国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のフィリッポ・グランディ高等弁務官は21日、気候変動の影響で自国から逃れる難民が、今後数百万人に膨れ上がる可能性があるとして、世界各国はその急増に備えなければならないと警告した。
『ロイター通信』や科学技術紙などの報道によれば、グランディ高等弁務官の警告は、スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」でのものである。国連の人権理事会は20日、気候変動の影響が深刻な国々から逃れた人々を強制送還する各国政府の措置は、人権義務違反に当たる可能性があり、気候変動を理由とした難民申請を認めるべき場合があるとの判断を初めて下したが、これを受けての発言だという。
当判断は、太平洋の島国キリバス出身のイオアネ・テイティオタ氏が、気候変動を理由にニュージーランドに難民申請をしたが却下され、送還されたことに異議を申し立てたことに関するものだ。...
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『ロイター通信』や科学技術紙などの報道によれば、グランディ高等弁務官の警告は、スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」でのものである。国連の人権理事会は20日、気候変動の影響が深刻な国々から逃れた人々を強制送還する各国政府の措置は、人権義務違反に当たる可能性があり、気候変動を理由とした難民申請を認めるべき場合があるとの判断を初めて下したが、これを受けての発言だという。
当判断は、太平洋の島国キリバス出身のイオアネ・テイティオタ氏が、気候変動を理由にニュージーランドに難民申請をしたが却下され、送還されたことに異議を申し立てたことに関するものだ。同氏は、キリバスでは海面上昇により土地を巡る争いが起き、安全な飲料水の入手が困難となったことなどにより、海外移住しか生きる道がないと主張した。
グランディ高等弁務官は、「当判断は、気候変動や気候の緊急事態により、生活に差し迫った脅威があり、国境を越えて他国に渡る場合には、送還されてはならないとしている。戦時や迫害の状況と同様に、命の危険にさらされるからだ。」と指摘した。そして、「我々は意思に反して自国を逃れる人が急増することに備えねばならない。具体的な人数については憶測となるため敢えて語らないが、確実に数百万人の単位だ。」と述べた。
人々が気候変動により自国を逃れ、他国に移動する要因として考えられるのは、オーストラリアで見られるような森林火災や、海抜の低い島国に影響する海面上昇、サハラ以南のアフリカでの農作物や家畜への被害や、世界中で発生している洪水などである。
UNHCRは70年前に設立され、紛争の結果、貧しい国々から逃れた人々を支援してきたが、気候変動はより広範な地域に影響する問題である。1951年7月に採択された「難民の地位に関する条約」には、気候変動に関する条項はない。気候変動の影響が増すにつれて、難民に関する法的問題がより複雑化している。
グランディ高等弁務官は、気候変動の影響による難民の問題について、「難民の移動や、より広範な移民の問題が、数カ国の問題として限定できない世界的な課題であることを示す新たな証拠だ。」と指摘した。
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