アントニオ・グテーレス国連事務総長(71歳、ポルトガル元首相)は先週、新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的流行に関する事実を拒絶し、世界保健機関(WHO)が示している指針を無視しているとして一部の国々を非難した。そして直近で同事務総長は、欧米諸国が繰り広げつつある「ワクチン・ナショナリズム」(自国民優先の接種政策)について強硬に非難している。
12月9日付
『AP通信』:「国連事務総長、“ワクチン・ナショナリズム”を非難」
アントニオ・グテーレス事務総長は12月9日、「ワクチン・ナショナリズム」が“ものすごい勢いで”はびこり始めていると憂慮した。
すなわち、一部の裕福な諸国が自国民優先で開発したCOVID-19用ワクチン接種を進めていて、その他貧困国にいつ同ワクチンが供給されるか不確かな状況にあることから、WHOが推進しようとしている、世界が協力してCOVID-19根絶に向かうという方策が機能しないと強調した。...
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12月9日付
『AP通信』:「国連事務総長、“ワクチン・ナショナリズム”を非難」
アントニオ・グテーレス事務総長は12月9日、「ワクチン・ナショナリズム」が“ものすごい勢いで”はびこり始めていると憂慮した。
すなわち、一部の裕福な諸国が自国民優先で開発したCOVID-19用ワクチン接種を進めていて、その他貧困国にいつ同ワクチンが供給されるか不確かな状況にあることから、WHOが推進しようとしている、世界が協力してCOVID-19根絶に向かうという方策が機能しないと強調した。
同事務総長は、WHOが、今後2ヵ月間で42億ドル(約4,410億円)の基金を準備して、最貧国のためのワクチンを確保していこうとしているのに、基金への協力以前に、自国民のワクチン開発・接種にしのぎを削っているとして、欧米諸国の行動を非難した。
具体的には、ロシアと英国が今週初めに自国民のみを対象にワクチン接種競争を繰り広げていて、間もなく米国も米ファイザー社(1849年設立、世界第2位の製薬会社)が開発したワクチンを自国民用に認可する意向である。
なお、カナダにおいても12月9日、ファイザー社及び独バイオNテック社(2008年設立)共同開発のワクチンが認可され、今月中に24万9千回分が提供される。
同日付『国連広報センター(1991年設立)』:「国連事務総長、COVAX基金はワクチン供給の公平性を維持するためのものと強調」
グレーレス事務総長は12月9日、第4回国連・アフリカ連合(AU、注1後記)年次会議開催後の記者会見で、ワクチン・ナショナリズムの急速な拡大に警鐘を鳴らした。
同事務総長によれば、WHOが主導しているCOVAX(注2後記)ファシリティは、10~12月期中に“可及的速やかに”42億ドルの基金を立ち上げ、各国に公平にワクチン提供をする国際的枠組みであるが、一部の欧米諸国のワクチン・ナショナリズムの台頭で、基金集めに障害が生じているという。
すなわち、一部の国だけでCOVID-19抑え込みができても、世界で一斉に当該感染症防疫に向かわなければ、いつまで経っても根絶できないと憂慮している。
(注1)AU:2001年に設立された、アフリカ大陸55ヵ国の加盟国からなる大陸連合。本部はアディスアベバ(エチオピア)。
(注2)COVAX:WHO主導で2020年9月に立ち上げられた、COVID-19用ワクチンを世界各国で共同購入して分配する国際的枠組み。
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