既報どおり、中国人民解放軍(PLA)は、大規模戦争に耐えうる国産空母、超音速弾道ミサイルのみならず、上陸作戦実行のための大型強襲揚陸艦及び中国版海兵隊の増強等、着々と軍備増強を進めている。そこでこの程、米軍は、南シナ海含めた西太平洋海域でのPLA進出を食い止めるための合理的作戦を展開するため、今春に計画した沖縄駐留海兵隊の再編を進捗させるべく日本側と協議を始めた。
7月24日付
『ロイター通信』:「米海兵隊司令官、沖縄駐留の海兵隊の再編につき日本側と具体的協議開始」
米海兵隊(注1後記)のデビッド・バーガー司令官は7月23日、西太平洋海域におけるPLAによる島嶼部への侵攻を阻止するための沖縄駐留海兵隊の再編につき、日本側と具体的協議を開始したと明かした。
同司令官は、“目下脅威が増しているPLAの侵攻を食い止めるために、堅個な同盟国である日本との綿密な協議が必要”だと語った。...
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7月24日付
『ロイター通信』:「米海兵隊司令官、沖縄駐留の海兵隊の再編につき日本側と具体的協議開始」
米海兵隊(注1後記)のデビッド・バーガー司令官は7月23日、西太平洋海域におけるPLAによる島嶼部への侵攻を阻止するための沖縄駐留海兵隊の再編につき、日本側と具体的協議を開始したと明かした。
同司令官は、“目下脅威が増しているPLAの侵攻を食い止めるために、堅個な同盟国である日本との綿密な協議が必要”だと語った。
同司令官は今年3月下旬に公表した「海兵隊組織改編2030(注2後記)」の中で、戦闘機・輸送機等の削減、戦車大隊の廃止に加えて歩兵大隊を縮小する代わりに、対艦、対空ミサイル及び無人爆撃機を装備した“沿岸連隊”を新たに組織した上で、敵側の島嶼部侵攻を防ぐための小規模かつ迅速に対応できる体制作りをすると訴えた。
その上で同司令官は、西太平洋海域に点在する小さな島々にこの沿岸連隊を派遣し、PLAの艦艇や航空機を封じ込める作戦が展開できると強調している。
今回の部隊再編の具体化は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題を利用して中国が南シナ海やアジアのその他海域で勢力拡大しようとしていると米国が非難したことを契機に、両国間の緊張が益々高まったことを背景に進められようとしている。
特に、西太平洋海域での中国の海洋進出を食い止めるためには、沖縄からフィリピン、そしてインドネシアに繋がる“最前線の諸島群”を拠点とした作戦遂行が重要だとされている。
同司令官によれば、沿岸連隊の沖縄での具体的配備は2027年までに実施し、更にグアムやハワイへと広げていくという。
ただ、同司令官は、組織改編で沖縄の駐留兵を増やすというのではなく、現下の日米安全保障条約の下で許容される範囲で、海兵隊の強化を図っていこうとする考えだと言明した。
そして同司令官は、日本側とは電話会議を通じて打ち合わせを始めているが、COVID-19に伴う渡航制限が解除されればすぐにでも訪日して、直接協議を行いたいと付言している。
(注1)米海兵隊:米独立戦争中の1775年設立。海外での武力行使を前提とし、米国の国益を維持・確保するための緊急展開部隊として行動。また、必要に応じて水陸両用作戦(上陸戦)を初めとする軍事作戦を遂行することも目的。本土の防衛が任務に含まれない外征専門部隊であることから、「殴り込み部隊」とも渾名される。現在の規模は、現役将兵約18万人及び予備役約4万人の体制となっている。
(注2)海兵隊組織改編2030:3月23日に公表された、2030年までの10年間で兵士約1万2千人、航空戦力を大幅に削減し、海兵隊を西太平洋海域における国防戦略に最適化させようとする計画。具体的には、全ての戦車大隊の廃止、歩兵大隊を24個から21個へ、砲兵大隊は21個から5個へ、水陸両用車中隊は6個から4個へ削減。また、最新鋭戦闘機F-35を装備した飛行中隊の定数を16個から10個へ減らし、垂直離着陸輸送機MV-22オスプレイと重輸送ヘリコプターCH-53Eスーパースタリオンを装備した中隊は各1個ずつ、攻撃ヘリコプターAH-1Zバイパーを装備した中隊は2個廃止することで、総調達機数を合計690機から360機へと大幅削減。これによって浮いた予算は、将来の最新鋭装備品やシステムに再投資。
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