米中貿易協定は、“第一段階”の合意が間近に迫る期待感があった。しかし、先週半ば、米上・下院が「香港人権・民主主義法案(注1後記)」を可決したことから、ドナルド・トランプ大統領が署名して同法が制定の運びとなると、中国側反発は必至で米中貿易協定協議も後退する恐れがでてきた。ただ、米国家安全保障問題担当大統領補佐官は、同協定の年内合意は有り得ると公式に表明した。但し、中国政府が香港に軍事介入しないこととの条件付きのコメントである。
11月24日付
『ロイター通信』:「米高官、米中貿易協定の年内合意の望みはまだあると表明」
米国家安全保障問題担当大統領補佐官のロバート・オブライアン氏(53歳、注2後記)は11月23日、米中貿易協定の“第一段階”の年末までの合意は期待しうると表明した。
ただ、同補佐官は同時に、中国が香港民主化運動制圧のために軍事介入しないことが条件になるとも付言した。
同補佐官がハリファックス(カナダ・ノバスコシア州)で開催された安全保障問題国際会議で発言したもので、香港問題の他、中国が南シナ海等で行っている強権的活動は看過できないとも付言した。...
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11月24日付
『ロイター通信』:「米高官、米中貿易協定の年内合意の望みはまだあると表明」
米国家安全保障問題担当大統領補佐官のロバート・オブライアン氏(53歳、注2後記)は11月23日、米中貿易協定の“第一段階”の年末までの合意は期待しうると表明した。
ただ、同補佐官は同時に、中国が香港民主化運動制圧のために軍事介入しないことが条件になるとも付言した。
同補佐官がハリファックス(カナダ・ノバスコシア州)で開催された安全保障問題国際会議で発言したもので、香港問題の他、中国が南シナ海等で行っている強権的活動は看過できないとも付言した。
これに先立つ11月22日、ドナルド・トランプ大統領は習近平(シー・チンピン)国家主席に対して、香港で中国による軍事行動が実際行われれば、16ヵ月かかって漸く合意に近づいた米中貿易交渉に“計り知れない悪影響”を与えると伝えたと表明している。
なお、中国側が強く反発している「香港人権・民主主義法案」について、同大統領が発効のための署名手続きを行うかは明らかにしていない。
同日付『AP通信』:「米安保問題担当補佐官、中国によるウィグル族強制収容問題に沈黙の国際社会を批判」
オブライアン米国家安全保障問題担当大統領補佐官は11月23日、中国政府が目下実施している、100万人余りのウィグル族等のイスラム教徒強制収容について、国際社会が沈黙していると非難した。
そして同補佐官は、現下の香港民主化運動に関わり、もし中国政府が天安門事件のように軍事介入することになったら、世界のリーダー達が立ち上がって対抗していくべきだと語った。
カナダで開催された安全保障問題国際会議に出席した同補佐官が記者会見で述べたものだが、現在10万人以上の米国人や30万人以上のカナダ人が暮らす香港において、中国政府がもし軍事介入した場合、米政府はどうするのかとの問いには明確に回答しなかった。
(注1)香港人権・民主主義法案:11月20日に米上・下院で可決された法案。国務省に対し、香港が貿易上の優遇措置を継続するのに十分な高度の自治を持っているか毎年確認するよう求め、また、香港で人権侵害が発生した場合にその責任者に対して制裁を科すことを求める内容。なお、上・下院でほぼ全会一致で可決されたことから、仮にトランプ大統領が拒否権を発動して署名せずとも、議会の再可決で法制化が可能となる。
(注2)ロバート・オブライアン:カリフォルニア州出身の弁護士・外交官。前人質問題担当特使で、今年9月、解任されたジョン・ボルトン前大統領補佐官の後任として、トランプ政権下で4代目の国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任。
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