5社のうち、ここ数年で社会的に悪影響を及ぼしているとの批判にさらされていない唯一の企業はマイクロソフトである。また経営者のサティア・ナデラCEOとブラッド・スミス社長は、ユーザーのプライバシーを保護し、人工知能(AI)のような新技術の倫理ガイドラインを確立する、業界で最も正直な提唱者のうちの二人と評価されている。
7日、シアトルで3日間にわたって開催された年次開発者会議「ビルド(Build)2018」で、マイクロソフトの持つ良心的な側面が提示された。...
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5社のうち、ここ数年で社会的に悪影響を及ぼしているとの批判にさらされていない唯一の企業はマイクロソフトである。また経営者のサティア・ナデラCEOとブラッド・スミス社長は、ユーザーのプライバシーを保護し、人工知能(AI)のような新技術の倫理ガイドラインを確立する、業界で最も正直な提唱者のうちの二人と評価されている。
7日、シアトルで3日間にわたって開催された年次開発者会議「ビルド(Build)2018」で、マイクロソフトの持つ良心的な側面が提示された。マイクロソフトは障害者向けのユーザー補助のためのAI(AI for Accessibility)を発表した。障害者のためにAIを使用する研究者、非営利団体、開発者に5年間で2500万ドルを投じるというプログラムだ。脳性麻痺の息子を持つナデラCEOは、息子の障害により自身がより障害者に共感的になったと以前記している。
ナデラCEOは、業界には誰もが力を発揮できるよう技術を構築する責任があると語った。「コンピュータができることだけでなく、コンピュータが何をすべきかを自問する必要がある」と述べた。
マイクロソフトが新たな役割を担おうとする背景には、同社が現在IT業界に暗い影を落としているSNS、動画、スマートフォン分野での主要プレーヤーではないことがある。同社はもはや、アマゾンのように市場から弱者を追い出すこともしていない。
マイクロソフトは、ウィンドウズでコンピュータ業界を支配していた数十年前と比べるとその影響力は弱まったものの、依然として大きな影響力を持っている。7日に発表された時価総額は7,330億ドで、IT企業の中ではアップル、アマゾンに次ぐ第三位。グーグルの親会社であるアルファベットやフェイスブックを上回った。
ハーバード大学大学院経営学研究科のデイビッド・ヨフィー教授は、「マイクロソフトにとっての皮肉な点は、ネット検索、SNS、携帯電話、モバイル機器のいずれの分野でも負け、結果的に政府やメディアからの最近の反発を回避できたことだ。これにより、マイクロソフトは技術の倫理的リーダーとしての王道を歩む自由を得た。」と語る。
2014年にCEOに就任して以来、ナデラ氏は前任のスティーブ・バルマーやビル・ゲイツよりも慎重な経営スタイルを取り入れている。このやり方は時代に合っていた。
20年前、マイクロソフトは連邦政府やEU、民間政府から訴えられ、独占禁止法訴訟で競合他社よりも凶悪とのレッテルを貼られた。スミス氏は独占禁止法訴訟の戦いを解決するため法務顧問として手腕をふるい、ナデラ氏は訴訟解決後、同社初のCEOになった。
最高法務責任者でもあるスミス社長は電話インタビューで、過去数十年の法的問題はマイクロソフトを現在の形に形作る「痛烈な経験」であり、「これにより、マイクロソフトはさらに良い、より責任ある企業になった。」と話した。
今年、マイクロソフトはAIに起因する可能性のある有害な事象を概説した本を出版した。同社は、顧客のプライバシーの権利を守るため、過去5年間に米国政府に対して4件の訴訟を起こしている。
ナデラCEOは、他社を公然と批判するより控えめに説得を行うなど地味な性格が持ち味である。また不注意な技術者は反ユートピア的世界に貢献するといった話をする際、ジョージ・オーウェルの「1984」などの文学作品を引用する。スミス社長は、法的な大きな社会問題に対応し、おなじみの顔になっている。現在のマイクロソフトは、かつての略奪者としてのイメージからかけ離れた存在だ。
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