、モザンピーク、パプアニューギニアなど)に上っている。
そうした国を支援してきたのがIMF(国際通貨基金)を中心とする先進国だったが、近年、この枠組みとは別の動きをする中国などの新たな勢力が台頭し、世界が一丸となって危機に対処することが難しくなっている。...
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外国からの借金を返せなくなり、債務危機に陥るリスクを抱える国が増えている。既にデフォルトに陥っている国は少なくとも3か国(ガーナ、スリランカ、ザンビア)。更にデフォルトに陥るリスクがあるとIMFが警戒を高めている国は34か国(ラオス、ソマリア、スーダン、ジンバブエ、アフガニスタン、カメルーン、ドミニカ国、エチオピア、モザンピーク、パプアニューギニアなど)に上っている。
そうした国を支援してきたのがIMF(国際通貨基金)を中心とする先進国だったが、近年、この枠組みとは別の動きをする中国などの新たな勢力が台頭し、世界が一丸となって危機に対処することが難しくなっている。
世界各国の財務相と中央銀行総裁が一堂に会するIMFと世界銀行の年次総会が、50年ぶりにアフリカ・モロッコで開かれた。焦点となったのは途上国の債務問題だった。4月、IMF・ゲオルギエワ専務理事も同席して新たな取り組みの発表があった。外国からの債務が返せなくなったスリランカのために各国が一堂に集まって債務の整理を目指すことになったのである。
財務省の国際部門トップ・神田財務官も主導する立場で参加した。デフォルト(債務不履行)に陥ったスリランカの負債総額はおよそ360億ドルで日本をはじめ22か国が膨大な融資を回収できないリスクを抱えることになった。
スリランカに最も多く融資しているのは中国でおよそ69億ドル。日本は2番目に多いおよそ27億ドル。日本が目指すのは返済期間や金利などを巡って交渉し、各国が公平な負担となるようにすることだった。同時に日本を1997年のアジア通貨危機のような世界経済の混乱に波及することを未然に防ぎたいと考えていた。
今、顕在化しているデフォルトの危機。その源流をたどると十数年に及ぶあふれかえったマネーの存在がある。きっかけは2008年に米国で起きたリーマンショックである。未曽有の危機を収束させるため、欧米各国は大規模な金融緩和を実施し、途上国に先進国から大量のマネーが流れ込んだ。
ところが、去年から始まった欧米各国の利上げによってマネーは一気に途上国から引き上げられることになった。金やダイヤモンドなどの天然資源に恵まれているにもかかわらず、ガーナはデフォルトに陥った。ガーナ財務相のアルハッサンドリス局長は「先進国の金利が上昇したとたん、投資家達が一斉に資金を引きあげた。大打撃だった。資金源がしぼんでしまった」と語った。
シカゴ大学・ラグラムラジャン教授は「金融緩和の時期に人はお金を借りようと思うが、その時こそ最大の注意が必要だ。慎重に国の返済能力を検討するべきだ。なぜなら金融緩和の後は二日酔いという名の副作用があるからだ」と警告した。
日本が主導したスリランカの債務再編交渉で疑問が出された。エイドデータ研究所(米国・バージニア)の調査によって中国が債権を回収するための抜け道となる専用口座のエスクロー口座があることが明らかになったのである。途上国からの返済が滞った時にこの口座から中国だけが現金を引き出すことができる。
こうした懸念からスリランカの債務再編交渉大筋合意には至らなかった。その矢先、日本が主導する交渉に先んじて中国が単独でスリランカと合意したという衝撃的なニュースが飛び込んできた。中国は会見でこの合意の詳細について明らかにしていない。
シカゴ大学・ラグラムラジャン教授は「率直に言うと問題は途上国に限らない。多くの先進国も膨大な債務を抱えている。先進国も金利が上昇する中で財政がひっ迫する可能性がある」と問題は途上国だけのものではないと警鐘を鳴らした。
こうした中、FRB・パウエル議長は会見で「さらなる利上げが必要となればためらわずに行う」と語った。どうやら世界は余力を失い、思いやりを失いつつあるのかもしれない。
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