第1回仏国民議会選挙投票が終了した時点で出口調査の予測は、577の全議席中、マクロン仏大統領率いる政党「共和国前進(REM)」が400議席以上を獲得する見込みだ。議会で過半数を確保するには最低289議席必要だ。REMはそのために予め中道政党の「民主運動」と連携した。しかし、現在の状況では単独で過半数を占めることは確実だ。2つの世論調査機関による予測ではREMは第1回投票で30%以上を獲得し、仏共和党は20.9%、極右政党の「国民戦線(FN)」 は13.1%、左翼政党グループは9%となっている。第1回の投票率は49%前後と低く、専門家の中にはマクロン仏大統領不支持の有権者が棄権しているとの指摘もあり、また仏共和党を率いるバロン氏は、低投票率をフランス社会の深い分裂だと指摘した。因みに2012年の仏国民議会選挙では投票率は57%、2007年は60%だった。
この選挙は近年の一連の壊滅的なテロ攻撃の後、警備が強化される中で行われた。仏国民議会の選挙制度は2回にわたり行われ、6月11日の第1回投票で投票の50%超を得ない限り、投票の12.5%を超える候補者で6月18日の第2回の決選投票を行う。このため第1回投票で選出される国会議員は少数の見込みだ。
マクロン仏大統領は唯一のライバルである仏共和党に重要な勝利をおさめ、仏社会党は歴史的な敗北を喫し、現在の過半数の議席を割るだけでなく、ほとんどの議席を失う可能性がある。FNも想定を下回っている。5月にFNのルペン党首は仏大統領選でマクロン候補に敗れている。マクロン仏大統領はすでに気候変動問題等で、トランプ米大統領とやりあうなど、世界中の注目を集めている。第1回投票での結果予測がこのまま維持されるならば、ド・ゴール仏大統領が1958年に第5共和政でもたらした変化と同じくらいの大きな変化が仏国民議会に起きる可能性がある。
マクロン仏大統領の報道官は、REM大勝の予測が発表された後、有権者は大きな改革を速やかに進めることを望んでいると述べた。FNのルペン党首は得票数の割に獲得議席数が少なくなることを挙げ、大政党に有利なフランスの小選挙区の選挙制度が改革される必要があると述べた。過去数回の仏国民議会選挙では直前の選挙で当選した仏大統領の与党が過半数を確保してきた。REMはわずか1年前に設立され、その候補者の多くは学生、退職者、闘牛士など一般市民で、政治的経験がほとんど、又は全く無い。一般市民からの多くの新人候補者を立てたマクロン仏大統領の戦略は仏大統領選挙運動の公約だった。
政治経験も無く知名度の無いがマクロン陣営の候補者は未知数の魅力を持ち、フランスに新しい政治と経済成長をもたらすというマクロン仏大統領の公約を象徴している。国会はもちろん、あらゆる議会の経験のない何百人もの新しい国会議員が国民議会で活躍することになる。
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