地中海の島国マルタのジョゼフ・ムスカット首相は1日、国営テレビで演説し、自身が率いる与党・労働党が来年1月12日に新党首を選出後、辞任する意向を表明した。同国では、タックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴いた「パナマ文書」によって発覚した汚職事件を調査していた記者の殺害事件をめぐり、首相の退陣を求める声が高まっていた。
英
『BBC』や
『ザ・テレグラフ』などが報じた。ムスカット首相は1月12日に党首の職を離れ、その数日後に首相を辞任する。しかし、マルタ人女性記者のダフネ・カルアナガリチア氏が殺害された事件の調査をめぐり、即刻の辞任を求める抗議活動が起きている。
「パナマ文書」はパナマの法律事務所によって作成された租税回避行為に関連する一連の機密文書であり、世界80カ国の報道機関107社の記者約400名がこの分析に加わった。...
全部読む
英
『BBC』や
『ザ・テレグラフ』などが報じた。ムスカット首相は1月12日に党首の職を離れ、その数日後に首相を辞任する。しかし、マルタ人女性記者のダフネ・カルアナガリチア氏が殺害された事件の調査をめぐり、即刻の辞任を求める抗議活動が起きている。
「パナマ文書」はパナマの法律事務所によって作成された租税回避行為に関連する一連の機密文書であり、世界80カ国の報道機関107社の記者約400名がこの分析に加わった。同文書によりマルタの政界や企業幹部の不正を調査し、政府を追及していたカルアナガリチア氏は2017年10月、自宅付近で自分の車に仕掛けられた爆弾によって殺害された。
辞任を表明したムスカット氏は45歳。2013年からパナマの首相を6年間務めた。2度の選挙で地滑り的勝利を果たし、欧州連合(EU)最小の加盟国で社会改革の推進に当たった。カルアナガリチア氏は、ムスカット首相の妻や側近らの汚職疑惑を追及していた。
マルタの警察は11月26日、事件の首謀者とされるキース・シェンブリ前首席補佐官を逮捕し、28日に釈放した。またコンラッド・ミッツィ前観光相とクリスチャン・カルドナ経済・投資・中小企業相が、警察から事情聴取を受けた。3人は首相側近とされており、相次いで閣僚を辞任したり、自ら職務を停止したりした。
30日には側近らと繋がりがあったとみられる実業家のヨルネン・フェネック被告が事件の共犯者として起訴され、政権を揺るがす事態に発展した。フェネック被告は、パナマ文書に記載されたアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで登録された会社を所有していた。この会社が、シェンブリ氏とミッツィ氏が設立した会社に資金を流していたと言われている。
ムスカット首相は、辞任の決断について説明し、「私が負うべき全ての責任は、被害者の遺族が耐え忍ぶ苦痛とは比べようもない。」と述べた。遺族は、シェンブリ氏を釈放したことや、過去2年間マルタの政治の浄化を怠ったことなど、首相の事件への対応を強く批判。また、市民の抗議デモも発生し、ムスカット氏に対する辞任の圧力が高まっていた。
閉じる