米国の国勢調査は、連邦議会の議席割当てや連邦補助金の配分などの重要な政治的施策に用いられるため、市民権について質問する動きは大きな反発をもたらした。
カリフォルニア州バセラ検事総長は、回答者に法的地位を尋ねるように変更したことで、データが歪曲し、外国生まれが多いカリフォルニア州は議席や資金を不当に奪われかねないとの考えだ。申立書の中で、「かなりの人数にのぼるといわれる、市民権を持たない住民とその親族を数に含まないとなると、州の連邦議会での議席と選挙人団の公正な割当てが危険にさらされ、次の10年間、補助金分に何十億ドルとかかるだろう。...
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米国の国勢調査は、連邦議会の議席割当てや連邦補助金の配分などの重要な政治的施策に用いられるため、市民権について質問する動きは大きな反発をもたらした。
カリフォルニア州バセラ検事総長は、回答者に法的地位を尋ねるように変更したことで、データが歪曲し、外国生まれが多いカリフォルニア州は議席や資金を不当に奪われかねないとの考えだ。申立書の中で、「かなりの人数にのぼるといわれる、市民権を持たない住民とその親族を数に含まないとなると、州の連邦議会での議席と選挙人団の公正な割当てが危険にさらされ、次の10年間、補助金分に何十億ドルとかかるだろう。」と述べている。
これに反応して、カリフォルニア州出身のファインシュタイン上院議員は、「特定の集団の参加を抑制するように設計された質問は、合衆国の基盤に対する攻撃だ。」と味方した。
ホワイトハウスのサンダーズ大統領報道官は、報道陣からの質問に対し、市民権に関する質問は2010年を除くすべての国勢調査に含まれており、回答データは政府が投票憲法を順守するうえで役に立つ、と述べた。この発言は誤りで、全世帯に市民権を問うたのは1950年の国政調査が最後である*。
「トランプ大統領の移民に対する毒舌で積極的な政策を勘案すれば、移民が調査に参加することを阻止するために政権がこの質問を取り入れたことは明らかだ。」とファインシュタイン上院議員は声明で述べた。「米国市民権の有無が混在するような世帯の個人は、調査が彼らや家族を標的にするために使用されるのではないかと、回答を恐れるかもしれない。」
移民強硬派のジェフ・セッションズ長官が率いる司法省は、昨年、国勢調査局に、1950年以来、回答者にされていない市民権ステータスの質問を復活させるよう求めた。
ウィルバー・ロス商務長官は、この質問を再び取り上げる判断を説明する覚書で、市民権を尋ねることは、政府の投票法の執行能力を強化し、回答率の抑制にはつながらない、としている。ロス長官は、「正確な市民権データを確保する必要性は、回答率低下の懸念よりも大切である。」と述べている。
商務省の広報担当者は、カリフォルニア州による訴訟の詳細に関するコメントは差し控えたが、声明で「この訴訟はメリットがない。法廷で勝利し、国勢調査局と協力して、完全で正確な2020年の国勢調査を実施することを楽しみにしている。」と発表した。
*米国の国勢調査は10年ごとに行われる。1960年の調査では市民権に関する質問はなかったが、1970年以降2000年までの調査では二種類の調査が実施されていた。短い方の調査は氏名、年齢、婚姻など基礎事項を尋ねるものであったが、長い方の調査には収入の他、市民権に関する質問があった。長い方の調査は対象を絞り、全世帯の6分の1にしか配布されなかったため、受け取ったことがない世帯の方が多い。
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